妹は双子、カノジョである。~双子がダブるってマ!?~

沢鴨ゆうま

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Folge 60 音痴

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「おわっ……た」

「終わったねぇ」

「全部記入はした」

「記入ねぇ」

 そう。
 テストが終わったのだ。
 めでたい。
 解答用紙が回収された後の余韻。
 力が抜けて机に突っ伏した。

「今回は相当ヤバかったんだねえ」

「抜かった時に限ってテスト範囲が広いんだよな、くそっ」

「いつも通りだったら平気なんだろうけどねえ」

 きっちりと相槌を打っているのは裕二だ。
 なんだか余裕を見せていやがる。
 どうもオレが授業中に咲乃と云々しているのが気に入らなかったらしく。

「お陰様でこっちは勉強捗ったからなあ」

「くそっ」

「さっきから汚いなあ。咲乃ちゃんに嫌われるぞ」

 咲乃はオレの背中を優しく撫でてくれている。
 実は癒されていたのだ。
 はっはっは。
 裕二、お前には分かるまい。
 この素晴らしく幸せな心地よさが。
 羨ましいだろ。
 羨ましいと言え。

「ボクがサダメを嫌いになることは絶対にないけど」

 はっはっは。
 どうだ裕二。
 これでもオレに勝つ気かね。

「咲乃ちゃんと美咲ちゃんは何故そんなにこいつを気に入ったのかねえ」

「君じゃないからだと思う」

 ぷぷぷ。
 裕二、そろそろ降参しろ。
 オレには勝てないのだよ。
 はっはっは。

「相変わらず厳しいなあ。俺は嫌われっぱなしだ」

 そうだ。
 いいぞ。
 そろそろ負けを認めろ。

「人の気持ちだからしょうがないな。ここは――」

 お!
 いよいよ言うのか?
 負けた、と。

「テストで勝ってこのモヤモヤをスッキリさせますか」

 ぐはっ!
 ……負けた。
 今回のテストはこいつに負けた可能性が高い。
 連続一桁順位の記録も途絶えた上、こいつとの勝負にも負けるのか。

「サダメは大丈夫だよ」

 ああ咲乃。
 なんて優しい子なんだ。

「きっちり要所は抑えていたから、結果はいつも通りじゃないかな」

「そうなの?」

 思わず飛び起きてしまった。
 咲乃と目が合う。

「ははは。サダメのおでこが赤くなっているよ」

 おでこナデナデ。
 嬉しい。

「咲乃ちゃん、なんでそんなことわかるの?」

「テスト勉強は一緒にしてたからだよ」

「一緒にって?」

「美咲もだけど、毎晩二人で教えてあげてたんだ」

「なんと、いてっ!」

 動揺して机の裏に膝をぶつけてやんの。
 ぷぷぷ。

「楽しかったなあ。これからテスト勉強は一緒にやろうよ、ね?」

「助かるからいいんだけど、長い休憩は気を付けてくれよ」

「えへへ。それは約束できないなあ。サダメも嬉しそうだったし」

「嬉しくないと言ったら嘘になるな」

「でしょ? なら問題無し! 早くテスト来ないかなあ」

「ちょ、ちょっと。それは勘弁してくれ。終わったところだぞ」

「ごめ~ん。今は休んでもらわないとね」

 裕二は膝を摩りながら話しに割り込んできた。

「お二人さん。そろそろ見せつけるのを止めてもらえるかな」

「なんでよ。ボクがサダメと楽しくして何がいけないのさ」

 冷え切り、刺すような眼で睨む咲乃。
 裕二の何が彼女にそうさせるのか。
 一途な咲乃が可愛すぎる。
 ……あれ?
 美咲も妹もオレしか好きじゃないのか。
 なんと。
 改めて考えると、みんな可愛すぎる。

「いけなくないです、はい。モテない自分が嫌なだけです、はい」

 なんだか裕二が可哀そうになってきた。
 いや、ざまあみろと言っておこう。
 さっきの仕返しだ。

「すぐに帰っていいみたいだから、帰ろ、サダメ」

「よし、行くか」

 一人残された裕二。
 まさにポツンと。

「じゃあな裕二。ま~た~あした~」

「サダメに音痴という欠点があって良かったよ。殴らずに済む」

 すっ飛んで来た美咲も合流した。
 と同時に二人共のけ反った。

「サダメちゃん、音痴ね」

「びっくりした。お歌は止めておこうね」

「そう? 今気分が良いから歌いたいんだけど」

 姉妹に手で口を塞がれる。
 綺麗な手。
 いや、なんで塞がれるんだよ。

「お歌はダ~メ!」

「そうです。歌の事は忘れましょう。塞ぐのは手じゃない方がいいですか?」

「あ! それはボクの担当だから」

「担当とか無いでしょ。もっと私もしないといけないし」

「しなくていいよ。美咲は恥ずかしいんでしょ? ボクに任せて」

「恥ずかしいのはサダメちゃんが好きだからですっ!」

 廊下に響き渡る姉妹の声。
 こりゃ歌えないな。
 せっかく気分が良いのに。
 ヒトカラでも行こうかな。
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