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「アールが来たら俺に報告っていつも言ってたよなあ?」
テオバルトが怒っている。口調は冷静だが確実に怒っている。
「いやぁ~?いいじゃん?こうやって無事生きてんだからいいじゃん?」
「………………。」
言葉を発さないテオバルトだったが、ウーヴェの目にはテオバルトの背後にゴゴゴゴゴという文字が見えていた。
テオバルトはウーヴェの右腕。家臣とは名ばかりでA国の重要な業務のほとんどを担う超有能人間。ウーヴェとテオバルトは昔からの仲でウーヴェが軍隊長になるずっと前から知っていた。
「何かあってからじゃ遅いから言ってんだよ。」
「は、ハイ。」
「あの頃みたいに無理しろとは言わないから。」
「…………。」
「せめて生きる意志だけは持ってくれ。でないと軍全体に支障がでるだろ。」
「無理してんのは今のテオだろ?」
「…誰のせいだと思ってるんですかねぇ?」
確実に火に油を注いでいる。
「まあまあテオ。俺らがなんとかしてやるからいいだろ?」
「お前はただ戦闘したいだけだろ。」
「ち、チガイマスヨー。」
「テオは俺らじゃ信用できないって訳?」
「そんなこと言ってない。万が一のこともあるし、第一こいつが指揮とってなきゃダメだろ。」
「まあまあ喧嘩すんなよ。」
「誰のせいだと思ってんだ!!!」
ところは変わってB国の研究室。オリヴの居城に、カミルが訪れていた。
「なんだ、呼び出して。」
「目的は?」
オリヴが神妙に聞く
「………何言ってんだよ、目的なんてねえ。」
「普通、『何の目的』かを聞くと思うんだけどなあ。」
「何の目的について聞いてるかなんてだいたい想像つく。俺はギルのために生きたいからここに居る。」
「どうだか。」
「目的しかないあんたに聞かれたくないなぁ?」
「目的は明確な方がいい関係を築けると思うけど。」
「勝手に言ってろ。」
「無償の忠誠心なんて、信頼に値しない。」
「…………言いたいことはそれだけだな。」
「ああ、忠告だ。」
「………。」
「お前が何をたくらんでんのかは知らないが、アイツ騙し通すなんて不可能だ。もしばれたら。」
「俺はギルについていくだけだ。」
「………。」
そう断言してカミルはオリヴの研究室を後にした。
今日こそ、今日は確実にウーヴェを仕留める。そう決意してアールはB国へ向かった。とりあえずテオバルト、ザカリアス、シュテファンに見つからずにウーヴェの元へ行かなければならない。とりあえず要塞の裏へ回った。今から潜入して軍隊長室を探して…
「久しぶりだねアールくん。」
「アッヒャアアアア!!!!う、ウーヴェ!?」
いつの間にか背後をとられていた。
「覗き見なんてして、エッチ。」
アールの後ろでウーヴェはにやにや笑っている。他には誰もいないようだ。ウーヴェを暗殺するにはこんなに絶好の機会はない。しかし、それはウーヴェにとっても一緒だったはずだ。なのに悠々と声をかけて、何をしているんだこの軍隊長は。そう思いながらアールは警戒心を崩さないまま、冷静に言葉を発した。
「ずいぶん余裕そうだな。いつでも殺せるんだぞ。」
「そうなったらすぐザックやシュティが飛んできてくれるから心配ない。」
ずいぶんと信頼していることだ。
「ウーヴェは、何で俺を殺そうとしないの?」
「だって殺す理由がないもの。君もそうじゃない?」
「……ギルベルトが殺せと言ったから。」
「それが理由ね。」
「僕が存在してる意味だから。」
「対要人用感情制御型殺人兵器、だったっけ?俺要人かなぁ。」
「軍隊長は要人だろ。」
「そっかぁ。俺なんもやってないんだけどなぁ。あ、そういえばさっきの嘘。」
「は?」
「殺す理由がないから殺さない訳じゃない。生きててほしいから殺さないの。」
「………なんで。」
「秘密。自分で探しな。この要塞ゆっくり見て回ってみるといいよ。」
「え、いいの?」
「いいよ。自由に見て回りな。」
「……。」
本当に何を考えているのかわからない。だけど、敵の本拠地の内情を知れるのは願ってもない。ありがたく見て回ることにした。アールは無言でその場を離れた。
