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第二章 剣士となりて
第十五話 近隣国の女王
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Szene-01 カシカルド王国、カシカルド城内王室
レアルプドルフから西のトゥサイ村を抜けると険しい山岳地帯がある。
東西街道はこの山岳地帯の峠を越えて、カシカルド王国内へと入っていく。
王国に所属する数々の町や村を抜けていくと再び標高が上がり、しばし丘が続く。
丘の先には新たな山岳地帯が現れるが、その手前に山を背にする地味な城が立っている。
その城――カシカルド城にはカシカルド王国を治める女王、ローデリカが居住する。
「陛下、人材調査員からの一報が入りました」
王室付きの秘書官がローデリカに伝える。
やたらと豪華な椅子に脚を組んで座り、膝に肘を当てて頬杖をついているローデリカ。
つまらなさそうに秘書官へ問う。
「……一報。そろそろ面白い情報が届いても良いだろうに」
内勤が似合わない体格の良さが目立つ秘書官は、これまでの報告時とは違って声に張りがあった。
「レアルプドルフに面白い見習い剣士がいるとのこと。最近、剣士に昇格をしたとか」
ローデリカは姿勢を変えずに聞き返す。
「レアルプドルフだと!? スクリアニア公国とやり合った……」
「はい」
「小さな剣士の町だが良い所だ」
最近では珍しく褒め言葉を出したローデリカ。
秘書官は少し驚きつつ言う。
「よくご存じのようですね」
「ふっ、優秀な剣士がいたのだよ」
ローデリカは何かを思い出すように王室の奥へ目をやった。
そこで王室の扉が叩かれる。
「入れ」
ローデリカの許しを得て、王室付きの侍女がティーを運んできた。
ティー専用と化した小ぶりのテーブルに静かに置く侍女。
その動きを一切気にせずに女王と秘書官の話は続く。
「スクリアニアを退けた英雄の子がその剣士らしいのです」
「英雄だと!?」
興味を持ったような返事をするが、姿勢は変わらないローデリカ。
秘書官もそのまま報告を続ける。
「さらに英雄と同じく戦いで活躍したとされる父を持つ女剣士もいると」
秘書官は、黙って聞き続けるローデリカの様子をチラ見して話を続ける。
「その二人が見習いでありながら協力して大型魔獣を討伐したそうです。さらにトゥサイ村の賊に拉致された際、剣士付きの奴隷が能力を使い賊を仕留めたとか」
「奴隷が能力? それも仕留めたと。ふっ、ようやく面白い一報が届いたではないか」
「喜んでいただけて何よりです」
ローデリカは脚を組み替えるが頬杖は続けた。
「で、いつここへ来る?」
「いえ、報告はこれまでです」
ローデリカはティーを一口飲むと、秘書官にカップを投げつけた。
秘書官は反射的にカップを受け止めてしまう。
「馬鹿者! なぜ受け取る」
「話はそちらですか」
「それは聞き捨てろ。その剣士を早く寄こせ」
「人材調査員にはすでに指示していますので、お待ちを」
「私を待たすな。無駄が嫌いなことは重々分かっているはずだ」
秘書官は一礼をして王室を出てゆく。
「もう一手が足らんのだよ、あいつは。英雄……子供が剣士になったか。それだけ時も経ったということだな。彼の子供か。会いたい、会って話がしたい」
ローデリカは立ち上がり、王室の窓から外を眺める。
景色を見ながら王室の外で待機している侍女に向けて言う。
「床が汚れた。あと、私も身綺麗にしたい」
「かしこまりました」
扉の外から侍女の返事が聞こえる。
王室付きの侍女が抱える女中数名に指示を出す。
「あれから十年。各国がそろそろ動き出す頃……か」
踵を返し、室内に入ってきた王室付き侍女の元へ寄る。
