キスして、触れて、全部スキなこと

柊絵麻

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【7】甘い時間に忍び寄る影

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約束の日、4人は駅前に集合した。
先に来ていたユウヤとハルに、レンとタクミが合流する。

「今日は俺の提案な。腕試し、覚悟しとけよ」
タクミがニヤリと笑い、案内した先は薄暗く照明の映えるダーツバー。

ゲーム開始

ペア戦はユウヤとハル、レンとタクミに。
1投目はユウヤ。黒いダーツを軽く回し、指先で重さを確かめる。

スッ…と肘から先だけをしなやかに動かし、矢は静かに放たれ——
ドンッ、見事ブルに突き刺さる。

「……ふっ、ま、こんなもんや」

何でもないように笑う横顔に、ハルの胸が少し熱くなる。

「ハルもやってみぃ」

ユウヤが背後からそっとハルの手を包む。

「肩の力抜け。……そう、俺だけ見とけ」

低く甘い声が耳をかすめ、視線を逸らせないまま投げると、的の外側へ。

「お、まぁまぁやな。初めてにしちゃ上出来や」

頬を軽くつつき、髪を指先で整えるユウヤ。

ーレンの表情が一瞬固まる。

タクミがレンに矢を渡す。

「ほら、先輩。見本見せろよ」

「……お前、先輩に向かってその口の利き方、いい度胸だな」

挑発気味に構えるが、レンの矢は——大きく逸れる。

「ははっ、狙ったのそこか?」

タクミの毒舌にレンがギロリ。

「口だけの奴には負けねぇ」

「……じゃあ次、泣くなよ」

ユウヤは次の投で軽くステップを踏み、無駄のない動きで矢を放つ。
再びブル直撃。 

「……これが本気や」

振り返って片眉を上げる、そのクールさにハルは息を呑む。

「次はハルの番や。……外しても、俺が全部カバーしたる」

優しい笑みで背を支えられ、ハルは再び矢を放つ。
今度は中心に近い位置に命中——

「ほら見ぃ。やれば出来るやん、俺の自慢の相方や」 

頭をくしゃりと撫でられ、胸が高鳴る。


最終的にタクミが決定打を放ち、ペア戦はタクミ&レンが勝利。

「威厳、保てて良かったな?」

レンの肩を叩くタクミに、レンは笑顔のまま低く呟く。

「……次は一対一だ」

「逃げんなよ」

タクミとレン男同士の火花を残しつつ、
4人は次の目的地、カフェへと向かう——。


ダーツで盛り上がったあと、四人は駅前の夜景が見えるカフェへと足を運んだ。

窓際の席。ガラス越しに街の灯りが瞬く中、ハルはケーキの写真を眺めている。

「……お前、ほんま可愛い顔しとるな」

突然、低く甘い声が耳に落ちてきて、ハルは顔を上げる。

「な、何いきなり……」

動揺してメニューを閉じると、ユウヤは唇の端を上げて笑った。

「ずっと言いたかってん。我慢してたんや」

「……っ」 

「はいはい、のろけはそのへんで」

タクミが苦笑しながらも、目はメニューに落としたままだ。

店員が注文を取りに来て、ケーキとコーヒーを頼むと、タクミがふと顔を上げる。


タクミ「そういや進路、ハルはどうすんだ? 俺は青蘭(せいらん)受けるけど」 

「僕は……青蘭芸術大学の美術学部に行きたい。油絵コース」 

ハルの答えに、向かいのレンが眉をひそめる。 

レン「……は? 青蘭の系列ってこと?」

タクミ「そうそう。同じ系列だけど、学部は全然違う」

レン「青蘭芸術ってさー、青蘭よりちょい下だよな? なんで美大?」

ハル「… 絵が好きだから。将来も絵を描く仕事がしたいんだ」

少し緊張しながらも、まっすぐ答えるハル。

その瞬間、ユウヤが自然に肩へ腕を回し、指先でそっと撫でた。

「ええやん。ハルの描くもん、俺好きやで」

耳に届くその声は、柔らかくて、胸の奥を温めてくる。

「……ありがと」

視線を落としたハルの頬が、ほんのり赤く染まった。

甘い空気を遮るように、タクミがカップを置いた。

「あ、そういえばさ、青蘭って美大も合同で蒼蘭祭やるだろ? 作品展示もあるし、今年行ってみね?」

レンが口角を上げる。 

レン「へぇ……面白そうじゃん」

ユウヤ「ハル、行きたいんか?」

ハル「……行ってみたい」

ユウヤ「ほな決まりや」

ユウヤがハルの手を取り、親指でやさしくなぞる。

その一瞬を、レンは黙って見つめ、奥歯をきゅっと噛みしめた——。   


7話へ続くー♡


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