【完結】殺人兵器は愛情の夢を見るか

劣情祝詞

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もお~!これじゃ俺二重スパイだろうが!?

カミルは悶絶して頭をかきむしる。だが、どちらからもスパイと思われても、これだけは伝えなければならない。カミルは指揮官室へと向かった。


指揮官室の椅子にはギルベルトが座ってコーヒーを飲んでいた。

「おうカミル、テオバルトたちは帰ったか?」
「ああ。テオバルトが目を覚ましたからそのまま帰した。」
「そうか。」

気まずい沈黙を感じているのはカミルだけでギルベルトは鼻歌でも歌い出しそうな様子でコーヒーをすすっている。

「ギルベルト、俺、あんたに言わなきゃいけないことがある。」
「おう?なんだ。」
「…アールは、アールはロボットなんかじゃない。」

ギルベルトの顔が険しくなった。

「アールは元人間のサイボーグだ。」
「何を…」

こんなに動揺したギルベルトを見たことがない。恐怖すら感じる。

「カミル。」
「…なに。」
「なぜお前が知っているんだ。」
「へ。」
「俺ですら知らない、そんな重要なことを、なぜお前が知っているはずがあるんだ。」
「……っ!それは、」

ギルベルトが凄む、まずい。

「オリヴ!オリヴに問いただしたんだ。そしたらあいつがポロっと…。」

ギルベルトは人差し指を口元に当てたまま眉間にしわを寄せて考え込んだ。退室しないとまずそうだ。

カミルは何も言わず部屋を飛び出した。おもむろにギルベルトは電話をかける。

「もしもし、アールか。電話で悪いが次の指令を出す。」
『珍しいな、なに?』
「ウーヴェを確実に殺せ、どんな手段を使ってもいい。絶対に殺せ。でなければお前が死ぬことになるぞ。」


まずい、本当にまずい。このままじゃすべての歯車が狂いかねん!俺が知らなきゃいけないのは、ウーヴェとアールの秘密。ウーヴェがアールが人間だったということを知っている理由。だから、ウーヴェに会いに行かないと、早く!


A国、軍隊長室。カミルはそこを訪れた。目的のために。

「カミルくん扉の鍵閉めといて。」
「へ、なんでだよ。」

ウーヴェはふうっとため息をついた。

「テオにバレたら困るから。」
「なんで。」
「テオはお前の謀反を疑っている。」
「……!」
「こうやって帰ってきたんだからそんなことはないと俺は信じてるよ。」
「……おう。」
「で、用件はなんだ。」
「今日は聞きたいことあってきた。」

カミルはウーヴェの前の椅子に座った。

「ウーヴェはアールといつ、どこで、どうやって出会ったんだ。なんでアールが人間だと知ってる?」
「ん~?それ聞いてなんの意味あんの~?」
「茶化すな大事なことなんだ。本当に大事な。」
「たいしたことない、ほんとになんでもない。大事な訳ない。」
「違うんだ!大事なことなんだよ。俺はアール誕生の秘密を解かきゃいけない。俺が。早くしないと手遅れになる!」
「…言いたくない。」
「頼むウーヴェ、この通りだ。」

カミルが頭を下げた。よりによってこいつが。B国の状況が何か切迫しているのか。

「A国のためでもあり、B国のためでもある。そしてなによりアールのためなんだ!」

アールの、ため?

「俺はあとでどんな罰でも受けるから。教えてくれ、ウーヴェ。」
「…わかった。よく聞け。」
「…!ありがとうウーヴェ!」


それは幾年か前のこと。俺がまだ幼い頃、A国の軍隊長は世襲制で俺はその血筋を受け継ぐ者だった。厳重な警備が貼られた豪邸に閉じ込められ、外界との接触を断たれた。子供心にどうしようもない寂しさを抱えて、毎日庭で一人で遊ぶのだった。そんな時、塀をよじ登ってくる少年が、

よいしょっと、うっ、うわあああああ!!!

塀から落ちて俺の家の庭の地面に激突した。

痛ってぇ!

腰をさすっている。俺よりも何歳か年下のような風貌をしていた。初めて同世代の子供に出会ったせいか俺の心は驚きとワクワクで満ちていた。

僕誰?こんなちびっこがこんなとこいたらダメだよ。警備に見つかったら殺されてしまうかもしれないよ。

…わあ!!おおおお前!!A国の軍隊長の息子じゃないか!!!

へ?知ってんの?

誰がちびっこだ!!お前と同い年だよ!!

ええええええ!?!?

俺はラインハルト、ルノーって呼んでくれ。

それがアールと呼ばれている彼だった。

ルノーくん…。俺はウーヴェ。ていうか、何しにきたのマジで危ないよ。

B国の中でも俺が住んでるところ、一般市民はろくに食料はなく毎日生きてくだけで精一杯だ。娯楽は一部の上流階級しかできなくて。

…そんな。

その頃の俺はA国とB国が戦争中なんて知らなくて、ルノー、今のアールがここにいる危険性を何にも感じてなかった。ルノーは国境まで超えてしまったんだな。

それでね、今日は一年に一回のパーティーだったの。なけなしの金で僕んちでな。でも、その料理をな…。

ルノーはとても悲しそうな目をしていた。

まさか、強奪されたとか?

…僕が一人で食い過ぎて怒られた!!!

は?

どんどん食べてたらいつのまにかなくなってたの!!うち兄弟5人いるんだけどね、そしたらお母さんにめちゃくちゃ怒られて、悔しかったから家出してきた。

…。

それでなんか壁があるからよじ登ったら塀で、落ちてここ。

っぷ!

俺はたまらなくなって爆笑した。

あはははっ!はははっ!ヒーー!!!

笑い事じゃないよ!!軍隊長の家は毎日ごちそう食えるかもしれないけど僕んとこは一年に一回だ!

…軍隊長の家だってそんないいもんじゃないよ。友達と遊べないし、ていうかそもそも友達作れないし。すっごい寂しいよ。一日お手伝いさんとしか喋れなかった時なんか。

…じゃ、僕とあそぼ。

へ?

せっかく僕が忍び込んできたんだし!いっぱいあそぼ!この庭広いし。

いいの?

ほら、ウーヴェ!

それからルノーと俺は一日中遊んだ。さすがに夕方になって俺も見つかるのが怖くなったんだろうな。ルノーに帰るように言った。そしたら、

じゃあウーヴェ、また絶対会おうね。大人になって、ウーヴェが自由に外に出られるようになったら、またあそぼうね!

だから、テオよりもカミルよりも誰よりも早く友達になったのはルノーだったんだ。

おう、ルノー!絶対忘れないからな!

それがとてつもなく嬉しかったし、救われた。今思えばそれが俺の初恋だったんだろうな。

僕もウーヴェ、絶対忘れないから!また会おうね!

それから辛いことがあってもこの日のことを思い浮かべて俺は乗り越えた。
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