侍女が王室を出るよう手を廊下へと指す。
歩き出した侍女についてゆくローデリカは固まっていた表情を久々に和らげた。
レアルプドルフから西のトゥサイ村を抜けると険しい山岳地帯がある。
東西街道はこの山岳地帯の峠を越えて、カシカルド王国内へと入っていく。
王国に所属する数々の町や村を抜けていくと再び標高が上がり、しばし丘が続く。
丘の先には新たな山岳地帯が現れるが、その手前に山を背にする地味な城が立っている。
その城――カシカルド城にはカシカルド王国を治める女王、ローデリカが居住する。
「陛下、人材調査員からの一報が入りました」
王室付きの秘書官がローデリカに伝える。
やたらと豪華な椅子に脚を組んで座り、膝に肘を当てて頬杖をついているローデリカ。
つまらなさそうに秘書官へ問う。
「……一報。そろそろ面白い情報が届いても良いだろうに」
内勤が似合わない体格の良さが目立つ秘書官は、これまでの報告時とは違って声に張りがあった。
「レアルプドルフに面白い見習い剣士がいるとのこと。最近、剣士に昇格をしたとか」
ローデリカは姿勢を変えずに聞き返す。
「レアルプドルフだと!? スクリアニア公国とやり合った……」
「はい」
「小さな剣士の町だが良い所だ」
最近では珍しく褒め言葉を出したローデリカ。
秘書官は少し驚きつつ言う。
「よくご存じのようですね」
「ふっ、優秀な剣士がいたのだよ」
ローデリカは何かを思い出すように王室の奥へ目をやった。
そこで王室の扉が叩かれる。
「入れ」
ローデリカの許しを得て、王室付きの侍女がティーを運んできた。
ティー専用と化した小ぶりのテーブルに静かに置く侍女。
その動きを一切気にせずに女王と秘書官の話は続く。
「スクリアニアを退けた英雄の子がその剣士らしいのです」
「英雄だと!?」
興味を持ったような返事をするが、姿勢は変わらないローデリカ。
秘書官もそのまま報告を続ける。
「さらに英雄と同じく戦いで活躍したとされる父を持つ女剣士もいると」
秘書官は、黙って聞き続けるローデリカの様子をチラ見して話を続ける。
「その二人が見習いでありながら協力して大型魔獣を討伐したそうです。さらにトゥサイ村の賊に拉致された際、剣士付きの奴隷が能力を使い賊を仕留めたとか」
「奴隷が能力? それも仕留めたと。ふっ、ようやく面白い一報が届いたではないか」
「喜んでいただけて何よりです」
ローデリカは脚を組み替えるが頬杖は続けた。
「で、いつここへ来る?」
「いえ、報告はこれまでです」
ローデリカはティーを一口飲むと、秘書官にカップを投げつけた。
秘書官は反射的にカップを受け止めてしまう。
「馬鹿者! なぜ受け取る」
「話はそちらですか」
「それは聞き捨てろ。その剣士を早く寄こせ」
「人材調査員にはすでに指示していますので、お待ちを」
「私を待たすな。無駄が嫌いなことは重々分かっているはずだ」
秘書官は一礼をして王室を出てゆく。
「もう一手が足らんのだよ、あいつは。英雄……子供が剣士になったか。それだけ時も経ったということだな。彼の子供か。会いたい、会って話がしたい」
ローデリカは立ち上がり、王室の窓から外を眺める。
景色を見ながら王室の外で待機している侍女に向けて言う。
「床が汚れた。あと、私も身綺麗にしたい」
「かしこまりました」
扉の外から侍女の返事が聞こえる。
王室付きの侍女が抱える女中数名に指示を出す。
「あれから十年。各国がそろそろ動き出す頃……か」
踵を返し、室内に入ってきた王室付き侍女の元へ寄る。
侍女が王室を出るよう手を廊下へと指す。
歩き出した侍女についてゆくローデリカは固まっていた表情を久々に和らげた。
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