1 / 1
イギリスのテムズ川とエチオピアのオモ川—投資家と遊牧民—途上国の”経済発展”の裏側で。
しおりを挟む
クロードによる生成小説です
「飢える大陸アフリカ」と言う本を図書館で借りて読んでいて、ふと気になりクロードに質問してみました。
⚫︎プロンプト
食糧が武器として利用される
って?
「外国企業や投資家による大規模農地取得」
これを脚本にして。
投資家のオフィスと農民と現地の王侯貴族や政治家、いろいろな視点から
「貯蔵施設の欠如」
これってどのくらい深刻なの?
⚫︎
# 「食糧が武器として利用される」とは
紛争地域で支配勢力が:
- **援助物資の流通を支配**:特定地域への食糧供給を遮断し、住民を服従させる
- **食糧配給の条件化**:「政府軍に情報を流すな」「反政府勢力に協力しろ」という条件で配給
- **意図的な飢餓作戦**:敵対勢力の支配地域を兵糧攻めにする
- **援助物資の横流し**:軍事組織が援助食糧を売却し、武器購入資金に
南スーダン、イエメン、ソマリアなどで頻繁に報告されています。
-----
# 「土地は誰のものか」—ランドグラビングの現場
## 第一幕:ロンドン、投資ファンドのオフィス
42階。テムズ川を見下ろすガラス張りの会議室。
「エチオピア南部、200万ヘクタール。年間リターン12%を想定しています」
プレゼンターの若手アナリスト、ジェームズがスライドを切り替える。衛星写真に緑の広大な土地が映し出された。
「素晴らしい。水源は?」
銀髪の投資責任者、サー・デイビッドが身を乗り出した。
「オモ川流域です。年間降水量も十分。未開発地が広がっています」
「“未開発”? つまり誰も使っていない土地か?」
「ええ、その通りです。遊休地です」
画面には数字が躍る。投資額、予想収益、ROI…
「作物は?」
「バイオ燃料用のジャトロファを提案します。ヨーロッパの再生可能エネルギー需要に応えられます。政治的にも正しい」
会議室に満足げな笑みが広がる。
「現地政府との交渉状況は?」
「非常に前向きです。50年リース、税制優遇措置付き。ヘクタール当たり年間2ドルです」
「2ドル? ハハハ! ロンドンの駐車場代より安いな!」
笑い声。シャンパンの栓を抜く音。
「では、承認ということで。ジェームズ、よくやった。これで我々も”アフリカの発展に貢献している”投資家だ」
-----
## 第二幕:エチオピア、首都アディスアベバ、政府庁舎
「大臣、書類にサインを」
秘書が分厚いファイルを差し出す。
ベレフ大臣は高級な万年筆を手に取り、躊躇なくサインした。
「これで外貨が入る。200万ドルだ」
「はい。海外投資家との契約です。国の発展のためです」
「発展…そうだ、発展だ」
大臣は窓の外を見た。建設中の高層ビル、新しい道路。
「我々は前進している。この国は貧しいと言われ続けてきた。だが、もう違う。外国の資本を呼び込み、近代化する。それが私の使命だ」
「南部の住民への説明は?」
「説明? あの土地は国有地だ。遊牧民が季節的に通過するだけの、何の生産性もない土地だ。今度は外貨を生む。文句を言われる筋合いはない」
秘書は何か言いかけて、口をつぐんだ。
大臣の机の上には、次の案件ファイルが積まれている。サウジアラビア企業、中国国営企業、インド財閥…
「次だ。時間がない。この国を変えるには、スピードが必要なんだ」
-----
## 第三幕:南部オモ川流域、ボディ族の村
「嘘だ! 嘘だと言ってくれ!」
族長のカラは、村の広場で書類を握りしめていた。アムハラ語で書かれた公文書。理解できる単語は少ないが、地図ははっきりしている。
赤い線で囲まれた領域。それは、彼らが何世代も移動してきた放牧ルートの全てだった。
「60日以内に立ち退け、と書いてあります」
若い教師のアレムが翻訳する。彼は首都で教育を受けた、村で唯一アムハラ語を流暢に話せる人間だった。
「60日? 我々はここで生まれ、祖父の祖父の時代から生きてきた。それを60日で出て行けだと?」
「補償金は…一世帯あたり500ブルです」
「500ブル? 山羊一頭分じゃないか!」
村人たちがざわめく。女たちが泣き始めた。
