破滅エンドの悪役令嬢は、隣国皇帝に溺愛される

珊瑚

文字の大きさ
13 / 26

12

しおりを挟む
12
だがそれでもやはり結果として、スカーレットは手紙に返信を出すことはなかった。それは互いの立場を万が一にも危うくしてはならないという強い意志の表れでもあり――エドワードへの義理立てでもあった。どんなに彼から向けれれる視線と言葉が冷たくなろうとも、一縷の望みに縋っていたかったのだ。諦めと、ほんの少しの希望を糧に、ボロボロの愛情を抱えて過ごしていたスカーレットだったが、事態は変わらない。

そんな中、卒業パーティーが一週間後に迫っていた。
もうスカーレットとエドワードの決裂は火を見るよりも明らかであり、きっとスカーレットを逃したくない国王と王妃によって強行されるであろう婚儀ののちには愛などない結婚生活が待っているのだ。
そう諦めの色が日に日に濃くなっていた時だった。

突如、公爵家に予定になかった来客があった。
こんな夜中に、と首を傾げながら報告に来た使用人から話を聞いた公爵家一同は直後、顔色を変えることとなった。夜中に連絡一つなく公爵家を訪れるなど無礼もいいところ、追い返そうかとも思ったがどうやらただものではなさそうだという空気を感じ取った使用人がとりあえず公爵の判断を仰ぎにきたようだ。その判断力に感謝しつつ、彼に茶を出すように指示した公爵は、すでにナイトガウンに着替えてしまっていたことを悔やみながら最大級の速度で身支度を整えた。

急いで応接間に向かうとそこには一人の男が待っていた。
公爵家の面々の到着を感じ取った彼は、公爵夫妻とスカーレットのみが入ってきたことを確認すると、顔を隠すように目深に被っていたフードを取り払った。

夜を溶かしたような艶やかな黒髪に深い海のような美しい青色の切長な瞳。
立ち上がった彼はスラリとした長身で、装飾品の少ないシンプルな出で立ちながらもその高貴さを隠せない、まさに美丈夫といった風貌の男――――帝国の皇帝・ファウストその人であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

私の誕生日パーティーを台無しにしてくれて、ありがとう。喜んで婚約破棄されますから、どうぞ勝手に破滅して

珠宮さくら
恋愛
公爵令嬢のペルマは、10年近くも、王子妃となるべく教育を受けつつ、聖女としての勉強も欠かさなかった。両立できる者は、少ない。ペルマには、やり続ける選択肢しか両親に与えられず、辞退することも許されなかった。 特別な誕生日のパーティーで婚約破棄されたということが、両親にとって恥でしかない娘として勘当されることになり、叔母夫婦の養女となることになることで、一変する。 大事な節目のパーティーを台無しにされ、それを引き換えにペルマは、ようやく自由を手にすることになる。 ※全3話。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...