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番外編 消せない想いと嫉妬と救いの狭間で
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俺とハルとの出会いー
四月、春 高校入学ー
桜の花びらが舞い込む廊下で、人だかりができていた。
「え、マジ?」「もう告ってんのかよ」
ざわめきにタクミも目を向ける。
「ずっと前からハルくんが好きで、この高校に入りました!付き合ってください」
女子生徒の真剣な声が響いた。
皆が注目する中、呼ばれた男子――ハルは、驚いたように瞬きをしたあと、困ったように笑った。
その笑顔は柔らかくて、恥ずかしさに頬を赤く染めていて――まるで女の子みたいに可愛かった。
「ごめん……僕、まだそういうの、よく分かんなくて」
照れながら小さな声で答える。
その姿に、周りの男子が「なんだよアイツ、可愛すぎるだろ」なんて囁いた。
――女の子じゃないのか。
タクミは心の奥で戸惑った。
けど、その笑顔が妙に焼き付いて離れなかった。
そして教室。
席順で決まった隣は、まさかのそのハルだった。
桜と同じくらい眩しく笑う顔を、至近距離で見ることになるなんて思ってもみなかった。
⸻本当に綺麗な顔だ…
最初はただのクラスメイト。
けれど、俺が課題を忘れて先生に怒られて落ち込んでいた日、ハルがそっと言った。
「大丈夫だよ、タクミくん。次で挽回すればいいって、だから気にしないで!」
不思議と、その言葉で肩の力が抜けた。
胸の奥が温かくなるのを、俺は誤魔化すようにノートを見つめた。
頑張って勉強しよって誓った。
その日からだった。
「ハル、ってさーマジ可愛いよな、肌も
めちゃくちゃ綺麗だしよ」
「男だけど、女子より可愛いんじゃね?」
「やべっ、男なのに好きなりそうだわ」
ひそひそ声を聞くたび、心臓を掴まれるようにドキッとする。
(違う。俺はそう思ってない)
……そう言い聞かせながら、心に蓋をした。
けれど、高ニになってから
ハルはよく口にするようになった。
「ユウヤさんがね、すごいんだ」
「勉強も分かりやすいし、優しいし、めちゃくちゃイケメンでさ、全部がかっこよくてさ」
その笑顔が、今までにないくらい楽しそうで。
ータクミの胸はじわじわ締め付けられていった
ある日、ふと横からハルのスマホ画面が見えてしまった。
待ち受けは――ユウヤさんとのツーショット。
「え……」息を呑むタクミをよそに、ハルは照れたように笑った。
「……見た?これ、この前一緒に撮ったんだ」
そして、高三の夏休み明けのある放課後
ハルは頬をほんのり赤く染め、恥ずかしそうに言った。
「……僕さ、ユウヤさんと付き合えることになったんだ。両思いだったみたい」
嬉しそうに照れて笑うその顔は、幸せそのものだった。
俺は笑ったふりをして「良かったな」なんて言った。
けれど、心の中では何かが崩れ落ちる音がした。
なんだろ、この感覚ー
――どうして俺じゃないんだ。
壊したい… 壊れてしまえばいいのに…
別れて欲しい…
いつも隣にいるのは俺だよな?
「俺はずるい」
……ある日。
昼休み、教室の窓際。
ハルは机に突っ伏して、小さく寝息を立てていた。
その横顔に、桜色の光が差し込んでいて――あまりに綺麗で、可愛いくて思わずスマホを取り出した。
シャッター音が鳴る瞬間、胸がぎゅっと痛んだ。
「何してんだよ俺……」
分かってる。卑怯だって。
けど、その一枚をどうしても残しておきたかった。
それから何度も、その写真を見返した。
ユウヤさんと笑う待ち受けを見たときも、ユウヤさんと付き合ったと聞かされた夜も――
その寝顔だけは、自分だけのものみたいで。
けれど、ある時ふと思った。
(……こんなんじゃ、前に進めねぇよな)
画面に映るハルの寝顔に、親指がかかる。
「消そう……」「消せない。」
呟きながらも、なかなか押せない。
胸が苦しくて、吐き気がするくらい迷って――それでも、震える指で削除のボタンを押した。
その寝顔を忘れられないまま、笑って前を向くしかなかった。
そしてー
画面は空っぽになった。
でも、胸の奥は何も変わらなかった。
ハルへの想いは、消しても消えない。
好きだ… 好きだ… 好き…だった。
そんな時――隣にいてくれたのが、レンさんだった。最初は嫌いだった…
けど、レンさんを知ることに
憧れへと変化していた。
「……レンさん」
心の中で名前を呼ぶ。
イケメンで、誰からも注目される人。
俺なんかが並んでいい存在じゃない。
でも、レンさんは笑ってくれた。
俺を見て、冗談混じりにいつも声をかけてくれた。カッコいい服も買ってくれたり…
それだけで、胸の苦しさが少しずつほどけていった。
(……俺なんかが、隣に並んでいいんですか)
(俺はカッコよくもないし、好きになっても、いいですか。レンさん)
声にならない問いは、胸の奥で震え続けた。
レンさんがいる事で、それだけで救われていた。
気付けば――その存在に惹かれている自分がいて。
