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Lesson20 琥珀のグラスに映る未来─約束された愛と、まだ答えのない想い
しおりを挟む江ノ島デートから二週間が経った
スタジオのライトに照らされ、レンは端正な表情でポーズを決める。
一瞬ごとに変わる角度や視線に、シャッター音がリズムを刻み、現場の空気が締まった。
「さすがだな……」とスタッフの囁きが漏れる。
「──あ、レン。久しぶりやな」
機材を抱えたユウヤがスタッフに混ざって入ってくる。
その瞬間、周囲がざわついた。
「え、あの人もモデル?」「背高いし、雰囲気ある…」
「やだ、めちゃくちゃイケメン…」
「いや、カメラマンらしいけど…モデル並みに目立ってる」
スタッフの視線を一身に集めるユウヤの姿に、現場は妙な熱気を帯びた。
レンは軽く笑って声を掛ける。
「……相変わらず目立つな。お前とは長い付き合いになりそうだ。俺、モデルに戻ったんだ──どうだ?今度一緒に雑誌出ないか。マネージャーから話を通してやる」
ユウヤは照れ隠しに首をかしげ、真剣な口調で返す。
「そりゃ面白そうやけどな。
今は父さんの会社の系列で研修しとるんや。広報とか広告まわりの部署でな。
その流れでカメラの仕事も頼まれることがある。雑誌のアシスタントや撮影の補助とか、裏方も経験しとくと勉強になるんや。
たまに父さんの会社の現場にも呼ばれるし……いつかは会社を継がなあかんからな」
「……モデルじゃなくて裏方か」
レンが呟く。
ユウヤははっきりと頷いた。
「せや。でも俺にはそれで十分や。派手に有名になんかならんでええ。……俺が一番守りたいんは、ハルとの時間や。どれだけキラキラした世界に見えても、ハルと一緒におれんかったら意味ないねん」
レンは一瞬だけ黙り込み、視線を落とす。
「……ハルは幸せだな。お前が恋人で」
その声はほんのり寂しさを帯びていた。
ユウヤは少し照れ笑いをしながらも、まっすぐな目で返す。
「当たり前や。俺は一生、ハルの隣におる」
ざわめく現場の中で、二人だけが異なる静けさをまとっていた。
現場を後にした二人は、街の灯りに包まれたお洒落なバーに入った。
グラスに注がれる琥珀色の液体、静かに流れるジャズ。
喧騒から離れた空間に、二人の声が穏やかに溶けていく。
ユウヤが氷を転がしながら切り出した。
「なぁレン。タクミとは、どうなっとるんや?」
レンは短く息を吐き、グラスを口に運ぶ。
「……あぁ、なんなんだろな、俺ら。俺は自分の気持ちに正直でいたつもりだった。けど、あいつはずっと心の奥に押し込んでるものがあって……ようやく消えかけてる、そんなところかもしれない」
ユウヤはふっと笑い、琥珀色を一口。
「まだ……ハルのことやろ?ほんま、しつこいよなぁ」はは。
からかい混じりの声音だったが、その瞳には柔らかい光。
レンは苦笑して肩をすくめる。
「……勝てないよ、お前には」
ユウヤは真っ直ぐに答え、グラスを置く。
「勝ち負けやない。俺はただ──ハルを幸せにしたいんや。俺な、ハルに溺愛やねん。ここまで好きになったのは初めてやし、だから絶対に幸せにするって思っとる」
レンはグラスを持つ手を止め、耳を傾けた。
「実はな……ハルのお母さんに気づかれたみたいや。 同棲相手が俺って事も。
俺がどれだけハルを好きか。そしたら言われたんや、『ユウヤくんならハルを安心して任せられる』って」
ユウヤは少し照れたように笑みを浮かべる。
「最近は、俺の親父とハルのお母さんが仲良うしててな。不思議なもんや、家族ぐるみで繋がるなんて思わんかった」
レンは静かに視線を落とし、グラスの中の氷を見つめる。
「……そうか。お前はもう、そんな先を見てるんだな」
小さく笑いながらも、胸の奥で自分を省みる。
(俺は……自分のことばかり考えていた)
ふと、窓際のイルミネーションがグラスに映り込み、光がゆらめいた。
ユウヤは軽く咳払いして話題を変える。
「そういやクリスマス、プレゼントどうするんや?」
「……お前は?」とレンが問い返すと、
ユウヤは少し照れくさそうに笑った。
「ハルが欲しい言うもん、一緒に買いに行く予定や。隠し事より、あいつが欲しいもんを渡した方が確実やろ」
レンは思わず吹き出しそうになり、グラスを揺らす。
「ははっ……お前らしいな。それ、最高に幸せなやつじゃないか」
笑みを浮かべながらも、胸の奥に切なさが滲んだ。
「……たしかにクリスマス。もうすぐだな」
レンが呟く
「俺はハルとディナーや。ハルとの予定ぎっしりやけどな」
「……スケジュールいっぱいだよ、俺。モデル活動、撮影やら大変だ」
レンは苦笑混じりにグラスを揺らす。
ユウヤは軽く笑って返す。
「大変やな。俺はしっかり休み取ってるけどな」
少しの間を置いて、ユウヤがさらりと口にする。
「──タクミに誘われたらどうするんや?」
レンは目を伏せ、曖昧に笑った。
「……そうだよな」
グラスの中で氷が静かに溶けていく。
表面は大人の余裕を装いながらも、その奥には複雑な想いが揺れていた。
Lesson 21へ続く
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