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#.3 開かれた世界

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#.3 開かれた世界

『南朋!起きろー!』いつもの日常だ…、それにしても相変わらず、声がでけー!
『じゃ、仕事行って来るから。後、宜しくね!』
『沙紀さーん、いってらっしゃーい、お仕事頑張って!』
『美香ちゃん、望結ちゃん、行ってくる。南朋も、休みだからってダラダラしないでよ!』
『分かってまーーす』あー、ねむてー。
『南朋、先にご飯食べてるよー』って、じぶん家になってるような…、まぁ、いいけど 笑
『おう、美香ありがあとな、後で食うわ!』
ひとまず、笑顔が見れて何よりだな。ペチャクチャと、少しうるせーがな。
とにかく、バイクの奴と接触しないとな。後で、望結から祐樹にメールしてもらうか、
アイツ、俺のメールは無視しあがるしな。それに、美香と一緒に居ると知られると厄介だな。
まぁ、アイツなりには心配してるんだろーけど…、巻き込む訳にいかねーしな。
とりあえず、朝飯くうか。それからだな。
『南朋、おそーい。だから、いつも遅刻すんだって、せめて後2分くらい早くしたら』
『2分!美香、たった2分で何が変わるんだよ。意味ねーって』
『2分あったら、全然違うって!ねぇ、美香。特に朝の2分は』
『望結のいう通り!そう、あの朝も2分違えば…』
『美香、なんかゴメンね…、想い出せちゃって…』
『望結、気にしないでね。そもそも、南朋が早くすればいいんだよ』なんで、、、俺なんだ。
うん、確かに望結の言う事も一理あるな。2分違えば、もしかしたら親父さんは…
今更、考えてもどうしようもねーが。時間は戻らねーし…、戻せるなら戻したいが…
それより、早く祐樹に連絡取って貰わねーとな。美香にはまだ、知らせるのは早いか…

『望結、後で祐樹にメールして、出来れば名刺の写真を送ってきてほしいんだ』
『それと、美香には伏せといてほしい。まだ早いと思う』
『わかった。後でメールしてみる。返信来たら南朋にメールするね』
『サンキューな、頼んだ!俺は、何とか接触してみる。情報を知っている可能性が高い』
『それと、俺と美香が一緒に居るって事も伏せてほしい、アイツに知られるややこしい』
『分かってる。祐樹が美香を好きだって事は!任せといて』
直ぐに、俺のスマホにメールが届く。写真付きのメールで、連絡先もバッリチ!祐樹も相当
心配しているのが分かるな。いずれは、アイツにもちゃんと話ししねーと。でもなぁ… 笑
連絡先もバッチリだし、これで接触は可能だ。とにかく、今は美香に気付かれねーように
動かねーとな。でも、聞いたことない出版社だな。まぁ、出版社なんて山ほどあるし。
しかし、あそこまで追っかけてくるってのは、必ず何か知っているに違いない!
ますは、そこから突き止めーねーと。
『美香、気分転換にショッピングでもいこうよ。クレープでも食べてさ』
『イイね!あそこのクレープめちゃ美味しいもんネ。南朋はどうする?』
『オレ!!クレープなんか興味ねーし、お前らで行ってこいよ。オレはゲームでもしとくわ』
望結、ナイス作戦。俺は望結に目で合図した。実は、そのクレープが旨いのは知ってる…
『え!いいんだぁ、南朋も美味しって言ってたのに。まぁ、いいか』
『おい、何かあれば連絡だけはしろよ、美香』
『美香の事は任せといて、私が付いてるから大丈夫だって』
そうだな、何かあれば望結が連絡しえくれるか。まぁ、安心だけどな。
『わかった、気を付けて楽しんで来いよ。土産よろしくー』正直、クレープは食いてー 笑

望結たちを、見送るのを見届けると、直ぐに例の連絡先に電話を描ける。
が、何度コールしても繋がらねー、なんでだ?まだ、寝てんのかな?着歴残してあるし
折り返し待つしかねーか。その間、ゲームでもして待つか。焦っても仕方なーしな。
しばらくすると、スマホが鳴る。俺は緊張しながらも、スマホの画面を見るが…
一気にその緊張感が吹き飛ぶ。祐樹からだ…、このタイミングでなんだ。めんどくせー、、、
取りたくないが、とらねーと、余計な事を勝手に思われても面倒だ。仕方ねー、取るか。

