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Lesson13 揺れる想い、濡れた雨宿りの下で
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大学帰り──。
俺はいつものように駅へ向かっていた。今日はサークルも休みだし、ちょっと寄り道して帰ろうかなんて考えながら。
最近、レンさんとも会えてないな…
反対車線で信号待ちをしていた時、ふと視線の先に小柄な人影を見つける。
……あれ?ハル?
可愛いから、一目でわかった。
「おーい! ハル!」
手を振ると、ハルがこっちに気づいて、小さく笑いながら振り返してきた。
その笑顔がまぶしくて、胸が少しざわついた。
「あはは~、タクミ! 帰り?」
「うん。ハルはサークルないの?」
「今日はね、ユウヤが帰り遅いみたいだから。お迎えないからサークル休んだ」
「そっか。じゃあ今日は……ユウヤさんのマンション?」
「んー、自宅に戻ろうか、ユウヤのマンション行こうか、迷ってる」
ハルが首をかしげながら答える。
俺はほんの一瞬、胸の奥がちくりとした。
「……そか。なら、時間あるし、寄り道していかない?」
「いいよ! なんか食べてく?」
「駅前に新しいケーキ屋できたらしい。美味しいって評判だぞ」
「行く! 食べたい!」
無邪気に笑うハルの声が、雨上がりの風みたいに軽い。
……気づけば俺は、そんな姿に見とれていた。
色白な肌。長いまつ毛。
横顔はどこからどう見ても、可愛い女の子だ。
高校の頃は、ただの「友達」として隣にいた。
けど──大学に進んで距離ができて、ユウヤさんと付き合い始めて……。
最近のハルは、前よりもずっと可愛く見えて仕方ない。
……なんでだろうな。
新しく出来たケーキ屋のガラス張りの店内。 お洒落な雰囲気。
小さなテーブルに並んだ色とりどりのケーキを前に、ハルは嬉しそうにフォークを動かしていた。
「ここのケーキめっちゃ美味しいな~。来れて嬉しい」
無邪気に笑ってそんなことを言う。
俺は「そっか」と笑い返すけれど、胸の奥でざらつくものがあった。
(……なんだよそれ。ユウヤさんと比べんなって……)
けど、ハルは悪気なんてまるでない。
学校のこと、サークルのこと、ユウヤさんとの何気ない日常──楽しそうに話す声に、俺は「うんうん」って相槌を打ちながら耳を傾けていた。
気づけば、時間はあっという間に過ぎていた。
⸻
店を出た瞬間、空がぐらついたように暗くなった。
次の瞬間──バリバリッ!と雷鳴が落ちて、ゲリラ豪雨が街を飲み込んだ。
「わー、早く雨宿りしないと」
二人で慌てて、でも笑いながら走り出す。
すぐ近くにバス待合所を見つけ、屋根の下に駆け込んだ。
肩で息をしながら、びしょ濡れの髪をかき上げる。
横を見ると、ハルは前髪から雫を滴らせながら、水色のシャツが肌に貼りついていた。
華奢な肩のライン、濡れた首筋。
笑っているのに、どこか大人びた色気を纏っていて、俺は息を呑んだ。
(……やばい。なんでこんなにこいつ綺麗なんだよ)
気づけば、手が勝手に伸びていた。
濡れた髪を拭ってやりたくて──ただ触れたくて。
けど、その瞬間。
ハルがふいに振り向いて、にこっと笑った。
「なに?手濡れるよ?」
柔らかな手が俺の手を押さえて、軽く引き戻す。
何も知らない笑顔。いつものハルだ。
「……っ」
胸がぎゅっと掴まれる。
振り払われたわけじゃないのに、その一言がやけに甘くて、苦しい。
雨の音にかき消されそうなほど小さく、俺は心の中で呟いた。
(……ユウヤさんが沼るのも、わかるわ)
雨が少し弱まった頃、スマホが震えた。
ハルが画面を見た瞬間、ぱっと花が咲くみたいな笑顔になる。
「ユウヤから…だ」
声まで弾んでいる。
「わっ!研修終わったって!駅に迎えに行くね、だってさ! 早く帰れるんだ~」
その姿に胸がざわめきながらも、俺はつい口をついて出た。
「……なぁ、ハル」
「ん?なに?」
無邪気に首をかしげるハル。
「……俺とレンさん、どう見える?」
「え?」
ハルは一瞬目を瞬かせてから、ふっと笑った。
「仲いいと思うよ? でも……まだ全然これからって感じかな。レンさんもタクミのこと気にしてるんじゃない?僕にはそう見えてるけど?」
「……そう、かな」
曖昧に笑うしかなかった。
ハルはスマホをポケットに入れ、またにこっと笑う。
「だから大丈夫。タクミもちゃんと、気持ち伝えたらいいんだよ、好きなんでしょ?伝えなよ」
無邪気に背中を押すその笑顔が、胸に刺さった。
気づけば腕が勝手に動いていた。
「……タクミ?」
驚いた声ごと強く抱きしめてしまう。
雨に濡れた体温が思った以上に近くて、喉の奥が熱くなる。
「……ごめん。なんか……今、そうしたくなった」
理由なんてわからない。
ハルは一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
「……ちょっと、痛いよ。びっくりするじゃん。どうしたの?タクミ」
優しい声で問いかける。
「……」
返事ができない。
「ごめん。俺、おかしいよな。なんか……」
言葉を探す俺に、ハルは軽く肩を押した。
「こっちこそ、、、なんか変だよ?
