【完結】自分のことを覚えていなかった幼馴染をそれでも一途に愛し続ける

ゴールデンフィッシュメダル

文字の大きさ
7 / 23

7.

しおりを挟む
サンダースは日に日に夢の中の住人で居る時間が長くなっていた。
私が別館に戻ると瞳に情熱をたぎらせたサンダースが寄ってきた。
「あぁ、良かった。サマンサ、どこに行ってたんだい?母上が僕たちのことを無かったことにしようとしてるんだ。君への縁談の話が上がってる。ねぇ、僕と駆け落ちしよう」
「・・・・・」

どんどん際どい台詞になってきている。
しかもここは別館の入り口で共用部である。誰に見られるかわからない。

「大丈夫だよ。もうグリフィスには戻らない。実は名前も戸籍ももう手に入れてるんだ。きっと職にもつける。父上にも母上にもバレずに生きて行けるよ」

(兄様もグリフィスの学生だったんだわ)

しかしサンダースは髪に口付けしようとして我に返った。
サンダースが髪を見るたびに我にかえるのがわかっていた。恐らくサンダースの"サマンサ"は髪色が自分と異なるのだろう。
成長とともにサマンサの髪色は少しずつ濃くなっていた。ハロー家に来た頃は綺麗なブロンドの髪だったのが今は太陽の下ではブロンドに見えるが部屋に入ると栗色に見えるくらいになってきている。成長とともに髪の色が濃くなるのはよくあることだった。
(私の髪の色が濃くなってきているのも兄様が混乱している要因なのだわ)


「サマンサ、ごめん。俺、何をしようとしていた?最近自分でも自分がおかしいってわかってるんだ」
「兄様。本当のことを教えてくれませんか?わたくしが"サマンサ"じゃないことは薄々気付いています。"サマンサ"ってどなたですか?お母様とお父様のことについても教えてください」
「いつか伝えなくてはならないことはわかっている。でも、、、まだ。サマンサに失望されたくないんだ!」
「失望されるようなことをしたのですか?」
「、、、そうかもしれない」
「兄様と私の関係だけでも教えてください。私はあなたの何なんですか?妹だとは思えない」
「そうだよ。俺たちは兄妹なんかじゃないさ!"サマンサ"は俺の、わかってるんだろう?」
そう言うとギュッとサマンサを抱きしめて耳元で呟いた。
「君は俺とサマンサの娘だ」
「!!!」

私はサンダースからパッと身を離した。いくつかの可能性の中からそれもあると考えていたが実際に言われると信じられない思いだった。

「だって貴方と私では歳が・・・」
「俺たちは早熟なガキだった。自分が何をしているのかちゃんと理解していなかったんだ。それが子を成す行為だと言うことも」

消え入るような声でサンダースは続けた。

「いつかちゃんと説明するよ。だから今は待って欲しい」

そう言ってもう一度抱きしめると自室に戻っていった。

その様子を見守っていると後ろから誰かに腕を引っ張られた。
「今のはどういうことだ!?」
「サム。どこまで…聞いて…?」
「あいつが好きなのか?俺のこと嫌いなったのか?」

きっとサンダースが囁いた部分や声が小さかったところは聞こえていないのだろう。サンダースを好きだなんてあるわけない。でもこのまま勘違いされたまま別れた方が楽なのかもしれない。ここで否定して元の関係に戻って、また別れ話を切り出すの?そんなの耐えられない。

「やっぱり兄妹じゃ無かったんだな?おめでとうと言うべきか?」
「わたしは……」
「そんな眼をするな!まだサムが俺を好きなんだって勘違いしそうになる」
「だって………」
あなたが好きという言葉を懸命に飲み込んだ。
「君がそんな眼をしてるのが悪いんだ」
そう言うと荒っぽく唇を奪われた。

身体を離すとサミュエルは服のシワを伸ばしながら言った。

「グリフィスから合格の知らせが届いた。今日は晩餐になるからそのつもりで」

そう言って踵を返して去っていった。
"おめでとう"という隙すらなかった。

サンダースにも声を掛けなくてはならない。
二人の部屋に戻るとサンダースは全てを見ていたようだった。
「俺のせいで勘違いさせたみたいだったけど良かったのかい?」
「今日、奥様に言われたの。わたしたちは結ばれないって」
「そんなことあるか。君はサミュエルが好きだしサミュエルも君を愛してる。それが事実だ」
「でも奥様は後ろ盾がなくてハロー商会の奥方をするのは大変だとおっしゃったわ。ご自身が苦労されてるから余計、後ろ盾のある家の娘さんに嫁に来て欲しいのよ」
「俺たちの娘だったら後ろ盾なんてなくてもハロー商会の奥方の役割くらいつとめられるさ。でも、俺もずっとここにいられるわけじゃないし、今の状況だと次ちゃんと働けるかわからない。戻っても良い頃合なのかもな」
「戻るって?」
「俺たちの実家だよ」
「実家?」
「あぁ、でも、出ていく前にサミュエルの誤解は解いて行くこと」
「どうして?」
「俺がサマンサに嘘をつかれていたらと思うと。君とサミュエルは結ばれないかもしれないけど、気持ちにだけは嘘をつかないで欲しい」
「わかったわ」

しかし晩餐会でサミュエルと話すことはなかった。

サンダースは自分の役割は終えたからと晩餐の席で家庭教師の職を辞すことを伝えた。

「そろそろ放蕩息子を演じて良い時間は過ぎまして、実家に戻ろうかと思います」
「実家がおありになるの?」

奥様のこの疑問は最もだった。
ハロー家に来て4年、実家に帰ったことなど無かったし話題になってもサンダースは上手く避けていた。

「えぇ、折り合いが悪くてずっと寄り付かなかったですが、サマンサもこのままではいけないでしょうし」
「いつ頃、おたちになるご予定ですの?」
「イースターの休暇には実家に居たいと思いますので、3月末までこちらにお世話になってというので考えております」
「まぁ、それじゃああと3日もないですわ」
「えぇ、急な話で申し訳ありません。ただ、サミュエルもグリフィスに合格して、もう私の役割は終わりました。両親と積もる話もありますしイースターの休暇までには実家に戻りたいと思っております」
「残念ですがもうお決めなのですね。寂しくなりますわ」

そう言った奥様の顔には満足げな表情が浮かんでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜

よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。  夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。  不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。  どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。  だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。  離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。  当然、慰謝料を払うつもりはない。  あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?

処理中です...