【完結】子供が出来たから出て行けと言われましたが出ていくのは貴方の方です。

珊瑚

文字の大きさ
4 / 19

4

4
ごちゃごちゃと色々考えずに終わってみたら実にあっさりしたものだった。
書類を記入している間も特に何も心にくることもなく、自分の中の夫の存在の小ささを改めて気付かされることとなった。
届け出は、特に理由を聞かれることもなく即座に受理され、これで夫ーー元夫のクリスとは完全に他人だ。時間が掛からなかったのは、財産分与や利権などの話が一切なかったことが大きいのかもしれない。

どことなく清々しい気持ちで役所から再び外に出て少し歩こうと一歩踏み出した時だった。


「失礼、レディ。バートリー伯爵夫人でいらっしゃいますか?」
「?」

外に出た瞬間に声をかけられた。
声の主は驚く程に美形の青年だった。
夜を溶かしたような黒髪は絹のようにサラサラで、さぞや手触りが良いのだろう。
印象的なアメジストの瞳は妖しい光を放ち、恐ろしいほどに整った容貌と相まって妖艶な雰囲気を醸し出している。

だが、シェイラは彼の事を知っている――いや、噂を聞いたことがある、や、見かけた事がある、が正しい表現だろうか。


「突然の御無礼をお許しください、夫人。申し遅れました。わたくしはレナード・アンダーソンと申します。以後、お見知り置きを。」

――レナード・アンダーソン侯爵子息。
その高い身分から、そして誰にでも分け隔てなく優しい態度、そしてその容姿から常に社交界では注目されている人物だ。
『誰にでも分け隔てなく優しい』というのは言いようで、要は誰にでも一歩引いたところから俯瞰しているような態度を崩さないのだ。壁を感じる者も多いのだろう。
そして、様々な要素を満足に兼ね備えていながら、未だに未婚であった。年齢はシェイラのほんの少し上。男性といえども所謂『行き遅れ』一歩手前の年齢となる。
そこで、社交界では彼の隣に収まろうと、日々熾烈な争いが繰り広げられていた。
感想 8

あなたにおすすめの小説

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」

みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」 ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。 「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」 王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。

【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜

恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」 不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。 結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、 「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。 元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。 独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場! 無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。 記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける! ※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。  苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる  物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります

たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。 リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。 「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。 リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。

痛みは教えてくれない

河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。 マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。 別サイトにも掲載しております。

そういう時代でございますから

Ruhuna
恋愛
私の婚約者が言ったのです 「これは真実の愛だ」ーーと。 そうでございますか。と返答した私は周りの皆さんに相談したのです。 その結果が、こうなってしまったのは、そうですね。 そういう時代でございますからーー *誤字脱字すみません *ゆるふわ設定です *辻褄合わない部分があるかもしれませんが暇つぶし程度で見ていただけると嬉しいです

【完結】マザコンな婚約者はいりません

美豆良ゆい
恋愛
伯爵令嬢シェリーは、婚約者である侯爵子息デューイと、その母親である侯爵夫人に長年虐げられてきた。 貴族学校に通うシェリーは、昼時の食堂でデューイに婚約破棄を告げられる。 その内容は、シェリーは自分の婚約者にふさわしくない、あらたな婚約者に子爵令嬢ヴィオラをむかえるというものだった。 デューイはヴィオラこそが次期侯爵夫人にふさわしいと言うが、その発言にシェリーは疑問を覚える。 デューイは侯爵家の跡継ぎではない。シェリーの家へ婿入りするための婚約だったはずだ。 だが、話を聞かないデューイにその発言の真意を確認することはできなかった。 婚約破棄によって、シェリーは人生に希望を抱きはじめる。 周囲の人々との関係にも変化があらわれる。 他サイトでも掲載しています。

妹に初恋を奪われ追放された王女、私を捨てた騎士がなぜか二度恋してきます〜迷宮の通信機で再会したら執着が重すぎる〜

唯崎りいち
恋愛
妹を刺した――。 身に覚えのない罪で、迷宮へ捨てられた王女の私。 絶望の中で拾ったのは、スマホに似た『未知の魔導具』だった。 繋がった相手は、見知らぬ「名もなき騎士」。 孤独を癒やしてくれる彼に、私は正体を知らないまま惹かれていく。 「君のためなら、国にだって逆らう」 けれど、再会した彼の正体は……? 「国だって滅ぼす。それくらいの覚悟でここに来たんだ」 通信機から始まる、二度目の初恋と逆転ざまぁ。