ファンタジーな世界に転生したのに魔法が使えません

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第4章<アンナ特製魔方陣ノート>

6、店主

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 お茶会が終わり、シャーロットが探しに来るまで、私はベンチに1人うずくまり、必至に涙が溢れないように堪えていた。
そんな私を見て、シャーロットは物凄く心配してくれたけど、ただお茶を飲み過ぎて苦しいと言って誤魔化した。

 帰宅してから、私は何度もオリヴィア様とのやりとりを思い出し、何度も深く落ち込んだ。
オリヴィア様とセイフィード様が婚約だなんて⋯⋯、奈落の底に突き落とされた気分だ。
這い上がれなさそう⋯⋯。
はぁ⋯⋯。
最悪なことに、腕輪の輝きがなくなりかけている。
魔力も、もうすぐなくなっちゃう。
でも、オリヴィア様から言われた“搾取さくしゅ”という言葉が忘れられない。
搾取なんてしてないと思いつつも、実際に私はセイフィード様の魔力を搾取していたんだと痛感する。
私はセイフィード様に会って、直接、オリヴィア様のことを聞きたいと思う反面、もしオリヴィア様の言う通り婚約が本当だったらと思うと、怖くて確かめられない。

 はぁ⋯⋯。
100回くらい溜め息をついた時、シャーロットが私の部屋を訪れた。

「アンナ、気分はどうかしら?」

シャーロットは心配な面持ちで、私をのぞき込む。

「うん。だいぶ落ち着いてきたよ。ありがとう、シャーロット」

「そう、それは良かったわ。それでね、セイフィード様の執事から先程連絡があって、明日の午後はセイフィード様がいらっしゃるそうだから、お越しくださいとのことよ」

「そう⋯⋯、そうなんだ。明日の学校帰りに寄ってみようかな」

 私はシャーロットにそう答えたけど、セイフィード様に会うのが怖い。
だって、もし、オリヴィア様の婚約の話をされたら、悲しみのあまり失神してしまいそうだ。

「えぇ、そうなさるといいわ⋯⋯。それとアンナ、オリヴィア様のことだけど⋯⋯」

「えっ、何?」

「⋯⋯、いいえ、何でもないわ。忘れてちょうだい」

 シャーロットは何かを誤魔化すように作り笑いしながら、私の部屋から急ぎ出て行ってしまった。
物凄く気になる。
もしかしてシャーロットは、知っているのだろうか。
オリヴィア様とセイフィード様が婚約するっていう話を⋯⋯。
事情通のシャーロットなら、あり得る。
やっぱり、本当なのかもしれない⋯⋯。
ますます、明日、セイフィード様に会いたくなくなってきた。

 次の日になり、私は相変わらず気分が落ち込んだまま登校した。
どの授業内容も全く、頭に入ってこない。
ただ、ボーっと教科書を眺め、知らず知らずのうちに溜息が出る。
それの繰り返し。
大好きな魔法陣学でさえ、やる気が起きず、気づいた時には終わりを知らせる鐘が、鳴り響いていた。

「はぁ⋯⋯」

 溜息ばっかり⋯⋯。
あ~ぁ、授業が終わっちゃった。
今日これからどうしようかな⋯⋯、セイフィード様のお屋敷に行きたいけど、行きたくない。
でも、舞踏会で助けて貰ったお礼を言いたいし、腕輪の魔力もなくなりそうだし⋯⋯、いつかは行かなきゃ行けないんだし⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
うんっ、行こう。
セイフィード様のお屋敷にこれから、伺おう。
私は、ノートや教科書類を鞄にしまい、席を立とうとした時、後方から話し掛けられた。

「どうしたの? アンナさん。元気がないね」

 話しかけてきたのは、魔法陣学の助手、ジークさんだった。

「あの⋯⋯、その⋯⋯、ちょっと寝不足で⋯⋯」

咄嗟とっさのことでうまく嘘が浮かばない。

「若いんだから、よく寝ないと」

 とジークさんが言うと、私のオデコをコツンと突いた。
なぜだろ⋯⋯、ジークさんに触れられた瞬間、私は嫌な気分になった。
ジークさんは嫌いじゃないのに、なんでだろう。

「そうですね⋯⋯」

私はオデコをさすりながら、呟いた。

「そうそう、アンナさん。城下町のちょっと外れに、アンナさんが持っているような腕輪が売っているらしいですよ」

「本当ですか!?」

 そんな情報、初めて聞いた。
魔力を貯めておくだけの腕輪とか貴金属があるっていうのは知っていたけど⋯⋯、私と同じものもあるんだ。

「えぇ、魔力も貯められて、その魔力が的確に魔法道具に作用してくれるらしいですよ。もちろん、魔術書も読めるそうです」

「わぁー。嬉しい。学校帰りに早速行ってみます。貴重な情報、ありがとうございます」

 もし、その腕輪が手に入れば、これ以上、セイフィード様に迷惑かけなくて済むかもしれない。
搾取してるなんて、言われなくて済むかも。
でも、幾らするんだろう⋯⋯。
私のお小遣いで買えたらいいな。

 私はジークさんに売っている場所の詳細を聞き、急ぎ馬車に乗り込む。
御者には、少し歩きたいからと言い、セイフィード様の屋敷より少し手前で降ろして貰う。
一応、御者にはセイフィード様のお屋敷を訪れると嘘をついて⋯⋯。
そこから、ジークさんに教えてもらった場所まで、そう遠くなく、30分くらい歩いたら着きそうだった。

 城下町の通りを歩いていると、生鮮食品や日用品が売っているマルシェに出くわし、私はワクワクした。
時間があったら、帰りに寄り道しちゃおっかな!
こういう賑やかな感じ、とっても楽しい。
いつもはシャーロットやメイドさんが一緒だったけど、やっぱり1人で気ままにショッピングするのっていいかも。
私は、スキップしながら軽やかに足を進めた。

 すると、ジークさんから教えてもらった目印の靴屋さんが見えてきた。
ええっと⋯⋯、靴屋さんの左にある細い路地に入るんだよね⋯⋯。
⋯⋯なんか薄暗い雰囲気だけど、大丈夫かな。
私は妙な不安に襲われた。
けど⋯⋯、まだ昼間だし、問題ないよね。
私は薄暗い細い路地に入り、少し歩いたら目的地のお店に到着した。

 私は恐る恐るその店のドアを開ける。
その拍子に、カラン、コロンとドアベルが店内に鳴り響く。
ベルの音にびっくりして、私の肩が跳ね上がった。

「いらっしゃい」

 ずんぐりむっくりした男性の店主がニタリと笑い、私を見る。
店主は、腰が曲がっていて、私と同じくらいの身長だ。
髪の毛は薄く、白髪混じりで貧相に見え、また笑った口から見えた歯は、薄汚く黄ばんでいる。
また、店内は全体的に暗く埃っぽい。
しかし、店に置かれた品々は興味を惹かれる魔法道具ばかりだった。
魔法のペン、魔法の杖、魔法の水晶、魔法の薬。
どれも手にとって、見てみたい物ばかり。
私が店の中でキョロキョロしていると、店主が私に話しかけてきた。

「嬢ちゃん、何、探してんだい?」

「あ、あの⋯⋯、腕輪を探していて⋯⋯」

「どんな腕輪だい?」

「魔力も貯められて、その魔力が的確に魔法道具に作用してくれる腕輪なんですけど⋯⋯こちらにあると伺って来ました」

「あぁ、それなら店の奥にあるよ。今取って来てやるから待ってな」

と店主が言うと、店の奥から腕輪を持ってきて、カウンターに置いた。

「あの、触ってもいいですか?」

「あぁ、もちろんいいさ」

 私はその腕輪を手に持ってみる。
その腕輪は私が持っている腕輪よりずっしりと重い。
材質は銀だけど、なんとなく濁っているような感じがする銀だった。

「試してみるかい? 嬢ちゃん」

 店主は、また黄ばんだ歯を見せながらニタリと笑う。

「いいんですか。是非お願いします」

 なんだか、緊張してきた。
ドキドキする。

「じゃあ、今つけている腕輪外しな」

 店主は、私の腕輪を早く渡せと言わんばかりに、手を伸ばす。

「外さないと、駄目でしょうか⋯⋯」

 出来れば外したくない。
私は、躊躇ちゅうちょした。

「そりゃ、そうさ。誤作動しちまう」

 店主は両手を広げて呆れている。
私は仕方が無く、私の腕輪を外し、カウンターに置いた⋯⋯。
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