『おう、祐樹。お前から連絡してくるなんて珍しいじゃねーか、何かあったか?』
『美香ちゃん大丈夫なのかよ?やたら、望結から連絡あるけど、何か知ってるのかよ?』
アイツにしては、珍しく的を得てる…、確かに、不審に思ってもおかしくねーな。
『俺が知ってるわけねーだろ、それより望結には聞いてみたのかよ?』
『望結に聞いても、肝心な事は教えてくれなーから、お前に電話したんだ』
『そっか、俺もお前と一緒だ。気になってんだが、肝心な事は教えてくれねーんだ』
『美香も、親父さんを亡くしたばっかだし、今はそっとしといた方がいいかと思う』
『だな、お前のいう通りかもな。俺の考え過ぎかもだな』ふぅ~、単純なヤツで良かったぜ。
『お前も心配だろうが、今は時期を待つしかねーな』
『そうだな、南朋。なんか分かれば連絡してくれよ』って、お前オレの電話取らねーだろ!
『おう、分かった。また学校でな』まさか、祐樹がとは…、一瞬でも思った俺がバカだった。

しかし、アイツはアイツなりに何か考えてるのは間違えねー。早いこと何か掴めねーとな。
そのためには、例のバイクヤローと会って話しをしねとーな。何も始まんねーし…
出版社てのは、不規則な生活してるだろーから、まだ寝てるんだろーか…
俺も、人の事は言えねーけど、、、まぁ、こればっかは焦ってもしかねーか…
それに、せっかくの休みだしな。これまで、その事ばっか考えて頭いてーしな。
美香らも、気分転換してんだろーし、オレも気分転換に外でも行って気分転換しなきゃな。
閉じこもってばっかだと、変な考えしかできねーし。
“望結、オレも出かけるわ。それとさっき、祐樹から電話あって、色々聞かれたけど
適当に交わしてる。それと、あのバイクヤローとは連絡ついてねーから、何か進捗
あったら、連絡するから。楽しんでな”
望結には、一応メール入れといた方が無難だろう。それに連絡ないって事は、アイツらも
楽しんでだろうな。たまには楽しまねーとな。オレも羽のばすか。
“分かった、あっ、そうそう祐樹からは連絡あったよ。私からも、それなりに話し合してる”
望結から、返信があった。やはり祐樹は望結にも連絡してあがるな。侮れない存在だな。

俺は、徒歩でブラブラする事にした。まぁ、学校ある時でも、抜け出して近くのゲーセン
に行くのだが、見つかると面倒くさい説教があるが、今日は堂々といけるぜ。
しばらく、そのゲーセンで過ごすことにする。自慢するほどではないが、ゲームは得意だ。
金も、あんまねーけど、それなりに時間を潰せる位の事は出来る。
その内、あのヤローから折り返しの連絡くらいあるだろう。それまでの暇つぶしだな。
そんなに大きいゲーセンではないが、十分楽しめるだけのゲームは揃ってある。
俺は、その中でも格闘ゲームが得意で、今まで対戦をしてきた連中に一度も負けた事がない。
とりあえず、缶ジュースを買いお得意の格闘ゲームを始める。
何時も通り、順調に勝ち進んでいく。そして本日最初の対戦者がきあがった。
いつしか、俺の後ろには、腕前を見る連中でいっぱいになっていた。いつもながらの光景だ。
その連中を尻目に、対戦相手を次々に負かしていくのが、最高に気分がいい。
俺は、いつも通りに次々とチャレンジしてくる、相手を寄せ付けない強さで圧倒していく。
いつの間にか、見飽きたのだろうか、見物人の数もまばらになる。そろそろ終わるか…
そう思った瞬間に新たなるチャレンジャーがきた。さっさと終わらせるか!腹も減ったし。

