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第二章 剣士となりて
第二話 二人の時間
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Szene-01 ダン家、エールタインの部屋
剣士の証石を受け取った夜。
エールタインは証石をヨハナが作っておいた革製袋に入れて、巻き置きしたストールの真ん中に置いた。
寝床では二人の少女がゆったりとした雰囲気の中で話をしていた。
主人と従者が一緒に寝るスタイル。
いつもの夜だ。
「ふふふ。あの時のエール様、可愛かったですー」
「もう言わないって約束したよね、まだ言うの?」
向き合い、それぞれが互いの触りたい所に触れながらのお話し。
エールタインが初めは躊躇していたティベルダからの好意。
今では無くてはならないものになっているようで。
二人きりならば恥ずかしがることも無くなりつつあった。
「二人暮らしするんですね」
「今まで経験無かったことばかり。剣士になるって凄いことなんだなって実感してる」
ティベルダがエールタインの頬を撫でる。
「私、少しでもエール様のお役に立てるよう頑張りますね」
「ティベルダ……頑張らなくていいんだ」
頬を撫で返しながらエールタインは続ける。
「ティベルダが言っていたでしょ? いつまでも一緒にいられるよう無事に過ごすだけでいい」
ティベルダの目がオレンジに変わる。
互いに頬を撫でる手を止めない。
「ご主人様の頬を撫でられるなんて思わなかったです。奴隷になれて良かったとさえ思えてしまう……」
「ボクが奴隷とは思っていないからね。大事な相棒で家族。それに、ティベルダって可愛くてしょうがないんだよ」
オレンジ色の瞳で主人の目を見つめるティベルダ。
エールタインの様子が変わってゆく。
「なんだか手が温かくなってきたよ。それに、あれ……目まで温かく……なってきた……よ」
ティベルダの送るヒールは瞳からも送られているようだ。
エールタインはティベルダの目を見つめたまま目線を外せない。
「エール様が私を可愛がるからいけないんですよお。もう私しか見ちゃいけませんからねー」
力が抜けていくのか、ティベルダの頬からエールタインの手が離れる。
徐々にティベルダの瞳は紫色に変わる。
「ふふ。こんな素敵な人に出会えた上にこの人のモノになれただなんて。あは。あなたは私のもの」
ティベルダは口角を上げて一人つぶやき続ける。
「本当にきれいな人。剣士になったのですから女性であることを隠すのやめませんか?」
エールタインは何かを言おうとしているが、声を出せない様子。
ティベルダは構わず続ける。
「ヘルマさん、素敵だったじゃないですか。ルイーサ様も隠してはいません」
突然眉間にしわを寄せてムッとするティベルダ。
「ルイーサ様は要注意ですね。エール様のことを狙っている。私が守りますからね、エール様」
そう言ってエールタインに口づけをする。
エールタインはなす術もない様子で、ティベルダを見つめたままだ。
ティベルダはそんな主人を見て満足気。
「さあ、このまま眠りましょう。夢の中でも二人きりですよ」
主人を優しく抱きしめて眠りに入るティベルダ。
エールタインも自然に瞼を閉じてゆく。
目の色を紫にしたティベルダには逆らう事が不可能なようだ。
Szene-02 ドミニク家、ルイーサの部屋
エールタイン達と同じく、剣士と剣士級に昇格した見習い二人がいる。
ルイーサとヒルデガルドだ。
父であり師匠でもあるドミニクから証石を受け取ったルイーサ。
自室でヒルデガルドと二人の時間を過ごしている。
「受け取る時、珍しく冗談を言われたのかと思ったわ」
「ドミニク様は冗談を言われるような方ではないです」
「だから驚いたの。これでもあの人の娘ですから、よく分かっているわよ」
座っているルイーサの膝にアムレットが乗った。
ルイーサの持っているブラック・サファイアに両前足を伸ばしている。
「あら、見たいの? 木の実ではないから食べたらだめよ」
ルイーサはアムレットに証石を渡す。