「どこへ行けというんだ? 乾期には川に水を飲みに来る。雨季には高地に移動する。この土地がなければ、牛は死ぬ。牛が死ねば、我々も死ぬ」
アレムは唇を噛んだ。
「政府は…再定住地を用意すると言っています」
「再定住?」
「はい。北の…農業定住地です」
「俺たちは農民じゃない! 遊牧民だ! 牛と共に移動して生きる。それが我々の生き方だ!」
カラの叫びが、夕暮れの空に響いた。
-----
夜。焚き火を囲んで、長老たちが集まった。
「戦うべきだ」
若い戦士ムリが立ち上がった。
「誰と戦う?」
カラが静かに尋ねる。
「政府と! 外国人と! 我々の土地を奪う者たちと!」
「AK-47と戦車を相手にか? お前の槍で?」
沈黙。
最年長のトルガが、しわだらけの手で杖を握った。
「わしらの敗北は、ずっと前から決まっていたのかもしれん」
「長老…」
「わしらには”紙”がなかった。あの者たちは紙に何かを書き、それを”法律”と呼ぶ。紙に書かれたことが、我々の千年の生活より強い。そういう世界なのだ」
「では、諦めろと?」
「諦めろとは言わん。だが、わかっておけ。我々は透明人間なのだ。彼らの地図には、道も、村も、我々の名前も書かれていない。だから”未使用地”になる」
アレムが口を開いた。
「首都に行きます。弁護士を探します。訴訟を起こせるかもしれない」
「金は?」
「村の貯えを使います」
カラは天を見上げた。星が無数に輝いていた。
「やってみろ。だが、希望は持つな。彼らの世界では、我々は存在しないも同然なんだ」
-----
## 第四幕:地方の有力者の邸宅
「タミラト様、お客様がお待ちです」
召使が告げると、地方の名士タミラト・ハイレが重い体を起こした。
応接間には、スーツ姿の外国人と、政府の役人が座っていた。
「タミラト氏、お時間いただきありがとうございます」
投資会社の代表が流暢なアムハラ語で語りかけた。
「それで? 私に何の用です」
「南部の土地取得に関して、地元の…調整をお願いしたい」
テーブルに封筒が置かれた。
タミラトはちらりと中を見た。札束。
「調整、ですか」
「ええ。遊牧民たちが、少し…抵抗しているようです。彼らを説得していただきたい」
「彼らは頑固ですよ。何百年も同じ暮らしをしてきた連中です」
「だからこそ、地元の尊敬される方の力が必要なのです」
役人が口を開いた。
「タミラト氏、これは国家プロジェクトです。ご協力いただければ、新しい道路建設の際、ルート選定で考慮することもできます」
タミラトの領地を通るルート。それは莫大な利益を意味した。
「…何をすればいいんです?」
「村の長老たちに、これが皆のためだと説明してください。新しい仕事ができる、インフラが整う、学校ができる、と」
「実際にできるんですか?」
投資家と役人が視線を交わした。
「もちろんです。長期的には」
タミラトは封筒を手に取った。
「わかりました。やってみましょう」
外国人が立ち上がり、握手を求めてきた。
「ありがとうございます。あなたのような先見の明がある方がいて、本当に助かります」
タミラトは笑顔で握手を返した。
だが、その夜、一人になった時、彼は封筒を見つめた。
30年前。彼自身も小さな村の出身だった。土地を失い、親戚の土地で小作をし、必死で這い上がってきた。そして今、自分が同じことを他人にしようとしている。
「これが発展というものだ」
彼は自分に言い聞かせた。
「誰かが犠牲になる。それが世の中だ」
封筒を金庫にしまい、ランプを消した。
-----
## 第五幕:6ヶ月後、新しい農業プランテーション
巨大なトラクターが土地を耕している。GPSで制御された最新式だ。
見渡す限りの平地に、整然とジャトロファの苗が植えられていく。
「素晴らしい。計画通りです」
現地マネージャーのエリックが満足げに腕を組んだ。
フェンスの外側、遠くの丘に、人影が見えた。
「あれは?」
「ああ、元住民です。時々来ます」
「何か問題は?」
「いえ。ただ見ているだけです。追い払いましょうか?」
「いや、放っておけ。どうせ何もできない」
-----
丘の上。カラは立ち尽くしていた。
足元には、祖父の墓があった場所。今は整地され、苗が植わっている。