あっという間に2勝する。なんだ素人か!早いとこ終わらせて帰るか。
な、なに!!最後であろうと、少し手を抜いていたとはいえ、圧倒的な差での完敗。ヤバイ
この格闘ゲームに関しては誰にも負けられねーー!
次の対戦が始まる。一切手を抜かずに圧倒してやる!が、大差での敗北。ダメだ、勝てねー
しかし、俺もプライドってもんがある。絶対に負ける訳にはいかねーんだよ!!
え、え、えーーー!最終戦は相手に一切ダメージ与えることなく惨敗…、つ、強い!!
もはや、もう一度対戦を挑んだところで勝てねー、それほどまでに強すぎる!
どんなヤローなのか気になるな。いつもは、俺が見られる側なのだが…
気になって仕方ねー、椅子をずらして一瞬だけ確認する。どこにでもいそうな、オッサンだ。
うん、まてよ、どこかで見たような…、想い出せねー…、あっ、も、もしかすると…、、、
でも、そんな偶然あるのか!でも、それしかかんがえられねーし、、、もう一度確認する。
思った通りだ。あのバイクのオッサンに間違えねー!向こうも俺の顔を知ってはずだが…
それと同時にスマホが鳴る。バイクヤローの折り返しだ。鳴らしているのはオッサンだった。
俺はスマホを取る。
『やっと会えましたね。○○出版社の垣内です。南朋君かな、少し話しいいかな?』
『そうだけど、その前にもう一度チェレンジしていいっすか?』
『いいよ。南朋君も強いけど、でも僕には勝てないよ。それでもいいなら』ヤローー!
えっ、う、うそーーー!なんで、オッサンがこんなつえーの!圧倒的に惨敗だった…
『ま、まいりましたー!でも、今度はぜーっていに勝つからな!』
『いつでも、勝負しよう。その前にお友達の件で話ししようか』
『俺も、アンタと話ししたいと思っていたんだ。アンタ何か知っているのか?』
『ここじゃ、落ち着いて話し出来ないし、喫茶店でも行って話しをした方がいいと思うな』

俺と、オッサンは近くの喫茶店にいき、そこで話しをする事になった。
喫茶店に入ると、オッサンは単刀直入に切り出してくる。
『南朋君、率直に言うけど、お友達のお父さんの死は自殺なんかじゃないんだ!』
『まだ、証拠は何もないけど、自殺にしては不可解な点が多すぎる。裏付ける証拠が欲しい』
やはり、美香にいう通りだ。自殺ではないのか?しかし、証拠がないのも事実…
そして、この格闘ゲームマニアのオッサンを、どこまで信用したらしいのか…
味方なのか、あるいは…

『垣内さんだっけ、さっき会ったばっかで俺は、正直信用できねーんだ』
『確かに、自殺ではないって考えは一緒なんだか、何を根拠にそう思ってんのかな?』
『だよな、南朋君の言いたいことは、よく分かるよ。その通りだ』
『今から、少し奇妙な話しをするけど、聞いてくれるかな。信じるかは、南朋君次第だけど』
なんだ、このオッサン!急に、何を言い出すんだ!全く展開が読めねーぞ!
何かの勧誘なのか!ダメだーーー!とにかく聞くしかねーな。

『南朋君さ、さっき格闘ゲーム対戦したでしょ。実はあのゲーム初めてしたんだ』
え、どゆこと!!じゃ、俺は初めてやったオッサンに負けたって事か!に、しても…
『最初の対戦の時覚えてるかな、南朋君さ、2勝して余裕と思ったでしょ』
確かに、あの時点ではどう考えても素人だなって感じだったけど…
『でもさ、次の対戦からは僕が圧勝したよね。なんでだと思おう?』
訳がわかんねー!とんでもない吸収力の持ち主なのか、このオッサンは!何いってんだ!
『普通、分からないよね。それでいいんだ。僕も初めは理解し難かったからね』
おいおい、オッサン、早く本題に入れよ。理解どころか、何語かすらわかんねー!
『じゃ、説明するけど、最初は驚くと思うけどね、とにかく聞いて欲しい』
だ・か・ら・早くいえよーー!やっぱり、何かの勧誘なのか!新手の手法かも…
とにかく、冷静に振る舞うしかねーな。って、明らかに動揺してるのはバレてるしな。
『実はね、僕は2分だけ時間を操れるんだ。過去も未来も2分だけ』
でたーー!そっち系なのか!俺は、そんな超常現象なんて、全く信じねーんだよ。
『全く信じてない顔つきだね、まぁ、無理もない。急に言われても信じる訳がないよな』
『そりゃ、何言ってるわかんねーし、信じれる訳がねーよ。頭がいてーだけだって』
『だよな、それで当然だと思う。僕も、そうだったからね』
『じゃ、聞くけど、あのゲームに圧勝したのも、時間を操ったからなのか?』
『そうなんだ。普通に対戦していたら、南朋君に勝てる訳がないよ』
『2敗してから、南朋君と僕とでは、2分時間差があったんだ。僕は2分時間を早めた』
このオッサンの言ってる事が、全く理解できねー!時間早めて、俺に勝った!!あり得ねー

