出来損ないのアルファ

ゴールデンフィッシュメダル

文字の大きさ
2 / 9

2.

しおりを挟む
ベータ ※未分化



中学の時に受けるバース検査で俺の結果の紙に書かれていた文字だ。
要するに今はベータだけどまだ成長途中でバースがちゃんと育っていない状態ですよ、ということである。
ここからそのままベータとして定着することもあるし、アルファやオメガになることもある。

俺は幼い頃から成長が遅く、身長も常に1番前だった。だから中学の時に未分化だと言われても「まぁ、そう言うこともあるかな」と言う感じだった。

それから俺はずっと定期的に病院で検査をしていた。いつ分化するか分からないし、こういう体質は珍しいらしくバースの研究医が色々と調べたいということだった。

高校三年生になって、身長こそベータの平均に追いついたものの、俺のバースに変化は見られなかった。しかし、俺は自分がアルファだと確信していた。

子供の頃から俺は優秀だった。
十二月田しわすだと言えば優秀なアルファの家系で有名だったし、この地域では代々政治家一家として名を馳せていた。


政治を志すもの小学校までは公立で、と言う我が家の方針で普通の幼稚園に入った。そこで、俺は自分がいかに優秀かを知った。

しかし、優秀過ぎて友達に敬遠されるようになった。子供というのは残酷なもので、自分たちより少し出来るくらいの友達はヒーローなのに出来すぎると仲間だとは思われないらしい。

3歳でそれを悟った俺は、何事も手を抜くようになった。そして、一般の人より少し能力が高いくらい、というところに自分の立ち位置をコントロールするようになった。

体格も良くなく能力も普通よりちょっといい程度、大き過ぎる八重歯が顔のバランスを崩していて、他は整っているのに愛嬌のある顔だと言われる。あの優秀なアルファを排出する十二月田家の出身なのに中途半端な立ち位置の俺は小学校に上がる頃にはちょっと優秀なベータだと思われるようになっていた。


***


「今日学校サボったのか?」

病院から家に帰ると兄が居てそんなことを聞かれた。確か月曜は2時間しか講義がないって言っていたなと思う。講義が終わってすぐに家に帰ってくるとか友達いないのかよ。

「ちょっと用があったんだよ」
そう言ってへらへらと笑う。家族の前での仮面をつける。家族の前では少し不真面目なベータを演じている。

「まだ高校生なんだからちゃんと勉強しろ。ただでさえレベルの低い学校で進度が遅いんだから、自分の力で挽回しなくてはいけないんだぞ」

兄は中学から私学に行ったが俺は高校まで公立である。公立の中では頭の良い学校に行っているが、代々アルファという家庭は小学校から私立か国立に通わせるため公立校のアルファ率は必然的に低くなる。
現に今の高校では公立のトップ校だというのにアルファは片手で数えられる程度しか居ない。


「心配しなくても自分でなんとかするから大丈夫だよ。」
ニヘラと笑ってそう言って手を振ると俺は部屋に篭った。


部屋に着くとベッドに寝転がりいろいろと考えた。
親に報告しなくては。でも親はいつのころからか俺がベータである事を望んでいる。
「出来の悪いベータの子を可愛がる健気な親」という役に酔っているのだ。

うちの親は両親ともに政治家で特に母の方が世間的には名を知られている。この前も子育て雑誌でアルファとベータの子育ての違いについて長々と語っていた。
俺がアルファになったとわかれば立場を悪くしないだろうか、と思う。

でも彼を手に入れるにはアルファだと告白しなければ始まらない。そして、運命の番だと言わなくては。





ピロリロリンピロリロリン

ベッドで考えているうちに寝てしまったらしい。携帯の呼び出し音で目を覚ました。
時計は17時を指していた。

そうだ、今日は約束があったんだった。

「はい。申し訳ありません。今日は立て込んでいて。今から向かうのでアポイントを18時に変更できますか?ありがとうございます。」

そう言うと麻のジャケットを羽織って家を出た。日中はだいぶ暖かくなったが夜はまだ肌寒い。
湿気を帯びた六月の風が頬を撫でた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

孤独なライオンは運命を見つける

朝顔
BL
9/1番外編追加しました。 自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。 アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。 そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。 ※※※※※ 高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。 設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。 オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。 シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。 ※重複投稿 全十話完結済み

薄紅の檻、月下の契り

雪兎
BL
あらすじ 大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。 没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。 しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。 鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。 一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。 冷ややかな契約婚として始まった同居生活。 だが、伊織は次第に知ることになる。 鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。 発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。 伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。 月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。 大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

αとβじゃ番えない

庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。 愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

処理中です...