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Lesson 18 嫉妬と口づけの夜
しおりを挟むデート当日
タクミは眠れなかったせいで、少し目の下に影を残しながらも、きっちりした服で待っていた。
マンションの前に停まった赤のSUV。
運転席の窓が開き、サングラスをかけたレンの顔がのぞく。
「おい、乗れよ。……そんなに緊張すんな」
低い声とともに、レンは口元だけでニッと笑う。
「……っ。やっぱり、かっこいい。似合いますね、サングラス……」
「当たり前だろ。モデルだからな」
余裕たっぷりに笑って、レンはサングラスを外し、タクミを一瞥する。
「お前も、悪くねぇな。今日は少し男に見えるわ」
「え、そ、そんなこと……」
タクミは耳まで赤くなり、慌ててシートベルトを締めた。
―――
車が走り出す。窓から差し込む光と、流れる街並み。
レンの横顔は真剣そのもので、ハンドルを切る仕草さえ絵になった。
「……なんか、映画みたいです」
タクミが小さくつぶやく。
「は?」
「レンの横顔とか……、ハンドル握ってる手とか……全部」
レンは鼻で笑い、わざと視線を逸らさずに言った。
「お前本当は、俺に惚れてんだろ? 素直に言えよ」
「っ……」タクミは顔をそむけ、窓の外を見つめる。
途中のコーヒーショップに車を滑り込ませる。
レンは片手でサングラスを外し、慣れた仕草で注文する。
「コールドブリューコーヒー、トール。……お前は?」
「え、えっと……同じので」
「ん?好きなの選べ」
タクミは緊張の様子で、「キャラメルフラペチーノ、トールで」
レンはスマートに受け取ったカップを片手で渡し、もう片手で軽やかにギアを入れた。
氷が揺れる音に混じって、香ばしい匂いが車内に広がる。
「ほら、落とすなよ」
「……ありがとうございます」
「礼なんかいらねぇよ。どうせ俺がお前の分も飲むから」
「飲ませません!」
むきになって言うタクミに、レンは愉快そうに肩を揺らした。
江ノ島到着
海が広がる。潮風が窓から吹き込み、タクミの髪を乱す。
レンは車を停め、サングラスを外して砂浜を見渡した。
「……やっぱ、悪くねぇな」
「海、好きですか?」
「んー、まぁな。けど一緒に来る奴なんてそうそういねぇ」
レンの横顔は、どこか遠い。
その横で、タクミは小さく呟いた。
「……夢みたいだよ。俺なんかが、こうしてレンの隣にいるなんて」
レンは一瞬だけタクミを見た。
その視線に気付いたタクミは、慌てて砂浜へ走り出す。
「わ、波冷たい!」
笑いながら足を濡らすタクミを、レンは少し後ろから眺め、スマホでさりげなくシャッターを切った。
波打ち際で追いかけっこをして、二人は息を切らせて砂浜に座り込む。
「はぁ……疲れた……」
タクミは額の汗を拭い、隣のレンをちらりと見た。
サングラス越しでも、イケメンすぎるその姿に胸が苦しくなる。
「……レンは、どうして俺なんかと」
小さな声に、レンは海を見ながら答える。
「理由なんかねぇよ。気付いたら……お前を選んでた、」
「……っ」
「なぁ、タクミ」
レンはサングラスを外し、直に視線を合わせる。
「近くにいるのに、遠いって思わせんな。俺は、ちゃんとここにいるんだから」
潮風が二人の間を吹き抜けた。
タクミはただ、胸の鼓動を抑えられなかった。
夜の高速帰り道ー
SUVの窓の外を、オレンジ色の街灯が流れていく。
フロントガラスに映る街灯がリズムを刻んでいる。
助手席のタクミは、安堵と疲れに包まれ、無防備に眠っていた。
レンは横目でちらりと見て、口の端をわずかに上げた。
「……ガキかよ」
低く呟きながらも、その声は優しい。
信号で車が止まる。
レンが視線を戻そうとした瞬間、タクミの唇がかすかに動いた。
「……ハル……」
小さな寝言。
レンの瞳が鋭く揺れる。
「……ったく。しつこい男だなお前」
レンは片手でハンドルを握ったまま、もう一方の手でシートに体を支え、身を傾ける。
そしてー 横顔が近づく。
指先で頬の髪をそっと払うと、眠るタクミの唇にためらいなく触れた。
刹那、車内の空気が張り詰める。
エアコンの音も、遠くのクラクションも、すべてが遠のく。
ただ、レンの美しさだけが、タクミの視界を奪った。
ぱっと目を覚ましたタクミが、驚愕に見開いた瞳でレンを見つめる。
「れ、レン……っ今の」
運転席に戻る直前、レンは深く低く囁いた。
「お前、寝言で嫉妬させんな。……俺は今ここにいる」
再びアクセルが踏み込まれ、SUVは夜の道を滑るように走り出した。
――Lesson19へ続く♡
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