彼はいつも私を惑わす

乃愛

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第九話

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「・・この男は石田翔太。あなたの部下の板倉佳代さんの元恋人であり、板倉さんに振られて逆上した石田はあなたを誘拐し、助けに来た板倉さんの意中の相手
森下和希さんを殺害しようとした。間違いはありませんか?」
刑事に事件の経緯を確認された私は恐怖と安心で少々放心しながら頷いた。
「お怪我は?」
「大丈夫です。」怪我よりも早く自宅へ帰して欲しい。疲れた心と体が休ませろと私を急かす。刑事はメモを取りながら私に事情聴取し、一向に帰宅させてくれない
「では事情聴取は以上で終了です。ありがとうございました。」
深く頭を下げられ、私も軽く頭を下げる。刑事は次の事情聴取をするべく相手の元へ走った。私は別の女性の刑事にペットボトルの水を渡され別室に移動した。
遠くから事情聴取される風景を眺める。
「彼とお知り合いですか?」女性の刑事に尋ねられ はい、と答える。
「前園柚さんでしたっけ、噂に聞いた通り美しい方ですね。男性なのに美人っていうか。」
刑事は話題が見つからないのかそんな会話を振ってきた。私の助けたのは彼だった
銃で私に詰め寄る男の足を撃ち、動きを止めた。私のもとへ駆け寄ってきて数分抱きしめられた。安心感から抵抗できずそのまま彼が離れるまでじっとしていた。
男は倒れた衝撃でナイフを落とした為立ち上がる事もできず、彼が呼んでいた警官によって取り押さえられた。
「あの、噂通りってどういう事ですか?前園とお知り合いなんですか?」
「知り合いという程ではありません、彼のお父様には大変お世話になっておりますが。」
「前園くんのお父様・・どんな方なんですか?」
「いつも責任感が強くて、努力家な方ですかね。指導に熱心で私もよく怒鳴られましたが、笑顔が素敵で熱血な警部です。」
「・・けい・・けいぶ?」
「ええ、前園警部はとっても良い方です。」
「あの、けいぶって警察の警に部署の部で警部ですか?」
「はい。ですから前園柚さんは綺麗な顔立ちで有名だったんです。」
「そ、そうですか・・」
「あ、そろそろ事情聴取も終わりみたいですよ。」私は刑事に誘導され前園くんの元に行った。

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