その後も、オッサンの説明を聞いているが、訳が分からないままで時だけが過ぎる。
オッサンによると、あの対戦の3試合目に関しては、実質俺は何もしてないって事だと!
オッサンは2分先の時間で、俺は通常の時間、だから常に先手で攻撃できるって事。
俺が、いくら必殺技を繰り出そうが、何をしようが意味がないって事なんだ。
が、何発かヒットしたのは、俺の腕前が上回っていたからだって。さ・す・がオレ!
って優越感に浸っている場合じゃねーが、確かに、次の対戦では一発もヒットはなしだった
信じるには程遠い話しだか、聞いてるうちに興味があるのは確かだな。信じねーけど。
でも、それと美香の親父さんとの事件を結びつける事が出来るんだろうか?分かんねー…

うん、まてよ、このオッサンが言ってることが事実であるとすれば、もしかすると…
このオッサンは、親父さんを殺した犯人を知っているって事なのか!なら、早く捕まえろよ
『その、時間を操れる事が本当だったら、あの事件の犯人を知っているって事なのか』
『そこなんだよ、南朋君。自殺ではないのは確かだけど、犯人まで特定出来ないんだ』
やっぱ、でたらめ言ってんじゃねーか!なんで、わかんねーんだよ!
『2分だけ操れるって言ったよね。あの事件を僕が知ったのは、事件の3時間後なんだ』
『3時間っていうと、180分だよね。事件当初まで時間を戻すのは極めて困難なんだ』

オッサンが言うには、2分毎に時間を戻す事は可能だが、その作業を連続して90回行う
事には、体力的にも気力的にも困難だと言うのだ。オッサンは記者の勘で事件性があると
疑っていたらしく、何とかしようと必死で、オッサンだけが持っている能力を使って
解決しようとしていたらしいが、事件当初まではたどり着けたものの、限界がきたらしい
そこで、事件をよく知る美香や、俺の証言を聞きたかったらしいが…
まぁ、オッサンの言う辻褄は合ってはいるが、なんせ、その能力自体を信じ切れてねーから
何とも言えねーのが、本音なんだなぁ~。やたらと熱く語ってくるのも余計に怪しい…
そもそも、オッサンはその能力をどこで手に入れたんか?それとも、生まれつき!
な、訳がねーよな。って事は、このオッサンは地球人じゃねーのか、、、う、宇宙人なのー!
まぁ、宇宙人な訳がねーか。その能力がホントだとして、このオッサンだけが持ってんの
それとも、俺や美香なんかも手に入れる事が出来んのか!ヤベー、考えれば切りがねー。
でも、手に入れられるとしたら、それは凄い事だけどな。美香が親父さんと会えるって事
になるかも知れねーし。それによって、見なくてもよい物まで見てしまう可能性もあるが…
いずれにせよ、このオッサンを信じるか、信じないかは別として、話しを聞く価値はあるな。

『南朋!何してんの!もう皆家でアンタの帰り待ってんだよ!何度も連絡しても無視だし』
『沙紀、わりー、ちょ、ちょっといつものゲーセンで集中し過ぎて…』
『まったく、分かったから、早く帰ってきなさいよ!』ヤベー、完全に時間忘れてた…
『南朋君、今日はここまでだな。この事は、まだ誰にも言わないでほしい』
『何か気になる事があったら、いつでも連絡して。これが僕個人のアドレスだから』
『じゃ、今日は会えて良かったよ。またな、お母さんも怒っている様子だし』
誰のせいだよ!まぁ、興味深い話しを聞けたけど…家で頭を整理しねーとな。
『それじゃ、今度はまともに対戦しろよな。ちょっと頭整理して、また連絡するから』

とんでもない話しを聞き、にわかには信じがたいが、もしオッサンの話しが真実だとすると
真相にたどり着けそうな気もする。が、今の段階では何とも…、というより、混乱状態だ。
オッサンは、誰にも言うな。と言うが、言える訳がない。というか、俺自身が皆無だ…。
それより、早く帰らねーとな。沙紀がうるせーし、女連中の総攻撃をくらう…

『ただいまー、遅くなってわりー、あー、腹減ったー、今日の晩飯はなんかなー』
『おかえりーー、もう食べてるからー!』って、またロールキャベツなの…
『お前ら、どんなけロールキャベツ好きなんだよ!いい加減、勘弁してくれよ!』
『南朋、ちゃんと見て!今日は、カレー風味のロールキャベツ丼なんですー』
『いや、かわんねーだろ美香!よくもまぁ、毎日、毎日おなじ物食えるよなー』
『なら、食べなくて結構です!ねー、美味しかったよねー』
『ホント、やっぱ沙紀さんの手料理は世界一美味しいよねーー』
『望結ちゃん、なんて嬉しい事言ってくれるの、泣いちゃう』な、なに、この子芝居は 笑
『わーたよ、食えばいいんだろ。食べさせていただきまーす』
『最初から、素直にそう言えばいいのよ』まぁ、確かにうめーな。

