【完結】悲劇のヒロインぶっているみたいですけれど、よく周りをご覧になって?

珊瑚

文字の大きさ
29 / 78
番外編2~ルーカスside~

3話

間に合わなかった。

とてもでは無いが、パーティーに出たりするような気分ではない。それでもそんな事はお構い無しに社交シーズンは始まる。
あと1年で一般的に王族の婚約者が決定するタイムリミットとなる。
今期の社交界ではあらゆる家が血眼になって娘を売り込みに来るだろう。
これ以上婚約を先延ばしにするのは宜しくない。
王太子ともなれば特に、彼の婚約者が決定するではその一縷の望みにかけて我が子を次期王妃にさせんとする貴族が多く、貴族間の見合いが進まなくなる。

頭では分かっているのだ。
でも心が追いつかない。

王族として、王太子として望まれるのは次代に血を繋ぐ事。ルーカスを産んだ後暫く体調が芳しくなかった王妃にはもう子供は望めない。王妃を心から愛する王も側妃を娶ってもう一人スペアの跡取りを作る事は何があっても無いだろう。
褒められた行為では無い事は分かっている。
だが、それでもせめて時間が欲しい。
社交シーズンは約半年。そんな短い期間で10年以上あたため続けてきた想いを断ち切れる程自分は強くない。

つい先日、ある貴族が王室に謀反を企てた。
遥か昔の王族の傍系の血の流れを汲む者を旗印にして国をひっくり返そうとした。
その貴族は謀反を企てる少し前に禁止薬物の輸入への関与が発覚し、爵位を二段階降格させられたのだ。密輸の決定的な証拠が見つからず「関与」という形で済まされたが、証拠が出てくるのも時間の問題だったのだろうか、追い詰められた彼等は揉み消しにかかったのだろう。

だが、それが成功する事は無かった。
子供特有の行動力と、持ち前の頭の良さで密輸と謀反、どちらの証拠もルーカスが見つけてしまった事で謀反は失敗に終わった。

その事について、父王から何でも好きなものを褒美として取らそうと言われている。その時は特に欲しい物も無かったからそのまま放置していたのだが、これを使う絶好の機会では無いだろうか。

まだこの年齢ならばぎりぎり子供のわがままで押し通せるだろう。周りが納得してくれるかどうかはまたべつ問題だが。兎に角やってみない事には始まらない。

昼に程近いこの時間ならばきっと謁見が終わったであろう父は執務室に居るはずだ。少しなら時間を取ってくれるだろう。昼食が始まる前に急がなければ。急いで訪れたものの、やはり少し逡巡してしまう。

一瞬の後、意を決したルーカスは執務室の扉を叩いた。
感想 29

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「退屈な女だ」と婚約破棄されたので去りましたが、翌日から国政が止まったそうです。え、私はもう存じませんけど?

にたまご
恋愛
公爵令嬢クラーラは、ユリウス王太子殿下に婚約を破棄された。 「退屈な女だ」「何の取り柄もない」と。 否定はしない。 けれど殿下が知らないだけで、通商条約も予算案も外交書簡も、この国の政務の大半を六年間匿名で回していたのは──この「退屈な女」だ。 婚約破棄の翌朝、宰相補佐官のレオンが焼き菓子と四十二件の緊急報告を携えて公爵邸を訪れる。 「貴女がいなくなった王宮は、控えめに申し上げて、地獄です」 ──存じません。私はもう、ただの無職ですので。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

精霊に愛されし侯爵令嬢が、王太子殿下と婚約解消に至るまで〜私の婚約者には想い人がいた〜

水都 ミナト
恋愛
精霊王を信仰する王国で、マナの扱いに長けた侯爵家の娘・ナターシャ。彼女は五歳でレイモンド王太子殿下の婚約者に抜擢された。 だが、レイモンドはアイシャ公爵令嬢と想い合っていた。アイシャはマナの扱いが苦手で王族の婚約者としては相応しくないとされており、叶わない恋であった。 とある事件をきっかけに、ナターシャは二人にある提案を持ち掛けるーーー これはレイモンドとアイシャ、そしてナターシャがそれぞれの幸せを掴むまでのお話。 ※1万字程度のお話です。 ※他サイトでも投稿しております。

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。