壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月

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Lesson 19 惚れさせる男

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タクミは頬に熱を残したまま、シートベルトを握りしめていた。

心臓は早鐘を打ち、落ち着けと自分に言い聞かせても、横にいるレンの存在感が強すぎる。

「ね、寝言って……俺、なに言ってたんですか」


レンは視線を前方の夜道に向けたまま、わざと間を取って嘘を答える。

「……ユウヤと仲良くしないでって」

「はっ……!」

タクミの顔は瞬く間に真っ赤に染まる。
否定したくても言葉が詰まり、声が出ない。

レンは片手でハンドルを操りながら、ふと笑う。

「素直でよろしい。お前、嫉妬深いのな」

「そ、そんなこと……っ」

タクミは窓の外に視線を逃がす。街灯が流れていくのを見ながら、胸の奥で熱が広がっていくのを止められなかった。



やがて車はタクミの家の前に停まった。

シートベルトを外し、ドアに手をかける。けれど、なぜか足は動かない。

「……ありがとうございました」

絞り出すように告げた声は、少し寂しげに揺れていた。

その表情を横目で捉えたレンは、低く息を吐く。

「……しゃあないな」

次の瞬間、レンの指がタクミの顎を持ち上げた。

人差し指が下唇に触れたあと、影が差すように顔が近づき、ためらいのない口づけが
甘く落ちる。

最初は軽く優しく触れるだけだった。

だがタクミが震える唇を結ぶと、レンはさらに深く奪うように口づけを重ねる。

「……っ、ん……」

タクミは必死に息を整えようとするが、長いキスー
抗えない熱に飲み込まれていく。

ようやく離れたとき、タクミの頬は真っ赤に染まり、目元には涙のような光が滲んでいた。

「……ふっ。おやすみ、タクミ」

囁きは甘く色っぽい…

タクミは慌てて「ありがとうございましたっ」と声を裏返し、ドアを閉める。

玄関に駆け込む背中を見送りながら、レンは唇に残る熱を指先で拭った。

夜風が吹き込む車内に、まだタクミの体温が残っている。

部屋に戻ったタクミは、玄関で靴も脱ぎかけのまま、その場にしゃがみ込んだ。

「……な、なんで俺、ありがとうございましたなんて言ったんだ……!うわぁぁあ」

声に出してみて、さらに顔が真っ赤になる。

思い出しただけで、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
あの柔らかい唇の感触。

深く重ねられた熱いキス――息ができないほどで、頭が真っ白になった。

「……やばい、やばい… なんだよ、まだ残ってる……」

ベッドに倒れ込むと、枕に顔を埋める。
瞼を閉じれば、レンの横顔が鮮やかによみがえる。

切なさと甘さを混ぜたような色っぽい顔。
唇を濡らして俺を見つめた、あのイケメンすぎる顔ー

「……思い出すだけでドキドキして苦しい……」

胸に手を押し当てると、心臓は痛いくらい跳ねていた。

全身がまだ熱に包まれている。
眠ろうとしても、絶対眠れそうにない。

「やばい… なんなんだあの破壊力…」


一方その頃、レンはまだ車を走らせていた。

信号待ちで車を止めると、ポケットからタバコを取り出す。

ライターの小さな炎が夜の闇に揺れ、レンの横顔を照らした。

唇に挟んで火を移すと、赤く灯った先端がチリ、と音を立てる。

煙をゆっくり吐き出すたび、車内に漂う微かな苦味が彼の色気を際立たせた。

「……あいつの顔…」

目を細めて吐き出した白い煙が、街灯に照らされて淡く揺らめく。

指先に残る熱と、唇に残る感触を思い返しながら、レンは低く笑った。


「……もう俺に惚れてるだろ。」


Lesson 20へ続くー
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