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ごちゃごちゃと色々考えずに終わってみたら実にあっさりしたものだった。
書類を記入している間も特に何も心にくることもなく、自分の中の夫の存在の小ささを改めて気付かされることとなった。
届け出は、特に理由を聞かれることもなく即座に受理され、これで夫ーー元夫のクリスとは完全に他人だ。時間が掛からなかったのは、財産分与や利権などの話が一切なかったことが大きいのかもしれない。
どことなく清々しい気持ちで役所から再び外に出て少し歩こうと一歩踏み出した時だった。
「失礼、レディ。バートリー伯爵夫人でいらっしゃいますか?」
「?」
外に出た瞬間に声をかけられた。
声の主は驚く程に美形の青年だった。
夜を溶かしたような黒髪は絹のようにサラサラで、さぞや手触りが良いのだろう。
印象的なアメジストの瞳は妖しい光を放ち、恐ろしいほどに整った容貌と相まって妖艶な雰囲気を醸し出している。
だが、シェイラは彼の事を知っている――いや、噂を聞いたことがある、や、見かけた事がある、が正しい表現だろうか。
「突然の御無礼をお許しください、夫人。申し遅れました。わたくしはレナード・アンダーソンと申します。以後、お見知り置きを。」
――レナード・アンダーソン侯爵子息。
その高い身分から、そして誰にでも分け隔てなく優しい態度、そしてその容姿から常に社交界では注目されている人物だ。
『誰にでも分け隔てなく優しい』というのは言いようで、要は誰にでも一歩引いたところから俯瞰しているような態度を崩さないのだ。壁を感じる者も多いのだろう。
そして、様々な要素を満足に兼ね備えていながら、未だに未婚であった。年齢はシェイラのほんの少し上。男性といえども所謂『行き遅れ』一歩手前の年齢となる。
そこで、社交界では彼の隣に収まろうと、日々熾烈な争いが繰り広げられていた。
ごちゃごちゃと色々考えずに終わってみたら実にあっさりしたものだった。
書類を記入している間も特に何も心にくることもなく、自分の中の夫の存在の小ささを改めて気付かされることとなった。
届け出は、特に理由を聞かれることもなく即座に受理され、これで夫ーー元夫のクリスとは完全に他人だ。時間が掛からなかったのは、財産分与や利権などの話が一切なかったことが大きいのかもしれない。
どことなく清々しい気持ちで役所から再び外に出て少し歩こうと一歩踏み出した時だった。
「失礼、レディ。バートリー伯爵夫人でいらっしゃいますか?」
「?」
外に出た瞬間に声をかけられた。
声の主は驚く程に美形の青年だった。
夜を溶かしたような黒髪は絹のようにサラサラで、さぞや手触りが良いのだろう。
印象的なアメジストの瞳は妖しい光を放ち、恐ろしいほどに整った容貌と相まって妖艶な雰囲気を醸し出している。
だが、シェイラは彼の事を知っている――いや、噂を聞いたことがある、や、見かけた事がある、が正しい表現だろうか。
「突然の御無礼をお許しください、夫人。申し遅れました。わたくしはレナード・アンダーソンと申します。以後、お見知り置きを。」
――レナード・アンダーソン侯爵子息。
その高い身分から、そして誰にでも分け隔てなく優しい態度、そしてその容姿から常に社交界では注目されている人物だ。
『誰にでも分け隔てなく優しい』というのは言いようで、要は誰にでも一歩引いたところから俯瞰しているような態度を崩さないのだ。壁を感じる者も多いのだろう。
そして、様々な要素を満足に兼ね備えていながら、未だに未婚であった。年齢はシェイラのほんの少し上。男性といえども所謂『行き遅れ』一歩手前の年齢となる。
そこで、社交界では彼の隣に収まろうと、日々熾烈な争いが繰り広げられていた。
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