しかし、今日のオッサンの話しを望結にはしとくか。でもなぁ~…、どこから話せば…
とにかく、オッサンには聞かねーといけない事が山ほどあるのは確かだ。
その、にわかに信じがたい能力や、どこで手に入れたのか、自由に操れるかなど…
そもそも、まずはオッサンの言う事が、どこまで信頼できるかが問題なんだがな。
それを含め、まずは望結には話さねーと、冷静に判断してくれるだろーしな。
『南朋、出版社の人とは会えたの?どんな話ししたの?』
早速、望結がきやがった。まぁ、気になってるだろーしな。でもなぁ~…
『望結、そのオッサンとは会えた。話しもしたけどよー…、とにかく後で話すわ』
『南朋、何か分かったの…、なんか、浮かない顔してるけど…』
まぁ、そうなるわな。正確に言うと、なんも分かってねーが…
『いや、望結、なんつーか、ちょい、思いもよらぬ展開になりそーなんだ』
『俺も、頭の整理しねーと説明できねーし、今言えるのは、悪い話しではないって事だけだ』
うーん、難しい、どう説明してよいか…、あれこれ考えても仕方ねーし、ありもまま言うか!

晩飯を食い終え、俺の部屋で望結とゲームをすると言い、今日の事を説明することにする。
沙紀と、美香はリビングでお気に入りの恋愛ドラマを観ている。
『望結、今から話すことは、今の段階では、ここだけで留めてくれ!俺も正直、混乱してる』
俺は、ゲーセンでオッサンに格ゲーでぼろ負けした事、その後、喫茶店での一連の話をした
この世で、あり得ねーと思いながらも、オッサンに熱く語られた事を全て。
俺が話している事を、望結は拍子の抜けた顔で聞いていた。そりゃ、そうだろ!ビビるって。
話ししている途中で、恐らく何度も質問したいと思っているはずだろうが…
恐らく、望結も頭が混乱している状況だろうな。
『南朋、ちょっとだけ聞いていいかな?その話しが本当だとして、私たちはどうなるの?』
素直な意見だと思う。が、どうなるか、そうすれば一番いいのか、返答できない。
『望結、俺も半信半疑なんだ。まだ聞きたいことが山ほどある状態で、何とも…』
『だよね、、今の話しは、とにかく黙っておくね。私なりに考えるけど、南朋に任せるよ』

望結との話しは、それ以上しなかった。というよりも、出来ないと言うのが正しいのか。
俺も、寝耳に水の話しで、俺としては好奇心を掻き立てる話しではあるが、現実となると…
映画の中だけの話しが、現実的に起こる事があるのか!あるとすれば、すげーーー!
そして、今回は美香の件も絡むことになる。何とも複雑でもあり、ワクワクする感覚もある。
だから、余計に悩む事でもあるんだな。個人的な興味と、美香に対しての想いも含めて。

とにかく、あのオッサンにもらった個人用のメールに疑問を送るしかなーな。
オッサンも、何も考えがないのに接近してきてるようには思えないしな。
望結も、今日の話しを聞いて、望結なりに考えるだろうしな。とにかく、行動するのみだ!
でも、考えてみるとオッサンとゲーセンで会ったのも、偶然ではないのかもな…
あのオッサンが言うように、2分を操れる能力があるとすれば、辻褄があうけどな。
そもそも、あのオッサンがゲーセンを好きだとは思えねーしな。
とにかく、今日は色々あり過ぎて、疲れたな。こんなに頭使ったのも久々だしな 笑
まぁ、今日は寝るか!ねむてーと、いいアイデアも出てこないしな。
『南朋――!早く起きろーーー!』もはや、ニワトリみたいな存在だな 笑
『うっせーな、毎日、毎日!まだ学校休みだし、いいじゃねーか!』
『アンタ、何言ってんの!休みだからってグウタラしない!』
『はい、はい、わかりましたーー』俺は、オレでやる事あるんだよ!言えねーが。
『沙紀、頼むから、今日はロールキャベツは勘弁してくれよ』もう、見たくもねー!
『アンタ、口だけいっちょ前なんだから!たまには、アンタが作れば!』
『ねー、美香ちゃん、望結ちゃん、そう思わない!』
『沙紀さんに、さんせーい。望結もそう思うよね』なんだ、この流れは、やべーー。
『勿論!南朋が手料理、だいぶ心配だけど、毒見感覚でいいかも』言いたい放題かよ。
『そこまで言うんなら、作ってやるよー!そのかわり、文句言うなよ!』
と、啖呵きったのはいいけど…、何を作ればいいのか…、あ、そうだ!カレーだな。
まぁ、最悪レトルトでも、皿に移し替えればバレねーしな。
『それじゃー、仕事行って来るね。今日は南朋の手料理か、あまり期待してないけど』
『一言、余計なんだよー、早くいけよ!』