「父さん、ここで何してるの?」
12歳の息子が隣に立った。彼は再定住地の小学校に通っている。
「…ただ、見ているだけだ」
「あの機械、すごいね。学校の先生が言ってた。近代農業だって」
「そうか」
「先生は言ってた。これからはこういう農業の時代だって。僕たちみたいな古いやり方じゃダメだって」
カラは息子を見た。息子の目には、憧れが輝いていた。
「…そうかもしれないな」
「父さんも、あそこで働けばいいのに。募集してるって」
「働く…か」
カラは自分の手を見た。牛の世話をしてきた手。槍を握ってきた手。
トラクターの操縦席に座る自分を想像してみたが、できなかった。
「帰ろう」
「うん」
二人は丘を下りた。
カラは一度だけ振り返った。夕日に照らされたプランテーション。そこには自分の知っている土地は、もうなかった。
-----
## エピローグ:3年後、ロンドンのオフィス
「エチオピアプロジェクト、損切りします」
ジェームズが報告書を投げ出した。
「何? どういうことだ?」
「ジャトロファの収量が予測の30%です。土壌が合わなかった。灌漑コストが想定の3倍。それに、バイオ燃料の市場価格が暴落しています」
「それで?」
「累積損失1200万ポンドです」
サー・デイビッドは椅子に沈み込んだ。
「撤退だ。土地は放置しろ」
「現地住民からの土地返還要求が…」
「無視しろ。契約は50年だ。法的には問題ない」
「ですが…」
「ビジネスだ、ジェームズ。次の案件を探せ。今度はブラジルがいい。アマゾンに炭素クレジットのチャンスがある」
-----
そして南部では、放棄されたプランテーションが広がっている。
土壌は荒れ、在来植物は戻らず、放牧もできない。
カラの息子は、首都に出稼ぎに行った。
土地は残った。だが、それはもう誰のものでもない土地だった。
-----
# 貯蔵施設の欠如の深刻さ
## 驚愕の数字
**サハラ以南アフリカの収穫後損失:30~40%**
具体的には:
- **穀物**:重量の20-30%が貯蔵中に損失
- **根菜類**:40-50%が腐敗
- **果物・野菜**:50-60%が市場到達前に廃棄
## 実際の影響
### 金銭的損失
- アフリカ全体で年間**約480億ドル**相当の食料が失われる
- これは、同地域の食糧輸入額とほぼ同じ
### 具体例
1. **トウモロコシ**:収穫後2-3ヶ月で昆虫被害、カビ、ネズミで20%消失
1. **キャッサバ**:収穫後24-48時間で劣化開始、冷蔵なしでは1週間が限界
1. **トマト**:収穫から市場まで3-4日、この間に50%が痛んで廃棄
## なぜこれほど深刻か?
### インフラの絶望的不足
- **サイロ・倉庫**:村レベルではほぼ皆無
- **冷蔵施設**:都市部でも電力不安定で機能せず
- **適切な容器**:気密容器、防虫袋が入手困難
- **道路**:悪路で輸送に時間がかかり、その間に劣化
### 気候条件
- 高温多湿で害虫、カビが繁殖しやすい
- 乾燥施設がないため、湿度管理不可能
## 連鎖的影響
1. **農家の貧困**:せっかく作っても半分腐る→収入激減
1. **市場価格の乱高下**:収穫期に供給過剰で暴落、数ヶ月後に高騰
1. **食料不安**:本来十分な生産量があっても、保存できないため不足が生じる
1. **投資意欲の喪失**:「どうせ腐る」と増産を諦める
## 皮肉な事実
エチオピアである研究が示したデータ:
- 自国生産の穀物損失量:**年間100万トン**
- 同時期の食糧援助受入量:**年間90万トン**
つまり、**適切な貯蔵設備があれば援助不要**だった可能性がある。
## 解決の難しさ
- サイロ一基:$50,000~$100,000
- 村レベルでは投資不可能
- 政府は短期的成果(道路、病院)を優先
- ドナーも「貯蔵施設支援」は地味で広報効果が薄い
この「見えない飢餓」こそが、最も解決可能なのに最も放置されている問題なのです。
「飢える大陸アフリカ」と言う本を図書館で借りて読んでいて、ふと気になりクロードに質問してみました。
⚫︎プロンプト
食糧が武器として利用される
って?
