破滅エンドの悪役令嬢は、隣国皇帝に溺愛される

珊瑚

文字の大きさ
5 / 26

4

しおりを挟む
4
「暴挙……ですか。はて、身に覚えがございません。」

だが、皆の予想とは異なり、彼女は取り乱したりはしなかった。きょとんとした顔で小首を傾げる仕草は幼さすら感じられるようで、その美貌と相まって危うげな雰囲気を醸し出している。


「貴様、とぼける気か!?ユーリがあんなにも傷つけられたというのに、心が広い彼女はお前が謝れば許してやると言っているのだぞ!!」
「とぼけてなどいませんわ。本当に覚えがございませんもの。具体的に何が気に入らなかったのか教えてくださらないかしら?」
「そんなの決まってるじゃないですか!あんなに繰り返し私に嫌味ばかり言ってきたのに……。そんなに私に謝るのが嫌なんですか!?私があなたより身分が低いから?でも間違った事をしたなら謝らないとダメだと思います!」

ユーリの暴挙に会場は途端にざわついた。
在校生だけでなく、保護者たちも彼女の行動に眉を顰める。王太子とその婚約者の会話に割り込むだけでなく、公爵令嬢を公共の場で詰るとは。
その場で切り捨てられても文句は言えない行動だ。少なくともこの場で宰相によって男爵家は貴族籍を剥奪されても文句は言えない。ユーリの父親である男爵は真っ青な顔で震えていた。きっと彼は今頃、ユーリを正式に娘として男爵家に迎え入れたことを後悔しているだろう。公然と公爵家を敵に回したのだから。
せめてもの救いは、この場に宰相が居ない事だった。娘を溺愛する彼がこの場に居ないこと自体不自然なのだが、今それを気にする者はいない。


「嫌味……?私があなたに……?何のために?」
「まだしらばっくれる気ですか!?そんなの、エドワード様に愛されていた私が気に食わなかったんでしょ!?私のする事なす事すべてに目くじら立てて注意して……!!」

男爵はもう、青を通り越して真っ白な顔色をしていた。ユーリが公然と略奪宣言をした。それ即ち、フェリクス公爵家と王家に正面切って喧嘩を売ったということ。弱小男爵家が太刀打ちできるはずがなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

私の誕生日パーティーを台無しにしてくれて、ありがとう。喜んで婚約破棄されますから、どうぞ勝手に破滅して

珠宮さくら
恋愛
公爵令嬢のペルマは、10年近くも、王子妃となるべく教育を受けつつ、聖女としての勉強も欠かさなかった。両立できる者は、少ない。ペルマには、やり続ける選択肢しか両親に与えられず、辞退することも許されなかった。 特別な誕生日のパーティーで婚約破棄されたということが、両親にとって恥でしかない娘として勘当されることになり、叔母夫婦の養女となることになることで、一変する。 大事な節目のパーティーを台無しにされ、それを引き換えにペルマは、ようやく自由を手にすることになる。 ※全3話。

義妹が私に毒を持ったので、飲んだふりをして周りの反応を見て見る事にしました

睡蓮
恋愛
義姉であるナナと義妹であるカタリナは、ナナの婚約者であるドリスを隔ててぎくしゃくとした関係にあった。というのも、義妹であるカタリナが一方的にナナの事を敵対視し、関係を悪化させていたのだ。ある日、ナナの事が気に入らないカタリナは、ナナに渡すワインの中にちょっとした仕掛けを施した…。その結果、2人を巻き込む関係は思わぬ方向に進んでいくこととなるのだった…。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...