【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル

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第六話 生贄になった婚約者たち

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黄色とピンクの空が広がる世界では栗色の髪に榛色の瞳をした女の子と黒髪に青色の瞳をした男の子が楽しそうに花畑を走り回っていた。

二人はお互いに名前を知らない。しかし、この世に二人しかいないのだから名前など必要なかった。


「君たち存外にしつこいね。」

花畑を走り回る二人を見てそう言ったのはタキシードを着たうさぎだった。

「しつこいって?」
「存外って?」

二人はキョトンとした顔でうさぎを見る。

「お前たちには難しくてわからないさ。そろそろ消えて無くなっているかと思って来てみたらしつこくまだここに居るんだもん。」

「うさぎさん悲しいの?」
女の子が聞いてくる。

「仕事がなくて悲しいね。」

「仕事って?」

「ここに新しい人間を連れてくるのが俺の仕事だよ。」

「新しい」
「人間?」
「連れてきて!」
「新しい人間!」

「だめだめ、そんなことしちゃ。ここは綺麗な思いを吸い取る場所なんだから。」

「綺麗な思い?」

「人間は一人だとまだましだけど、増えると互いに醜い思いを心に描く。それは不味いから吸い取れない。この世が必要としているのは綺麗な思いだけ。心から綺麗な思いがなくなった人間は、この世界から消えてしまう。」

本当はその坊主がここに居るのも良くないことなのだけど、うさぎが連れてきたわけではないのにいつの間にか住み着いていたのだ。

「消えちゃうの?」
「僕たちも消えちゃう?」

「おっとだめだめ。悲しいことも考えちゃ・・・」

すると男の子が女の子に訊ねる。
「ねぇ、悲しい?」
女の子が答える。
「心配してくれたから嬉しい」

そう言うとあたりがパッと輝いて光の粒が二人の間から放出された。
その様子を見てうさぎは眼を見開いた。

「なんと・・・そう言うことか。」

うさぎはぶつぶつとつぶやいた。
「二人は綺麗な思いを生成し続けている?そんなこと・・・あるのか?だからなかなか消えないのか。」


うさぎが物思いから意識を取り戻し辺りを見回した時、二人は再び花畑をコロコロと転がりながら何が楽しいのかキャッキャと遊んでいた。


うさぎはそっとその場を去った。


それから何度かうさぎは二人の様子を見に来たが、二人はずっと幸せそうにしていた。消えそうな気配など全然なかった。

二人の様子を見にくるのが十度目を超えた時、うさぎは自分の仕事はここにはもうないのだと悟った。




国守樹は清らかな空気を出し続け、王国では国守樹の乙女を選ぶ必要はなくなった。

国守樹の話が伝説になる頃、二人の綺麗な心が国を浄化し、世界から魔獣は消えた。
そして、魔獣の消滅とともに魔法も消滅していった。

さらに時が経ちいつしかこの世に魔獣がいたことも魔法があったことも、もう誰も覚えていない。




ピンクと黄色の空のある世界では、今なお、男の子と女の子が仲睦まじく遊んでいる。









--- the END
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