「外国企業や投資家による大規模農地取得」
これを脚本にして。
投資家のオフィスと農民と現地の王侯貴族や政治家、いろいろな視点から
「貯蔵施設の欠如」
これってどのくらい深刻なの?
⚫︎
# 「食糧が武器として利用される」とは
紛争地域で支配勢力が:
- **援助物資の流通を支配**:特定地域への食糧供給を遮断し、住民を服従させる
- **食糧配給の条件化**:「政府軍に情報を流すな」「反政府勢力に協力しろ」という条件で配給
- **意図的な飢餓作戦**:敵対勢力の支配地域を兵糧攻めにする
- **援助物資の横流し**:軍事組織が援助食糧を売却し、武器購入資金に
南スーダン、イエメン、ソマリアなどで頻繁に報告されています。
-----
# 「土地は誰のものか」—ランドグラビングの現場
## 第一幕:ロンドン、投資ファンドのオフィス
42階。テムズ川を見下ろすガラス張りの会議室。
「エチオピア南部、200万ヘクタール。年間リターン12%を想定しています」
プレゼンターの若手アナリスト、ジェームズがスライドを切り替える。衛星写真に緑の広大な土地が映し出された。
「素晴らしい。水源は?」
銀髪の投資責任者、サー・デイビッドが身を乗り出した。
「オモ川流域です。年間降水量も十分。未開発地が広がっています」
「“未開発”? つまり誰も使っていない土地か?」
「ええ、その通りです。遊休地です」
画面には数字が躍る。投資額、予想収益、ROI…
「作物は?」
「バイオ燃料用のジャトロファを提案します。ヨーロッパの再生可能エネルギー需要に応えられます。政治的にも正しい」
会議室に満足げな笑みが広がる。
「現地政府との交渉状況は?」
「非常に前向きです。50年リース、税制優遇措置付き。ヘクタール当たり年間2ドルです」
「2ドル? ハハハ! ロンドンの駐車場代より安いな!」
笑い声。シャンパンの栓を抜く音。
「では、承認ということで。ジェームズ、よくやった。これで我々も”アフリカの発展に貢献している”投資家だ」
-----
## 第二幕:エチオピア、首都アディスアベバ、政府庁舎
「大臣、書類にサインを」
秘書が分厚いファイルを差し出す。
ベレフ大臣は高級な万年筆を手に取り、躊躇なくサインした。
「これで外貨が入る。200万ドルだ」
「はい。海外投資家との契約です。国の発展のためです」
「発展…そうだ、発展だ」
大臣は窓の外を見た。建設中の高層ビル、新しい道路。
「我々は前進している。この国は貧しいと言われ続けてきた。だが、もう違う。外国の資本を呼び込み、近代化する。それが私の使命だ」
「南部の住民への説明は?」
「説明? あの土地は国有地だ。遊牧民が季節的に通過するだけの、何の生産性もない土地だ。今度は外貨を生む。文句を言われる筋合いはない」
秘書は何か言いかけて、口をつぐんだ。
大臣の机の上には、次の案件ファイルが積まれている。サウジアラビア企業、中国国営企業、インド財閥…
「次だ。時間がない。この国を変えるには、スピードが必要なんだ」
-----
## 第三幕:南部オモ川流域、ボディ族の村
「嘘だ! 嘘だと言ってくれ!」
族長のカラは、村の広場で書類を握りしめていた。アムハラ語で書かれた公文書。理解できる単語は少ないが、地図ははっきりしている。
赤い線で囲まれた領域。それは、彼らが何世代も移動してきた放牧ルートの全てだった。
「60日以内に立ち退け、と書いてあります」
若い教師のアレムが翻訳する。彼は首都で教育を受けた、村で唯一アムハラ語を流暢に話せる人間だった。
「60日? 我々はここで生まれ、祖父の祖父の時代から生きてきた。それを60日で出て行けだと?」
「補償金は…一世帯あたり500ブルです」
「500ブル? 山羊一頭分じゃないか!」
村人たちがざわめく。女たちが泣き始めた。
「どこへ行けというんだ? 乾期には川に水を飲みに来る。雨季には高地に移動する。この土地がなければ、牛は死ぬ。牛が死ねば、我々も死ぬ」
アレムは唇を噛んだ。
「政府は…再定住地を用意すると言っています」
