ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

文字の大きさ
50 / 218
第二章 剣士となりて

第三話 新居訪問

しおりを挟む
Szene-01 レアルプドルフ五番地区、空き家

 いよいよ見習い剣士から剣士へと昇格したエールタイン。
 それに伴い従者ティベルダも剣士級の奴隷に格上げとなった。
 レアルプドルフにおける奴隷制度とは――――。
 剣士の数を補うために貧困な町民たちが駆り出された形の事をいう。
 いわゆる徴兵である。
 駆り出された者たちが貧困者であったということで、いつしか奴隷という言葉が使われるようになってしまった。
 そして世代が受け継がれていく中で奴隷という言葉が徴兵よりも先行してしまい、徴兵が奴隷制度と勘違いされる形で今に至る。
 エールタインが奴隷という言いまわしに日頃から疑問を感じていたのはこの点であった。
 しかしレアルプドルフは剣士の町。
 剣士たちは従者を招き入れることで生活が成り立っているのも事実である。
 もどかしく悩ましい町の問題となりつつあった。

「今までと同じような景色だね。いい所なのになんで空き家なの?」

 ダン家に住む五人でエールタインとティベルダの新居に訪れていた。
 新居といっても新しく家を建てるのは容易なことではない。
 しかし剣士に昇格すると自身の居を構えるというのが町の習わしだ。

「俺の知り合いが引っ越す時にエールの新居にどうかという話をくれたんだ。迷わずその場で決めちまった」

 空き家の状態を見ながらダンは話を続ける。

「そいつは上級剣士なんだが、少し前に弟子が剣士に昇格してな。ここを出ていくのに合わせて自分も気分一新するために新たな環境へ移ると言っていた」
「なんだか剣士に必要なものが全部揃っているなあと一目で思ったけど、上級剣士様の家だったのなら納得したよ」

 ティベルダが家の前に広がる草原を走っては止まり、立ち尽くしたかと思えばまた走り回ったりしていた。
 それをヨハナとヘルマが時々声を掛けながら眺めている。
 そんな光景を背にダンとエールタインは新居の様子を細かく確かめていた。

「こんなに良い家をいただくなんて、申し訳ないなあ」
「そんなことはない。新たな剣士が育つってことは町にとって一番重要なことだ。それにこうして受け継がれていくものなんだよ」

 エールタインは空き家をすっかり気に入ったようだ。
 それもそうであろう。
 上級剣士が長年使っていた家だ。
 経験の浅い剣士にしてみれば文句の付け所が無いはず。

「この家を使いこなす頃には上級剣士になっているだろう」

 いつの間にかヨハナが家の状況を確認しにあちこち見回っていた。
 それを見つけたエールタインが声を掛ける。

「ヨハナ、ちょっと大変になるけどこれからもよろしくね」
「むしろこちらがよろしくお願いしますと言うところですよ」

 ヨハナは申し訳なさそうにするエールタインに向けて笑顔を見せる。

「どちらかに泊まりながらこなすことも出来ますし。しっかりお手伝いするためにも無理はしません」

 ダンもヨハナの言葉にうなずく。

「泊まりながらってのはいい考えだな。それなら俺の心配も軽くなる」

 ダンの後に続いてヘルマが言う。

「ダン様は私がいますから大丈夫ですよ。そのためのデュオですから」
「そうね。私がお邪魔になってしまうものね」

 ヘルマが慌てて反論する。

「ち、ちがう! そういう意味ではなくてね、ダン様に付いているのは私だからという……」
「はいはい、分かっているわよ。何を慌てているの? 変なヘルマ」
「別に変じゃないから」

 いつの間にかエールタインの横にティベルダが来ていた。

「私を抜きにしてお話しないでください。エール様も私とのおうちなのですから一緒に見ましょうよ」
「ああごめんよ。とても素敵な家だからつい、ね」

 エールタインはティベルダの頭を撫でてあげる。
 むくれ顔になっていたティベルダは微笑みそうになるのを抑えながらむくれ顔を通した。

「ティベルダだって草原で遊んでいたでしょ。楽しかった?」
「はい! ダン様の家と景色が似ているので安心しました」
「だよね。ボクも同じだよ。おかげで暮らしやすそうだ」

 それぞれ話に花が咲いてしまって止まりそうにない。
 そこへダンが割って入った。

「さて。気に入ってくれたようだからアウフの所へ行こうか」

 エールタインに従者が付いた事、剣士昇格に新居への引っ越し報告。
 魔獣討伐やティベルダの能力のことなど、アウフリーゲンに伝えることは山ほどある。
 ダン家の五人はそのまま墓参りに向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

処理中です...