国家魔法探索士の椿〜未確認幻獣探し旅〜

二十九話 ルール

「この試験の鬼ごっこでは私と他の試験官を除いた皆様は魔法を使うことができません」

「えっ！」

「信じられないなら、試しに使ってみて下さい」

　じゃあ、透明化の魔法を･･････

　椿が左手の人差し指を立て、右手でその人差し指を掴む。右手も人差し指を立てた。

「･･････」

　ほんとにできない！

　受験者達がざわざわと騒ぎ出す。

「さらにこのクッチーはとても危険です！クッチーによって皆様が死んでも、接吻や身体の至る所を触られても、怪我をしても私達は一切の責任を負いません！もちろん、それによる精神的又は肉体的後遺症が残っても責任は負いません。それでも皆様はやりますか？」

「･･････」

「とは言っても、ルールが分からなければ判断は難しいですかね。ルールを説明します。クッチーから魔法なしで一時間逃げ切ることです。逃げ切れば一次は合格とします。ちなみにクッチーに一分以上身体の一部を掴まれたり、触られた人は眠ってしまいます。その時点で試験は失格となります。なお、クッチーは時間が経つにつれて増やします」

　なるほど。

「ここまでで質問ある人」

「はい！」

　と先程、椿にからんできた大柄な男が挙手をした。

「はい、どうぞ」

「クッチーに攻撃はしてはいけないんですか？」

「別に攻撃してもかまいませんが、おすすめはしません」

「どうしてですか？」

「このクッチーは先程も言いましたが、とても危険だからです。だから、逃げることをおすすめします。あと、そうそう言い忘れてました！こちらからクッチーを一分以上掴んだり、触っても、眠ってしまいますのでそれを踏まえてもおすすめしません」

「ふ～んわかりました」

「あとは質問ありませんか？」

「･･････」

「ないようですね。では、皆様。もう一度言います。このクッチーはとても危険です！クッチーによって皆様が死んでも、接吻や身体の至る所を触られても、怪我をしても私達は一切の責任を負いません！もちろん、それによる精神的又は肉体的後遺症が残っても責任は負いません。それでも皆様はやりますか？」

「･･････」

「もし、棄権するなら今の内ですよ！あそこに出口がありますから三分以内にそこから出て行って下さい！」

　と緑は左側の方を手でさす。

　そこには試験官二人が門番のように立っていて、その部分だけドアくらいの大きさで結界が張られていなかった。

　三分後──　

「皆様、肝が据わってますね！誰一人棄権しないなんて！」

「･･････」

「では、あそこも完全に結界で閉じちゃいますね！」

　と言って、その部分も結界で完全に閉じた。

「では、クッチーを出しますね･･････出でよ、クッチー」

　と緑は紙からクッチーを出した。

　その姿は紙で描かれた通りの歪な人の形に顔部分は唇のみだった。

「･･････」

　クッチーは身体を震わす。

「ヒャッハアアアアアアアア！」

「！」