とにかく俺は、オッサンに連絡とることにするか。それからだな。
『俺は、部屋でゲームでもするわ。それから、食材買いに行くから』
『私も一緒に行っていい?心配だし』
『いいって美香、こーゆのはサプライズがいいに決まってんだろ』
『ねぇ、美香、久々にカラオケでも行かない?ストレス発散だー』
『それ、いいね!ホント、望結とカラオケ行くのも久々だもんね。よーし歌いまくるぞ』
ふぅ~、何とか望結の起点に救われたぜ。

早速、昨日整理したことを、オッサンのメールに送る事にした。聞きたいことは色々あるが
俺なりに、昨日ノートにまとめ、オッサンに送るようにする。
一番聞きたいのは、その能力を証明して欲しい事が先決なんだが。それでないと始まらない。
昨日の話しだけでは、どうも納得が出来ないというか、実際に見ないと分かんねーし。
その瞬間をスマホの動画に撮って、望結に送れば信じるだろう。
それさえ、確実な物になれば、先は見えてくるし、後は、オッサンがどうやって
その能力を手に入れたか?それは、俺らも手に入れられるのか?
とにかく、俺はメールを送信した。そして、オッサンからの返信を待つことに…

いつも、朝が早いんで俺は、ウトウトし1時間程度、眠ってしまった。
気が付くと、スマホの画面に1件の未読メールの表示がある、オッサンからだ。
寝たい目を擦りながら、そのメールを読む事にした。なかなかの長文で送られてきていた。
文章も、丁寧に書いてあり、オッサンの熱意は感じ取れる内容なのは確かだ。
“南朋君メールありがとう。昨日は、急に変な話しをして驚かせたと思うけど、実際
僕も、この能力を使用する事には、今でも抵抗を感じている。初めは、好奇心だけが
先走って、この能力の本来の意味すら理解していなかった。南朋君と同じだよ。
でも職業柄、様々な事件や問題に直面するようになって、この能力を人の為に使えない
かと考えるようになったんだ。南朋君が抱いている疑問は、当然だと思う。急に信じろ
という方が無理だよ。だから、南朋君が言うように証明する事が先決だな。それから
この能力は、誰でも手に入れる事が出来る。ただ、一定の条件はあるけどね。
それについては、段階を追って説明しようと思ってる。とにかく、僕はこの事件に関し
この能力を使用して、南朋君や友達がより良い選択を出来ればいいと思う。
出来れば、南朋君や友達も、この能力を手に入れて欲しい。それは、南朋君次第だけど
ひとまず、もう一度会って、能力が真実だって事を証明したい。今日の午後2時くらいに
昨日の、ゲームセンターで待ち合わせでもいいかな?あ、そうそう、対戦はしないけどね”

オッサンのメール内容から、昨日より真実味が感じられるのが、率直な思いだった。
オッサンも、色々と悩んでいたことが分かるな。まずは会ってからでないと…

“俺も、昨日から必死に考えていたけど、考えれば、考えるだけ頭が痛くなるし、でも
にわかに信じがたい話しだし、、、メール読んで、実際に証明して欲しいってのがある。
それから、その先の事を考えたいし。だから、2時にゲーセンで待ってる”

と、返信する。まだ望結にはこの事は伏せておこう。せっかく気晴らしのカラオケだしな。
それと、今日はカレーも作んねーといけねーしな。めんどくせーーー!

あ、そうだ!オッサンにカレーの作り方聞けばいいんじゃねーか。
流石に、知ってるだろ、カレーの作り方くれーは。

まぁ、どんな話しや、どんな事が待ち受けているのか楽しみではあるけどな。

これが、美香にとって良い方向に動けばいいんだけどな…
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