ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

文字の大きさ
166 / 218
第四章 ボクたちの町

第十二話 救援へ

しおりを挟む
Szene-01 レアルプドルフ、ブーズ西門

 エールタイン組とルイーサ組の四人がブーズの西門に到着すると、門番は迷いなく門を開けて四人を通した。エールタインは門番にブーズの状況を尋ねる。

「門の番、お疲れ様です。連絡が届いたのだけど、ザラさんは無事ですか?」
「ザラさん、ですか? ザラって――あのザラで?」
「うん。その様子だとまだ情報が届いていないみたいだね」

 エールタインが門番と話している所へ、レアルプドルフ東地区――ブーズの区長が現れた。

「エールタイン様、ルイーサ様。こちらはスクリアニア側からリスが森の中を駆け抜けていったという情報しかありません。ザラのことなのですか?」

 エールタインの耳に区長の声が届く。振り返って挨拶のように情報を伝えた。

「区長さん、お疲れ様です。ええ、ザラさんのことなのですが、情報によると城を出たみたいです」
「なんと!」
「ザラさんが逃げる場所と言ったらブーズしかないでしょう。それでボクたちは急いで来ました」

 区長は近くにいた若い男性に指示を出す。

「すぐ班に伝えてください。ザラさんの救援に向かうようにと」
「ではボクたちはこのまま森へ行きます。ルイーサ、いい?」

 エールタインから突然名前を呼ばれて少し体をびくつかせたルイーサだが、平静を装って答えを返した。

「もちろんいいわ。ただ一つだけお願いよ、エールタイン。前には出過ぎないようにして」
「あーうん、わかった。もし出過ぎてしまいそうだったら――」
「言われなくても気づけば止めるわよ。ただね、止められるまで出来ると思ってしまうと、人はやってしまうものだから。意識は持って欲しいのよ」

 エールタインは珍しく、耳の上をなぞるように髪をかきあげて言う。

「はーい。ルイーサは師匠みたいだ」
「師匠って……そういう関係になりたいのではなくてね、その――」

 ルイーサは鋭い視線とヒルデガルドに袖を掴まれたことで言葉を止めたが、振り切って続ける。

「だから、あなたとはお付き合い――」
「あー」
「特別な」
「あーあー」
「何よ」

 ルイーサは、言葉を発する度に邪魔をするティベルダに向けて問うが、ティベルダは鋭い目つきでルイーサをじっと睨み、牙でも出しそうな威嚇顔をしている。

「ティベルダ、今のあなたの顔ではエールタインが逃げてしまうわよ」
「ご心配なく! エール様は私から離れませんから!」

 ティベルダの発言にブーズの民が固まった。区長は大きくため息をついてうな垂れる。

「これ、ティベルダ。ご主人様に失礼です。離れてはならないのはティベルダ、あなたなのですよ。従者だということを忘れてはいけません」

 今度は区長の言葉にティベルダが固まった。まさか区長から叱られるとは思っていなかったのであろう。不意を突かれたようで絶句して立ち尽くす。
 エールタインはティベルダの頭を抱き寄せて、注目している者たちに言った。

「ごめんなさい、許してあげて。この子は日頃からボクが離れて行きそうな気がしているから、この手の話しには弱いんだ」
「エールタイン、私こそごめんなさい。うっかりティベルダを弄ってしまったわ。まったく、上級剣士に上がって早々何をやっているのかしらね――」

 片手で頭を抱えながら首を左右に振るルイーサの横で、ヒルデガルドが口を開いた。

「ティベルダ、ヴォルフたちに協力してもらうから私と一緒に行きましょう。エールタイン様、ヴォルフを連れて来てもよろしいですか?」

 ヒルデガルドの言葉にエールタインはハッとして目を開いた。

「ヒルデガルド、お願いね。寧ろヴォルフたちにはこういう時のために来てもらっているんだから。ふう――余計なお話をしてしまったけど、ザラさんの元へ急ごう。区長――」
「わかっていますよ、私の仕事ですからね。私もこういう時のためにいるようなものですから、はっはっは」

 エールタインがティベルダの手を取って東門へ振り向きながら、ルイーサに声を掛ける。

「行こう、ルイーサ」
「ええ」

 ルイーサはエールタインと同じ様にヒルデガルドの手を握って言った。

「ヒルデ、私――」
「ルイーサ様、今はザラ様のことを考えましょう。お話は後でいくらでもお聞きしますから」

 ヒルデガルドは自分を引っ張っていくようにルイーサの手をクイクイっと二度引いた。
 ルイーサはヒルデガルドの手をぎゅっと握り、エールタインを追う。付いてゆくヒルデガルドはにこりと微笑み、肩に乗っているアムレットはヒルデガルドの防具端を掴んで前を向いた。

「うんうん、いいじゃないですか。うちの子たちは剣士様のお役に立っているようだ」

 区長は二組のデュオを見送りながら両手を叩いてその場にいる民に言う。

「さあ、うちの子を迎える準備をしましょう」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

処理中です...