敵の本拠地の中をゆっくり眺めながら歩くことなんてなかなかない。しかし、足音がしたのをアールの耳は聞き取っていた。誰か来る。後ろか…?アールは振り返った。
「かなり慎重に歩いてたんだが、音の認識能力もかなり高いらしいな。」
遠くにテオバルトが立っていた。
「敵の侵入をここまで許すとは、不覚だな。」
「ウーヴェが見て回るといいっていったから。」
「あの無能隊長が。」
テオバルトはすたすたとアールに近づいてくる。明らかな殺意の目を向けて。
「目的はなんだ。ちょろちょろたかって俺らの道を邪魔しやがって。理由がないなら邪魔しないでくれ。こんなとこで止まってる訳にいかないんだ、俺たちは。」
「ギルベルトが殺せと言ったから殺しに来た。それだけのことだ。」
「殺人ロボットのくせにいっぱしに感情なんか持ってるからずるずる先伸ばしにしてんだろうが。ほんとは迷ってんだろ?」
「迷ってなんかない。」
「心を持ったロボットと人間、何が違う。」
「………。」
「心を持ってんだったら自分でちゃんと考えろ。」
「…人間だから人を殺さないとは限らない。」
「それは正論だな。だから俺は、」
テオバルトが剣を構えて振りかぶった。
「ウーヴェを邪魔する者は容赦なく殺せる!!」
「……っ!」
不意打ちを食い、アールの腕にテオバルトの剣の刃が食い込んだ。血がぶしゅっと飛び散る
「一応右腕を狙って見たんだが、ロボットに聞き腕の概念なんてあんのかねえ。まあどっちでもいいけど。」
やばい、本当に殺される。そう感じた。これは、逃げないとまずい。
「次は足だな。二度と殺しになんて来れなくしてやる。」
笑みすら浮かべているようなテオバルトの表情はアールの返り血で赤く染まっていた。
怖い、怖い、怖い!逃げなきゃ。死にたくない!アールの心は恐怖で支配されていた。無我夢中で逃げて、アールは森の中に消えた。
さすがに森の中まで追いかけるつもりはない。深追いすると危険なのは自分だ。テオバルトはそう思いかえし、本拠地へと戻る。顔にこびりついた血を拭って。
「……血?」
テオバルトが怒っている。口調は冷静だが確実に怒っている。
「いやぁ~?いいじゃん?こうやって無事生きてんだからいいじゃん?」
「………………。」
言葉を発さないテオバルトだったが、ウーヴェの目にはテオバルトの背後にゴゴゴゴゴという文字が見えていた。
テオバルトはウーヴェの右腕。家臣とは名ばかりでA国の重要な業務のほとんどを担う超有能人間。ウーヴェとテオバルトは昔からの仲でウーヴェが軍隊長になるずっと前から知っていた。
「何かあってからじゃ遅いから言ってんだよ。」
「は、ハイ。」
「あの頃みたいに無理しろとは言わないから。」
「…………。」
「せめて生きる意志だけは持ってくれ。でないと軍全体に支障がでるだろ。」
「無理してんのは今のテオだろ?」
「…誰のせいだと思ってるんですかねぇ?」
確実に火に油を注いでいる。
「まあまあテオ。俺らがなんとかしてやるからいいだろ?」
「お前はただ戦闘したいだけだろ。」
「ち、チガイマスヨー。」
「テオは俺らじゃ信用できないって訳?」
「そんなこと言ってない。万が一のこともあるし、第一こいつが指揮とってなきゃダメだろ。」
「まあまあ喧嘩すんなよ。」
「誰のせいだと思ってんだ!!!」
ところは変わってB国の研究室。オリヴの居城に、カミルが訪れていた。
「なんだ、呼び出して。」
「目的は?」
オリヴが神妙に聞く
「………何言ってんだよ、目的なんてねえ。」
「普通、『何の目的』かを聞くと思うんだけどなあ。」
「何の目的について聞いてるかなんてだいたい想像つく。俺はギルのために生きたいからここに居る。」
「どうだか。」
「目的しかないあんたに聞かれたくないなぁ?」
「目的は明確な方がいい関係を築けると思うけど。」
「勝手に言ってろ。」
「無償の忠誠心なんて、信頼に値しない。」
「…………言いたいことはそれだけだな。」
「ああ、忠告だ。」
「………。」
「お前が何をたくらんでんのかは知らないが、アイツ騙し通すなんて不可能だ。もしばれたら。」
