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受け取ってくださった。それに、『婚約者』として尊重してくださっていた。嬉しい。舞い上がってしまいそうになるほどに。でもきっと、これは――
(罪悪感、義理――罪滅ぼし?……義務感って所かしら……。)
考えれば考えるほど気分が落ちていく。彼の反応が嬉しかったのは確か。でもあとから叩き落とされるのが恐ろしかった。無駄な勘違いはしたくなかった。だって、彼が好きなのはあの男爵令嬢。私じゃない。
きっとこのお誘いも、彼が優しいから義理でしているだけ。本当に誘いたいのは――
「……大変光栄なお誘いありがとうございます。……ですが、そのお誘いはどうぞわたくしにではなく、ノートン男爵令嬢に。…………それでは失礼致します。」
後ろから引き留めようとするステファンの声が聞こえたような気がしたが、気の所為だと思うことにした。今はただ、一刻も早くその場を離れたかった。
――声は震えなかっただろうか?歪みそうになる顔は、綺麗な笑顔を保てていただろうか?彼は……呆れてしまっただろうか。好きでもない女に与えた情けを振り払われたのだから嫌われても仕方ない。その上当てつけのように――咄嗟に出てしまっただけだったのだが――自分の情人の名前を出されるだなんてその場で婚約破棄を突きつけられても仕方がなかったかもしれないのに。勿論本当は彼と一緒に行きたかった。滅多にない彼からのお誘い。でも、勘違いして、舞い上がって、……それから現実を突きつけられて地に落とされるよりずっといい。最初から期待なんてしなければ絶望することも無いのだから。
少しでも距離を取りたくて、無意識に足元が加速していく。
溢れそうになる何かに蓋をして――頬に伝った雫は見ない振りをした。
受け取ってくださった。それに、『婚約者』として尊重してくださっていた。嬉しい。舞い上がってしまいそうになるほどに。でもきっと、これは――
(罪悪感、義理――罪滅ぼし?……義務感って所かしら……。)
考えれば考えるほど気分が落ちていく。彼の反応が嬉しかったのは確か。でもあとから叩き落とされるのが恐ろしかった。無駄な勘違いはしたくなかった。だって、彼が好きなのはあの男爵令嬢。私じゃない。
きっとこのお誘いも、彼が優しいから義理でしているだけ。本当に誘いたいのは――
「……大変光栄なお誘いありがとうございます。……ですが、そのお誘いはどうぞわたくしにではなく、ノートン男爵令嬢に。…………それでは失礼致します。」
後ろから引き留めようとするステファンの声が聞こえたような気がしたが、気の所為だと思うことにした。今はただ、一刻も早くその場を離れたかった。
――声は震えなかっただろうか?歪みそうになる顔は、綺麗な笑顔を保てていただろうか?彼は……呆れてしまっただろうか。好きでもない女に与えた情けを振り払われたのだから嫌われても仕方ない。その上当てつけのように――咄嗟に出てしまっただけだったのだが――自分の情人の名前を出されるだなんてその場で婚約破棄を突きつけられても仕方がなかったかもしれないのに。勿論本当は彼と一緒に行きたかった。滅多にない彼からのお誘い。でも、勘違いして、舞い上がって、……それから現実を突きつけられて地に落とされるよりずっといい。最初から期待なんてしなければ絶望することも無いのだから。
少しでも距離を取りたくて、無意識に足元が加速していく。
溢れそうになる何かに蓋をして――頬に伝った雫は見ない振りをした。
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