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第八話
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男は森下に電話をかけた。距離のある私にも聞こえるくらいに森下は怒鳴っていた。
森下は正義感が強くて優しかった、自分のせいで私が攫われたと責任を感じているのかもしれない。
森下の怒声を聞きもせずに私の元へ来た男は黙って携帯を私の耳元へ持ってきた。
「・・森下?」
「石崎!無事なのかっ!?」
「えぇ、大丈夫。・・一つ森下にお願いがあるんだけど言っていいかな?」
「あぁ、なんだ?」
「・・・私を助けに来ないで。絶対に来たらだめ。」
男に目を移すと命令に背いた私を見て目を見開いていた。私は男から目をそらして会話を続ける。
「私は大丈夫。だから絶対来ないで欲しい。彼女さんとお幸せにね。結婚式行けなくてごめ・・」
私が言い終わる前に男は携帯を自分の耳元へ移した。
「とにかく来ないとこの女を殺す。こいつだけじゃなくお前の大切な奴全員殺してやるよ。」
男は電話を切った。
「俺の命令に背くとは偉いもんだな、自分の置かれた状況を理解しての行動か?」
男は再び私の元へ近付いてきた。
「私は森下を殺させたりしない。森下だけじゃない、あなたの好きな板倉佳代も、私にとっては大切な仲間。絶対に苦しませたくないのよ。あなたみたいな男に佳代ちゃんは幸せにできない。」
「なんだと?俺に佳代が幸せにできない筈がない、現に佳代は俺の前で幸せそうに笑ってたんだ、佳代は俺といれば幸せになれるんだよ!!」
「馬鹿じゃないの?あなたより森下が優しくて一緒にいて楽しかった結果でしょ。佳代ちゃんは森下を選んだのよ。」
「・・・もうお前を生かす価値はない。」男はナイフを取り出し私に詰め寄った。
「私ごとき殺して一生牢屋なんて可哀想な人生ね、佳代ちゃんにも見捨てられて終わりよ。」
これが人生の最期なら、こんな男の精神ズタズタになるまで罵倒してやろうと思った。
「黙れ!!」手足は縛られていたが自力で足の縄を緩めた私は懸命に後ろへ後ずさった。男はナイフを持って私の方へ駆けてきた。殺される、そう確信した私の正面、男の背後で銃声がした。
森下は正義感が強くて優しかった、自分のせいで私が攫われたと責任を感じているのかもしれない。
森下の怒声を聞きもせずに私の元へ来た男は黙って携帯を私の耳元へ持ってきた。
「・・森下?」
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「えぇ、大丈夫。・・一つ森下にお願いがあるんだけど言っていいかな?」
「あぁ、なんだ?」
「・・・私を助けに来ないで。絶対に来たらだめ。」
男に目を移すと命令に背いた私を見て目を見開いていた。私は男から目をそらして会話を続ける。
「私は大丈夫。だから絶対来ないで欲しい。彼女さんとお幸せにね。結婚式行けなくてごめ・・」
私が言い終わる前に男は携帯を自分の耳元へ移した。
「とにかく来ないとこの女を殺す。こいつだけじゃなくお前の大切な奴全員殺してやるよ。」
男は電話を切った。
「俺の命令に背くとは偉いもんだな、自分の置かれた状況を理解しての行動か?」
男は再び私の元へ近付いてきた。
「私は森下を殺させたりしない。森下だけじゃない、あなたの好きな板倉佳代も、私にとっては大切な仲間。絶対に苦しませたくないのよ。あなたみたいな男に佳代ちゃんは幸せにできない。」
「なんだと?俺に佳代が幸せにできない筈がない、現に佳代は俺の前で幸せそうに笑ってたんだ、佳代は俺といれば幸せになれるんだよ!!」
「馬鹿じゃないの?あなたより森下が優しくて一緒にいて楽しかった結果でしょ。佳代ちゃんは森下を選んだのよ。」
「・・・もうお前を生かす価値はない。」男はナイフを取り出し私に詰め寄った。
「私ごとき殺して一生牢屋なんて可哀想な人生ね、佳代ちゃんにも見捨てられて終わりよ。」
これが人生の最期なら、こんな男の精神ズタズタになるまで罵倒してやろうと思った。
「黙れ!!」手足は縛られていたが自力で足の縄を緩めた私は懸命に後ろへ後ずさった。男はナイフを持って私の方へ駆けてきた。殺される、そう確信した私の正面、男の背後で銃声がした。
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