「再定住?」
「はい。北の…農業定住地です」
「俺たちは農民じゃない! 遊牧民だ! 牛と共に移動して生きる。それが我々の生き方だ!」
カラの叫びが、夕暮れの空に響いた。
-----
夜。焚き火を囲んで、長老たちが集まった。
「戦うべきだ」
若い戦士ムリが立ち上がった。
「誰と戦う?」
カラが静かに尋ねる。
「政府と! 外国人と! 我々の土地を奪う者たちと!」
「AK-47と戦車を相手にか? お前の槍で?」
沈黙。
最年長のトルガが、しわだらけの手で杖を握った。
「わしらの敗北は、ずっと前から決まっていたのかもしれん」
「長老…」
「わしらには”紙”がなかった。あの者たちは紙に何かを書き、それを”法律”と呼ぶ。紙に書かれたことが、我々の千年の生活より強い。そういう世界なのだ」
「では、諦めろと?」
「諦めろとは言わん。だが、わかっておけ。我々は透明人間なのだ。彼らの地図には、道も、村も、我々の名前も書かれていない。だから”未使用地”になる」
アレムが口を開いた。
「首都に行きます。弁護士を探します。訴訟を起こせるかもしれない」
「金は?」
「村の貯えを使います」
カラは天を見上げた。星が無数に輝いていた。
「やってみろ。だが、希望は持つな。彼らの世界では、我々は存在しないも同然なんだ」
-----
## 第四幕:地方の有力者の邸宅
「タミラト様、お客様がお待ちです」
召使が告げると、地方の名士タミラト・ハイレが重い体を起こした。
応接間には、スーツ姿の外国人と、政府の役人が座っていた。
「タミラト氏、お時間いただきありがとうございます」
投資会社の代表が流暢なアムハラ語で語りかけた。
「それで? 私に何の用です」
「南部の土地取得に関して、地元の…調整をお願いしたい」
テーブルに封筒が置かれた。
タミラトはちらりと中を見た。札束。
「調整、ですか」
「ええ。遊牧民たちが、少し…抵抗しているようです。彼らを説得していただきたい」
「彼らは頑固ですよ。何百年も同じ暮らしをしてきた連中です」
「だからこそ、地元の尊敬される方の力が必要なのです」
役人が口を開いた。
「タミラト氏、これは国家プロジェクトです。ご協力いただければ、新しい道路建設の際、ルート選定で考慮することもできます」
タミラトの領地を通るルート。それは莫大な利益を意味した。
「…何をすればいいんです?」
「村の長老たちに、これが皆のためだと説明してください。新しい仕事ができる、インフラが整う、学校ができる、と」
「実際にできるんですか?」
投資家と役人が視線を交わした。
「もちろんです。長期的には」
タミラトは封筒を手に取った。
「わかりました。やってみましょう」
外国人が立ち上がり、握手を求めてきた。
「ありがとうございます。あなたのような先見の明がある方がいて、本当に助かります」
タミラトは笑顔で握手を返した。
だが、その夜、一人になった時、彼は封筒を見つめた。
30年前。彼自身も小さな村の出身だった。土地を失い、親戚の土地で小作をし、必死で這い上がってきた。そして今、自分が同じことを他人にしようとしている。
「これが発展というものだ」
彼は自分に言い聞かせた。
「誰かが犠牲になる。それが世の中だ」
封筒を金庫にしまい、ランプを消した。
-----
## 第五幕:6ヶ月後、新しい農業プランテーション
巨大なトラクターが土地を耕している。GPSで制御された最新式だ。
見渡す限りの平地に、整然とジャトロファの苗が植えられていく。
「素晴らしい。計画通りです」
現地マネージャーのエリックが満足げに腕を組んだ。
フェンスの外側、遠くの丘に、人影が見えた。
「あれは?」
「ああ、元住民です。時々来ます」
「何か問題は?」
「いえ。ただ見ているだけです。追い払いましょうか?」
「いや、放っておけ。どうせ何もできない」
-----
丘の上。カラは立ち尽くしていた。
足元には、祖父の墓があった場所。今は整地され、苗が植わっている。
「父さん、ここで何してるの?」
12歳の息子が隣に立った。彼は再定住地の小学校に通っている。