もう後戻りはできないんだろうな、って胸の奥で笑った。
ー番外編 終わり。
四月、春 高校入学ー
桜の花びらが舞い込む廊下で、人だかりができていた。
「え、マジ?」「もう告ってんのかよ」
ざわめきにタクミも目を向ける。
「ずっと前からハルくんが好きで、この高校に入りました!付き合ってください」
女子生徒の真剣な声が響いた。
皆が注目する中、呼ばれた男子――ハルは、驚いたように瞬きをしたあと、困ったように笑った。
その笑顔は柔らかくて、恥ずかしさに頬を赤く染めていて――まるで女の子みたいに可愛かった。
「ごめん……僕、まだそういうの、よく分かんなくて」
照れながら小さな声で答える。
その姿に、周りの男子が「なんだよアイツ、可愛すぎるだろ」なんて囁いた。
――女の子じゃないのか。
タクミは心の奥で戸惑った。
けど、その笑顔が妙に焼き付いて離れなかった。
そして教室。
席順で決まった隣は、まさかのそのハルだった。
桜と同じくらい眩しく笑う顔を、至近距離で見ることになるなんて思ってもみなかった。
⸻本当に綺麗な顔だ…
最初はただのクラスメイト。
けれど、俺が課題を忘れて先生に怒られて落ち込んでいた日、ハルがそっと言った。
「大丈夫だよ、タクミくん。次で挽回すればいいって、だから気にしないで!」
不思議と、その言葉で肩の力が抜けた。
胸の奥が温かくなるのを、俺は誤魔化すようにノートを見つめた。
頑張って勉強しよって誓った。
その日からだった。
「ハル、ってさーマジ可愛いよな、肌も
めちゃくちゃ綺麗だしよ」
「男だけど、女子より可愛いんじゃね?」
「やべっ、男なのに好きなりそうだわ」
ひそひそ声を聞くたび、心臓を掴まれるようにドキッとする。
(違う。俺はそう思ってない)
……そう言い聞かせながら、心に蓋をした。
けれど、高ニになってから
ハルはよく口にするようになった。
「ユウヤさんがね、すごいんだ」
「勉強も分かりやすいし、優しいし、めちゃくちゃイケメンでさ、全部がかっこよくてさ」
その笑顔が、今までにないくらい楽しそうで。
ータクミの胸はじわじわ締め付けられていった
ある日、ふと横からハルのスマホ画面が見えてしまった。
待ち受けは――ユウヤさんとのツーショット。
「え……」息を呑むタクミをよそに、ハルは照れたように笑った。
「……見た?これ、この前一緒に撮ったんだ」
そして、高三の夏休み明けのある放課後
ハルは頬をほんのり赤く染め、恥ずかしそうに言った。
「……僕さ、ユウヤさんと付き合えることになったんだ。両思いだったみたい」
嬉しそうに照れて笑うその顔は、幸せそのものだった。
俺は笑ったふりをして「良かったな」なんて言った。
けれど、心の中では何かが崩れ落ちる音がした。
なんだろ、この感覚ー
――どうして俺じゃないんだ。
壊したい… 壊れてしまえばいいのに…
別れて欲しい…
いつも隣にいるのは俺だよな?
「俺はずるい」
……ある日。
昼休み、教室の窓際。
ハルは机に突っ伏して、小さく寝息を立てていた。
その横顔に、桜色の光が差し込んでいて――あまりに綺麗で、可愛いくて思わずスマホを取り出した。
シャッター音が鳴る瞬間、胸がぎゅっと痛んだ。
「何してんだよ俺……」
分かってる。卑怯だって。
けど、その一枚をどうしても残しておきたかった。
それから何度も、その写真を見返した。
ユウヤさんと笑う待ち受けを見たときも、ユウヤさんと付き合ったと聞かされた夜も――
その寝顔だけは、自分だけのものみたいで。
けれど、ある時ふと思った。
(……こんなんじゃ、前に進めねぇよな)
画面に映るハルの寝顔に、親指がかかる。
「消そう……」「消せない。」
呟きながらも、なかなか押せない。
胸が苦しくて、吐き気がするくらい迷って――それでも、震える指で削除のボタンを押した。
その寝顔を忘れられないまま、笑って前を向くしかなかった。
そしてー
画面は空っぽになった。
でも、胸の奥は何も変わらなかった。
ハルへの想いは、消しても消えない。
好きだ… 好きだ… 好き…だった。
そんな時――隣にいてくれたのが、レンさんだった。最初は嫌いだった…
けど、レンさんを知ることに
憧れへと変化していた。
「……レンさん」
心の中で名前を呼ぶ。
イケメンで、誰からも注目される人。
俺なんかが並んでいい存在じゃない。
でも、レンさんは笑ってくれた。
俺を見て、冗談混じりにいつも声をかけてくれた。カッコいい服も買ってくれたり…
それだけで、胸の苦しさが少しずつほどけていった。
(……俺なんかが、隣に並んでいいんですか)
(俺はカッコよくもないし、好きになっても、いいですか。レンさん)
声にならない問いは、胸の奥で震え続けた。
レンさんがいる事で、それだけで救われていた。
気付けば――その存在に惹かれている自分がいて。
もう後戻りはできないんだろうな、って胸の奥で笑った。
ー番外編 終わり。
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