アムレットは持ったままジッとしてしまった。
それを見てヒルデガルドが言う。
「証石には魔獣が変化した光石が入っているので気になるとは思うのですが……」
ルイーサはアムレットの背中を撫でてみるが動く気配がない。
「もしかしたら光石から出ている力が強すぎるのかもしれないです」
「それって危なくない? アムレット、石を離しなさい」
ルイーサはアムレットから証石を取り上げた。
しばし持った格好のままじっとしていたアムレットがゆっくりと動き出した。
「あなたには毒のようね。良い効果があったらいいのに」
「証石の中の光石はたいてい中型魔獣以上のもの。小型のアムレットにとっては天敵だらけですから」
ヒルデガルドは首を傾げて続ける。
「なのになぜ見たくなったのかしら」
「私が珍しそうに見ていたから? それなら可愛いわね」
ルイーサは証石を少し離れたところに置いてアムレットを掌に乗せる。
「あなたは大事な子なの。主のすることが気になるのは可愛いけれど、危険を感じたら避けなさい。いつまでも撫でさせて」
「アムレットはずるいです。私だっていつまでも撫でて欲しい……」
ルイーサは素早くヒルデガルドを見て言った。
「あなたって子は……何度言ったら分かるの? 大好きよ! だから毎日抱きしめて寝ているのに」
プイッとそっぽを向いてしまったルイーサ。
ヒルデガルドは少々焦りを感じたのかルイーサに謝る。
「すみません……少しアムレットに嫉妬を感じてしまって」
「そういうところ、可愛いから許すわ。あなたは言うまでもなく私のそばにいつまでもいなさい」
「はい、でもルイーサ様のお声でその言葉を聞きたい、です」
ルイーサは大袈裟にため息をついてみせる。
「これからは二人だけで暮らすようになるのよ」
ルイーサはアムレットの尻尾を撫でながら続ける。
「頼まれなくても私は言うわよ。そろそろ主人に余計な事を言わせないようにしてね」
ヒルデガルドは胸の前で両手を握り、うっとりとした眼差しで主人を見つめる。
見つめられているルイーサの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
剣士の証石を受け取った夜。
エールタインは証石をヨハナが作っておいた革製袋に入れて、巻き置きしたストールの真ん中に置いた。
寝床では二人の少女がゆったりとした雰囲気の中で話をしていた。
主人と従者が一緒に寝るスタイル。
いつもの夜だ。
「ふふふ。あの時のエール様、可愛かったですー」
「もう言わないって約束したよね、まだ言うの?」
向き合い、それぞれが互いの触りたい所に触れながらのお話し。
エールタインが初めは躊躇していたティベルダからの好意。
今では無くてはならないものになっているようで。
二人きりならば恥ずかしがることも無くなりつつあった。
「二人暮らしするんですね」
「今まで経験無かったことばかり。剣士になるって凄いことなんだなって実感してる」
ティベルダがエールタインの頬を撫でる。
「私、少しでもエール様のお役に立てるよう頑張りますね」
「ティベルダ……頑張らなくていいんだ」
頬を撫で返しながらエールタインは続ける。
「ティベルダが言っていたでしょ? いつまでも一緒にいられるよう無事に過ごすだけでいい」
ティベルダの目がオレンジに変わる。
互いに頬を撫でる手を止めない。
「ご主人様の頬を撫でられるなんて思わなかったです。奴隷になれて良かったとさえ思えてしまう……」
「ボクが奴隷とは思っていないからね。大事な相棒で家族。それに、ティベルダって可愛くてしょうがないんだよ」
オレンジ色の瞳で主人の目を見つめるティベルダ。
エールタインの様子が変わってゆく。
「なんだか手が温かくなってきたよ。それに、あれ……目まで温かく……なってきた……よ」
ティベルダの送るヒールは瞳からも送られているようだ。
エールタインはティベルダの目を見つめたまま目線を外せない。
「エール様が私を可愛がるからいけないんですよお。もう私しか見ちゃいけませんからねー」
力が抜けていくのか、ティベルダの頬からエールタインの手が離れる。
