壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月

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Lesson 12 大人は怖くて、優しい

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午前8時ー


俺は、スマホの着信音で目を覚ました。
寝ぼけ眼のまま画面をスライドさせる。

「……もしもし」

『おい、お前がレンだな?』

乱暴な声に眉をひそめ、寝癖の髪をかき上げる。
「……は? 朝から何言ってんだよ。なんで俺の番号知ってる?」

『レナの彼氏だ。ケント。俳優やってる。……まだ売れてねぇけどな』

「……自分で言うかよ」

ため息がひとつ。コンタクトをしていない視界はぼやけて、余計に苛立つ。なんなん?今何時だよ

「電話じゃ話にならねぇ。直接会おうぜ」

俺は通話を切るとすぐ、ユウヤにLINEを飛ばしてたー

【困った。レナの彼氏と名乗るやつから電話、今から会ってくる】

既読がつくまで三秒もかからなかった。
早起きだな…

【なに?俺もいくで、面白そうやな】

【いや、来なくていい】と返す。

【ええよ。隣の席で茶でも飲んどくわ】

レンはスマホを放り投げ、天井を睨んだ。
「……まったく、勝手にしろ」



個室カフェ

アイスコーヒーの氷を俺はカランと鳴らした。対面のケントは、場違いなクリームソーダを派手にかき混ぜている。
カランカラン

「なぁレン。レナは俺の女だ。お前さ、まだ諦めてないんだろ?」

わざとらしく大きな声。周囲の笑い声と混じって、耳障りだった。

「……言っとくが、もうとっくに別れてるんだよ。興味はない。浮気してる奴が、人に言えんのか?」

「は?浮気くらい普通だろ? 男なら息抜きだって。お前だって芸能人だろ?
わかるよな」

「……普通じゃねぇよ」
お声は淡々としている。

「お前に何がわかる!モデルだかなんだか知らねえけど、偉そうに。俺だって女と絡む仕事があるんだ。一つや二つの遊びくらいでガタガタ言うな」

「……ふーん。泣かせてる時点で終わってんだよ。大事にできねぇなら、付き合う資格もない」

ケントが机に身を乗り出す
「ふざけんな! 俺はレナを手放す気ねぇ! 俺から離れるわけが──」

「……おいおい。ケントくんやないか。久しぶりやなぁ」
背後から聞こえた関西訛りに、ケントの声が止まる。

振り返ると、ダージリンティーを片手にしたユウヤが立っていた。

「御影……ユウヤ……?中学一緒の… 」

「あぁ、全部聴いとったで、場所考えな」
冷たい笑みを浮かべ、低く続ける。

「そんで、俺はユウヤ様や。呼び捨てにすんな」

空気が一気に凍った。

「……女を大事にできひん奴は、結局ひとりや」
淡々と放たれる声は刃みたいに鋭く、ケントの顔色が引きつる。

レンはアイスコーヒーを置いた

「なぁ、努力しろよ。売れる俳優になってから出直せ。浮気癖も直せ。そんな男に、誰がついてくるんだ。……みっともなく縋るくらいなら、自分から身を引け」

ケントの拳が震えるが、言葉は出てこない。

その時、ユウヤのスマホが震えた。
画面を見た瞬間、表情がふっと柔らぐ。

「……おぉ、ハル~♡ 今?ちょっと友達とお茶してんねん」
冷徹さは消え、とろけるような甘さに変わる。

「……うん、あとで行くわ♡待っとけな」

通話を切ると再び真顔。
ケントを真っ直ぐに射抜いた。

「女にはなぁ……これくらい惚れ込まな、すぐ逃げられる。
お前には、その覚悟がない」

「チッ…」
ケントは舌打ちし、席を蹴るようにして出ていった。

残った静寂に、レンは深く息を吐いた。
「……ほんと、お前の一言、関西弁だから余計に怖ぇな」

ユウヤは肩をすくめ、ティーをひと口。
「惚れたもん勝ちやろ」

俺はその言葉に羨ましさを感じた
「……ユウヤ、お前……やっぱ沼ってんな」

「はは。褒め言葉やな」
ユウヤが目を細めて笑う。

張り詰めていた空気は、ようやくカフェのざわめきに溶けていった。
レンはアイスコーヒーを飲み干し、窓の外に視線をやる。

雨粒がガラスを伝う。

胸の奥に残る熱を持て余しながら、ふと脳裏に浮かんだのは──
あの時に観覧車の中で不意に見せた、あの驚いたような瞳。

(……タクミ今なにしてんだろな…)

アイスコーヒーのグラスの底に残った氷が、静かに音を立てた。


Lesson 13へ続くー♡♡


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