「俺はギルについていくだけだ。」
「………。」
そう断言してカミルはオリヴの研究室を後にした。
今日こそ、今日は確実にウーヴェを仕留める。そう決意してアールはB国へ向かった。とりあえずテオバルト、ザカリアス、シュテファンに見つからずにウーヴェの元へ行かなければならない。とりあえず要塞の裏へ回った。今から潜入して軍隊長室を探して…
「久しぶりだねアールくん。」
「アッヒャアアアア!!!!う、ウーヴェ!?」
いつの間にか背後をとられていた。
「覗き見なんてして、エッチ。」
アールの後ろでウーヴェはにやにや笑っている。他には誰もいないようだ。ウーヴェを暗殺するにはこんなに絶好の機会はない。しかし、それはウーヴェにとっても一緒だったはずだ。なのに悠々と声をかけて、何をしているんだこの軍隊長は。そう思いながらアールは警戒心を崩さないまま、冷静に言葉を発した。
「ずいぶん余裕そうだな。いつでも殺せるんだぞ。」
「そうなったらすぐザックやシュティが飛んできてくれるから心配ない。」
ずいぶんと信頼していることだ。
「ウーヴェは、何で俺を殺そうとしないの?」
「だって殺す理由がないもの。君もそうじゃない?」
「……ギルベルトが殺せと言ったから。」
「それが理由ね。」
「僕が存在してる意味だから。」
「対要人用感情制御型殺人兵器、だったっけ?俺要人かなぁ。」
「軍隊長は要人だろ。」
「そっかぁ。俺なんもやってないんだけどなぁ。あ、そういえばさっきの嘘。」
「は?」
「殺す理由がないから殺さない訳じゃない。生きててほしいから殺さないの。」
「………なんで。」
「秘密。自分で探しな。この要塞ゆっくり見て回ってみるといいよ。」
「え、いいの?」
「いいよ。自由に見て回りな。」
「……。」
本当に何を考えているのかわからない。だけど、敵の本拠地の内情を知れるのは願ってもない。ありがたく見て回ることにした。アールは無言でその場を離れた。
敵の本拠地の中をゆっくり眺めながら歩くことなんてなかなかない。しかし、足音がしたのをアールの耳は聞き取っていた。誰か来る。後ろか…?アールは振り返った。
「かなり慎重に歩いてたんだが、音の認識能力もかなり高いらしいな。」
遠くにテオバルトが立っていた。
「敵の侵入をここまで許すとは、不覚だな。」
「ウーヴェが見て回るといいっていったから。」
「あの無能隊長が。」
テオバルトはすたすたとアールに近づいてくる。明らかな殺意の目を向けて。
「目的はなんだ。ちょろちょろたかって俺らの道を邪魔しやがって。理由がないなら邪魔しないでくれ。こんなとこで止まってる訳にいかないんだ、俺たちは。」
「ギルベルトが殺せと言ったから殺しに来た。それだけのことだ。」
「殺人ロボットのくせにいっぱしに感情なんか持ってるからずるずる先伸ばしにしてんだろうが。ほんとは迷ってんだろ?」
「迷ってなんかない。」
「心を持ったロボットと人間、何が違う。」
「………。」
「心を持ってんだったら自分でちゃんと考えろ。」
「…人間だから人を殺さないとは限らない。」
「それは正論だな。だから俺は、」
テオバルトが剣を構えて振りかぶった。
「ウーヴェを邪魔する者は容赦なく殺せる!!」
「……っ!」
不意打ちを食い、アールの腕にテオバルトの剣の刃が食い込んだ。血がぶしゅっと飛び散る
「一応右腕を狙って見たんだが、ロボットに聞き腕の概念なんてあんのかねえ。まあどっちでもいいけど。」
やばい、本当に殺される。そう感じた。これは、逃げないとまずい。
「次は足だな。二度と殺しになんて来れなくしてやる。」
笑みすら浮かべているようなテオバルトの表情はアールの返り血で赤く染まっていた。
怖い、怖い、怖い!逃げなきゃ。死にたくない!アールの心は恐怖で支配されていた。無我夢中で逃げて、アールは森の中に消えた。
さすがに森の中まで追いかけるつもりはない。深追いすると危険なのは自分だ。テオバルトはそう思いかえし、本拠地へと戻る。顔にこびりついた血を拭って。
「……血?」
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