ふたりの魔法は憎しみでしか発動しない—アラブとユダヤの魔法陣。世界を”救う”には残念ながらキスが必要らしい

霧人 イスラエル・ハイム

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二つの学校

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変身を解いた朝。

リナとレイラは光の手錠で繋がれたまま、
それぞれの学校へ行くことになった。

でも学校は壁をはさんで反対側。

普通なら絶対入れない。

鯉が空から言った。

『学校の時間だけは「透明になれる」特別ルールだよ。
 でも魔法を使ったらバレるから気をつけなさい』

だから二人は、
相手の教室の隅っこに、まるで幽霊みたいに立って授業を受けることになった。

──リナの学校(イスラエル側)

先生が「今日は昔の約束の話をするよ」と言った。
教科書に「神さまがこの土地をプレゼントしてくれた」って書いてある。
透明なレイラが、リナの耳元で小声でブツブツ。

「……プレゼントって言われても、私たちはずっと前から住んでたのに」

リナ、ドキッとして心の中で叫ぶ。

(やめてってば! みんなに聞こえたらどうするの!?)

青い石がチカッと光りかけて、
リナが慌ててポケットに隠す。

──レイラの学校(パレスチナ側)

先生が「昔の地図を見よう」と言って、
昔はもっと大きな土地だった地図を出した。

「でも戦争があって、小さくなっちゃったんだよね」

透明なリナが、すぐ横でブツブツ。

「……戦争って言っても、私たちのおじいちゃんたちは逃げないで帰ってきただけなのに」

レイラ、顔を真っ赤にして心の中で叫ぶ。

(うるさいうるさい! 私のクラスで文句言わないで!!)

赤い石がピカッと光りかけて、
レイラがぎゅっと握りしめる。

昼休み。

二人は校庭の隅っこで(透明のまま)小声で喧嘩。

「ちょっとでも光ったらバレるんだから我慢して!」

「我慢してるのはこっちだよ! あんたの学校の話、ムカつくし!」

そのとき、
校庭の真ん中に空がパカッと割れて、

真っ黒いモンスターが降ってきた!

子どもたちが「きゃー!」って逃げる。
鯉の声が響く。

『学校でも容赦しないよ
 変身する? ここで?』

リナとレイラは顔を見合わせて、
同時に首をブンブン振った。

「……絶対しない」
「……バレたら死ぬ」

でもモンスターがどんどん大きくなって、
ブランコを壊し始める。
もう限界。

二人は透明のまま、
誰にも見えない(はずの)校庭の隅っこで、
小さく呟いた。

「……変身」

青と赤の光が、ほんの一瞬だけチカッと光って、
モンスターがパチン!と消えた。

誰も気づかなかった。
ただ、風がふわっと吹いて、
空を泳ぐ魚が一匹、
みんなの頭上をこっそり横切っただけ。

チャイムが鳴る。

二人は息を切らしながら、
透明のまま、また睨み合う。

「……秘密、守れたね」

「……当たり前でしょ」

今日も学校では、
誰にも知られていない、
ふたりのヒーローがいた。

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