「…ただ、見ているだけだ」
「あの機械、すごいね。学校の先生が言ってた。近代農業だって」
「そうか」
「先生は言ってた。これからはこういう農業の時代だって。僕たちみたいな古いやり方じゃダメだって」
カラは息子を見た。息子の目には、憧れが輝いていた。
「…そうかもしれないな」
「父さんも、あそこで働けばいいのに。募集してるって」
「働く…か」
カラは自分の手を見た。牛の世話をしてきた手。槍を握ってきた手。
トラクターの操縦席に座る自分を想像してみたが、できなかった。
「帰ろう」
「うん」
二人は丘を下りた。
カラは一度だけ振り返った。夕日に照らされたプランテーション。そこには自分の知っている土地は、もうなかった。
-----
## エピローグ:3年後、ロンドンのオフィス
「エチオピアプロジェクト、損切りします」
ジェームズが報告書を投げ出した。
「何? どういうことだ?」
「ジャトロファの収量が予測の30%です。土壌が合わなかった。灌漑コストが想定の3倍。それに、バイオ燃料の市場価格が暴落しています」
「それで?」
「累積損失1200万ポンドです」
サー・デイビッドは椅子に沈み込んだ。
「撤退だ。土地は放置しろ」
「現地住民からの土地返還要求が…」
「無視しろ。契約は50年だ。法的には問題ない」
「ですが…」
「ビジネスだ、ジェームズ。次の案件を探せ。今度はブラジルがいい。アマゾンに炭素クレジットのチャンスがある」
-----
そして南部では、放棄されたプランテーションが広がっている。
土壌は荒れ、在来植物は戻らず、放牧もできない。
カラの息子は、首都に出稼ぎに行った。
土地は残った。だが、それはもう誰のものでもない土地だった。
-----
# 貯蔵施設の欠如の深刻さ
## 驚愕の数字
**サハラ以南アフリカの収穫後損失:30~40%**
具体的には:
- **穀物**:重量の20-30%が貯蔵中に損失
- **根菜類**:40-50%が腐敗
- **果物・野菜**:50-60%が市場到達前に廃棄
## 実際の影響
### 金銭的損失
- アフリカ全体で年間**約480億ドル**相当の食料が失われる
- これは、同地域の食糧輸入額とほぼ同じ
### 具体例
1. **トウモロコシ**:収穫後2-3ヶ月で昆虫被害、カビ、ネズミで20%消失
1. **キャッサバ**:収穫後24-48時間で劣化開始、冷蔵なしでは1週間が限界
1. **トマト**:収穫から市場まで3-4日、この間に50%が痛んで廃棄
## なぜこれほど深刻か?
### インフラの絶望的不足
- **サイロ・倉庫**:村レベルではほぼ皆無
- **冷蔵施設**:都市部でも電力不安定で機能せず
- **適切な容器**:気密容器、防虫袋が入手困難
- **道路**:悪路で輸送に時間がかかり、その間に劣化
### 気候条件
- 高温多湿で害虫、カビが繁殖しやすい
- 乾燥施設がないため、湿度管理不可能
## 連鎖的影響
1. **農家の貧困**:せっかく作っても半分腐る→収入激減
1. **市場価格の乱高下**:収穫期に供給過剰で暴落、数ヶ月後に高騰
1. **食料不安**:本来十分な生産量があっても、保存できないため不足が生じる
1. **投資意欲の喪失**:「どうせ腐る」と増産を諦める
## 皮肉な事実
エチオピアである研究が示したデータ:
- 自国生産の穀物損失量:**年間100万トン**
- 同時期の食糧援助受入量:**年間90万トン**
つまり、**適切な貯蔵設備があれば援助不要**だった可能性がある。
## 解決の難しさ
- サイロ一基:$50,000~$100,000
- 村レベルでは投資不可能
- 政府は短期的成果(道路、病院)を優先
- ドナーも「貯蔵施設支援」は地味で広報効果が薄い
この「見えない飢餓」こそが、最も解決可能なのに最も放置されている問題なのです。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる