破滅エンドの悪役令嬢は、隣国皇帝に溺愛される

珊瑚

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その日ファウストは、夜が空ける前に帰って行った。
結論から言うと、彼の申し出を受けることにした。
彼の提示した条件が魅力的だったのもあったが、何より自分では気付かぬまま窮地に陥っていたのを助けてくれた彼に報いたいと思った。
もちろん、彼の言うことが現実になるという確証はどこにも無い。
だがそれでも、これだけ尽くしてきた自分と公爵家を蔑ろにするエドワードとやっていけるとは到底思えなかった。

何より、もはや今では洗脳に近かったのではと思えてしまうほどに、エドワードへの気持ちが綺麗さっぱり消えてしまったのが大きかった。時折ユーリが口にしていた『ルート』とか『シナリオ』とかが関係あったりするのかしら?

スカーレットが彼の手を取ることを表明すると、彼は具体的な計画を話し始めた。淀みなくスラスラ話し続けるその様子は、以前から計画されていたことの証明であろう。

彼が話した内容は以下のようなものだった。

・エドワードによって断罪されるのを受け入れ、彼らの計画に乗って国外追放されるようにする
・国王夫妻の介入を許さず、直ぐに帰宅する
・公爵家の家紋付きの馬車で帝国との国境に向かう
・国王が放つであろう追手を撹乱するため、襲われて死んだことにする
・タイミングを合わせてファウストが迎えに行く
・娘の追放を理由に公爵夫妻も国外離脱する


彼の話を聞き終わったスカーレットは概ね受け入れた。
だが、一つだけどうしても受け入れ難いことがあった。


「陛下、心遣いは嬉しいのですが、彼ら……エドワード殿下とユーリの思い通りに一瞬でもなることが許せません。これは私のプライドです。そして、貴方の妃となろう人間があらぬ濡れ衣を着せられて後ろ指を指されているだなんてあってはなりません。……どうせエドワード殿下は私に口答えされたら逆上して追い出そうと意固地になるだけでしょう。彼らの心変わりは期待していません。ですが、その場に大勢いる貴族たちはそうではありません。」

そういうとスカーレットは極上の笑みを浮かべた。


「私を裏切った奴らが絆を強くする礎になんてなってやるものですか。内側から瓦解すればいいんだわ。」
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