徐々にティベルダの瞳は紫色に変わる。
「ふふ。こんな素敵な人に出会えた上にこの人のモノになれただなんて。あは。あなたは私のもの」
ティベルダは口角を上げて一人つぶやき続ける。
「本当にきれいな人。剣士になったのですから女性であることを隠すのやめませんか?」
エールタインは何かを言おうとしているが、声を出せない様子。
ティベルダは構わず続ける。
「ヘルマさん、素敵だったじゃないですか。ルイーサ様も隠してはいません」
突然眉間にしわを寄せてムッとするティベルダ。
「ルイーサ様は要注意ですね。エール様のことを狙っている。私が守りますからね、エール様」
そう言ってエールタインに口づけをする。
エールタインはなす術もない様子で、ティベルダを見つめたままだ。
ティベルダはそんな主人を見て満足気。
「さあ、このまま眠りましょう。夢の中でも二人きりですよ」
主人を優しく抱きしめて眠りに入るティベルダ。
エールタインも自然に瞼を閉じてゆく。
目の色を紫にしたティベルダには逆らう事が不可能なようだ。
Szene-02 ドミニク家、ルイーサの部屋
エールタイン達と同じく、剣士と剣士級に昇格した見習い二人がいる。
ルイーサとヒルデガルドだ。
父であり師匠でもあるドミニクから証石を受け取ったルイーサ。
自室でヒルデガルドと二人の時間を過ごしている。
「受け取る時、珍しく冗談を言われたのかと思ったわ」
「ドミニク様は冗談を言われるような方ではないです」
「だから驚いたの。これでもあの人の娘ですから、よく分かっているわよ」
座っているルイーサの膝にアムレットが乗った。
ルイーサの持っているブラック・サファイアに両前足を伸ばしている。
「あら、見たいの? 木の実ではないから食べたらだめよ」
ルイーサはアムレットに証石を渡す。
アムレットは持ったままジッとしてしまった。
それを見てヒルデガルドが言う。
「証石には魔獣が変化した光石が入っているので気になるとは思うのですが……」
ルイーサはアムレットの背中を撫でてみるが動く気配がない。
「もしかしたら光石から出ている力が強すぎるのかもしれないです」
「それって危なくない? アムレット、石を離しなさい」
ルイーサはアムレットから証石を取り上げた。
しばし持った格好のままじっとしていたアムレットがゆっくりと動き出した。
「あなたには毒のようね。良い効果があったらいいのに」
「証石の中の光石はたいてい中型魔獣以上のもの。小型のアムレットにとっては天敵だらけですから」
ヒルデガルドは首を傾げて続ける。
「なのになぜ見たくなったのかしら」
「私が珍しそうに見ていたから? それなら可愛いわね」
ルイーサは証石を少し離れたところに置いてアムレットを掌に乗せる。
「あなたは大事な子なの。主のすることが気になるのは可愛いけれど、危険を感じたら避けなさい。いつまでも撫でさせて」
「アムレットはずるいです。私だっていつまでも撫でて欲しい……」
ルイーサは素早くヒルデガルドを見て言った。
「あなたって子は……何度言ったら分かるの? 大好きよ! だから毎日抱きしめて寝ているのに」
プイッとそっぽを向いてしまったルイーサ。
ヒルデガルドは少々焦りを感じたのかルイーサに謝る。
「すみません……少しアムレットに嫉妬を感じてしまって」
「そういうところ、可愛いから許すわ。あなたは言うまでもなく私のそばにいつまでもいなさい」
「はい、でもルイーサ様のお声でその言葉を聞きたい、です」
ルイーサは大袈裟にため息をついてみせる。
「これからは二人だけで暮らすようになるのよ」
ルイーサはアムレットの尻尾を撫でながら続ける。
「頼まれなくても私は言うわよ。そろそろ主人に余計な事を言わせないようにしてね」
ヒルデガルドは胸の前で両手を握り、うっとりとした眼差しで主人を見つめる。
見つめられているルイーサの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
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