いつものタクミらしくないよ?」
その笑顔があまりに無邪気で、余計に胸が締めつけられる。
(……俺じゃ、届かないんだよな)
その時、またスマホが震えた。
画面を見たハルの顔が嬉しそうだ…
「ユウヤから。“駅に着いたけど、どこ?”ってきた…ごめん、行かなきゃ」
声まで弾んでいて、さっきまでの切なげな雰囲気は跡形もない。
「タクミ、ごめん、先帰るね?
今日ありがとうね。バイバイ」
雨粒を跳ね飛ばしながら走っていく背中を見送る。
残されたのは、雨音と、さっきの温もりだけ。
(……レンさん。俺……)
ため息と一緒に、心の奥の名前をこぼした。
タクミはまだ濡れた髪をそのままに、雨が止むまで呆然と立ち尽くしていた。
ちょうどその時、一台の黒い車がゆっくりと前の道を通りかかっていた
窓越しに見えたのは──タクミがハルを抱きしめて、そっと手を離した直後の姿。
ハンドルを握るユウヤの眉が、かすかに動く。
(……なんや、今のは)
助手席には誰もいない。
ハルに連絡を入れようとスマホを取った矢先の光景だった。
クラクションを鳴らすことも、声をかけることもしない。
(……タクミ。人のもんに、手ぇ出そうとしたんか……?)
車はそのまま駅の方へ走り去っていった。
バス停に残されたタクミは、
ユウヤの視線にまるで気づいていない。
Lesson 14へ続くー♡♡♡
俺はいつものように駅へ向かっていた。今日はサークルも休みだし、ちょっと寄り道して帰ろうかなんて考えながら。
最近、レンさんとも会えてないな…
反対車線で信号待ちをしていた時、ふと視線の先に小柄な人影を見つける。
……あれ?ハル?
可愛いから、一目でわかった。
「おーい! ハル!」
手を振ると、ハルがこっちに気づいて、小さく笑いながら振り返してきた。
その笑顔がまぶしくて、胸が少しざわついた。
「あはは~、タクミ! 帰り?」
「うん。ハルはサークルないの?」
「今日はね、ユウヤが帰り遅いみたいだから。お迎えないからサークル休んだ」
「そっか。じゃあ今日は……ユウヤさんのマンション?」
「んー、自宅に戻ろうか、ユウヤのマンション行こうか、迷ってる」
ハルが首をかしげながら答える。
俺はほんの一瞬、胸の奥がちくりとした。
「……そか。なら、時間あるし、寄り道していかない?」
「いいよ! なんか食べてく?」
「駅前に新しいケーキ屋できたらしい。美味しいって評判だぞ」
「行く! 食べたい!」
無邪気に笑うハルの声が、雨上がりの風みたいに軽い。
……気づけば俺は、そんな姿に見とれていた。
色白な肌。長いまつ毛。
横顔はどこからどう見ても、可愛い女の子だ。
高校の頃は、ただの「友達」として隣にいた。
けど──大学に進んで距離ができて、ユウヤさんと付き合い始めて……。
最近のハルは、前よりもずっと可愛く見えて仕方ない。
……なんでだろうな。
新しく出来たケーキ屋のガラス張りの店内。 お洒落な雰囲気。
小さなテーブルに並んだ色とりどりのケーキを前に、ハルは嬉しそうにフォークを動かしていた。
「ここのケーキめっちゃ美味しいな~。来れて嬉しい」
無邪気に笑ってそんなことを言う。
俺は「そっか」と笑い返すけれど、胸の奥でざらつくものがあった。
(……なんだよそれ。ユウヤさんと比べんなって……)
けど、ハルは悪気なんてまるでない。
学校のこと、サークルのこと、ユウヤさんとの何気ない日常──楽しそうに話す声に、俺は「うんうん」って相槌を打ちながら耳を傾けていた。
気づけば、時間はあっという間に過ぎていた。
⸻
店を出た瞬間、空がぐらついたように暗くなった。
次の瞬間──バリバリッ!と雷鳴が落ちて、ゲリラ豪雨が街を飲み込んだ。
「わー、早く雨宿りしないと」
二人で慌てて、でも笑いながら走り出す。
すぐ近くにバス待合所を見つけ、屋根の下に駆け込んだ。
肩で息をしながら、びしょ濡れの髪をかき上げる。
横を見ると、ハルは前髪から雫を滴らせながら、水色のシャツが肌に貼りついていた。
華奢な肩のライン、濡れた首筋。
笑っているのに、どこか大人びた色気を纏っていて、俺は息を呑んだ。
(……やばい。なんでこんなにこいつ綺麗なんだよ)
気づけば、手が勝手に伸びていた。
濡れた髪を拭ってやりたくて──ただ触れたくて。
けど、その瞬間。
ハルがふいに振り向いて、にこっと笑った。
「なに?手濡れるよ?」
柔らかな手が俺の手を押さえて、軽く引き戻す。
何も知らない笑顔。いつものハルだ。
「……っ」
胸がぎゅっと掴まれる。
振り払われたわけじゃないのに、その一言がやけに甘くて、苦しい。
雨の音にかき消されそうなほど小さく、俺は心の中で呟いた。
(……ユウヤさんが沼るのも、わかるわ)
雨が少し弱まった頃、スマホが震えた。
ハルが画面を見た瞬間、ぱっと花が咲くみたいな笑顔になる。
「ユウヤから…だ」
声まで弾んでいる。
「わっ!研修終わったって!駅に迎えに行くね、だってさ! 早く帰れるんだ~」
その姿に胸がざわめきながらも、俺はつい口をついて出た。
「……なぁ、ハル」
「ん?なに?」
無邪気に首をかしげるハル。
「……俺とレンさん、どう見える?」
「え?」
ハルは一瞬目を瞬かせてから、ふっと笑った。
「仲いいと思うよ? でも……まだ全然これからって感じかな。レンさんもタクミのこと気にしてるんじゃない?僕にはそう見えてるけど?」
「……そう、かな」
曖昧に笑うしかなかった。
ハルはスマホをポケットに入れ、またにこっと笑う。
「だから大丈夫。タクミもちゃんと、気持ち伝えたらいいんだよ、好きなんでしょ?伝えなよ」
無邪気に背中を押すその笑顔が、胸に刺さった。
気づけば腕が勝手に動いていた。
「……タクミ?」
驚いた声ごと強く抱きしめてしまう。
雨に濡れた体温が思った以上に近くて、喉の奥が熱くなる。
「……ごめん。なんか……今、そうしたくなった」
理由なんてわからない。
ハルは一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
「……ちょっと、痛いよ。びっくりするじゃん。どうしたの?タクミ」
優しい声で問いかける。
「……」
返事ができない。
「ごめん。俺、おかしいよな。なんか……」
言葉を探す俺に、ハルは軽く肩を押した。
「こっちこそ、、、なんか変だよ?
いつものタクミらしくないよ?」
その笑顔があまりに無邪気で、余計に胸が締めつけられる。
(……俺じゃ、届かないんだよな)
その時、またスマホが震えた。
画面を見たハルの顔が嬉しそうだ…
「ユウヤから。“駅に着いたけど、どこ?”ってきた…ごめん、行かなきゃ」
声まで弾んでいて、さっきまでの切なげな雰囲気は跡形もない。
「タクミ、ごめん、先帰るね?
今日ありがとうね。バイバイ」
雨粒を跳ね飛ばしながら走っていく背中を見送る。
残されたのは、雨音と、さっきの温もりだけ。
(……レンさん。俺……)
ため息と一緒に、心の奥の名前をこぼした。
タクミはまだ濡れた髪をそのままに、雨が止むまで呆然と立ち尽くしていた。
ちょうどその時、一台の黒い車がゆっくりと前の道を通りかかっていた
窓越しに見えたのは──タクミがハルを抱きしめて、そっと手を離した直後の姿。
ハンドルを握るユウヤの眉が、かすかに動く。
(……なんや、今のは)
助手席には誰もいない。
ハルに連絡を入れようとスマホを取った矢先の光景だった。
クラクションを鳴らすことも、声をかけることもしない。
(……タクミ。人のもんに、手ぇ出そうとしたんか……?)
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