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第四章 ボクたちの町
第十二話 救援へ
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Szene-01 レアルプドルフ、ブーズ西門
エールタイン組とルイーサ組の四人がブーズの西門に到着すると、門番は迷いなく門を開けて四人を通した。エールタインは門番にブーズの状況を尋ねる。
「門の番、お疲れ様です。連絡が届いたのだけど、ザラさんは無事ですか?」
「ザラさん、ですか? ザラって――あのザラで?」
「うん。その様子だとまだ情報が届いていないみたいだね」
エールタインが門番と話している所へ、レアルプドルフ東地区――ブーズの区長が現れた。
「エールタイン様、ルイーサ様。こちらはスクリアニア側からリスが森の中を駆け抜けていったという情報しかありません。ザラのことなのですか?」
エールタインの耳に区長の声が届く。振り返って挨拶のように情報を伝えた。
「区長さん、お疲れ様です。ええ、ザラさんのことなのですが、情報によると城を出たみたいです」
「なんと!」
「ザラさんが逃げる場所と言ったらブーズしかないでしょう。それでボクたちは急いで来ました」
区長は近くにいた若い男性に指示を出す。
「すぐ班に伝えてください。ザラさんの救援に向かうようにと」
「ではボクたちはこのまま森へ行きます。ルイーサ、いい?」
エールタインから突然名前を呼ばれて少し体をびくつかせたルイーサだが、平静を装って答えを返した。
「もちろんいいわ。ただ一つだけお願いよ、エールタイン。前には出過ぎないようにして」
「あーうん、わかった。もし出過ぎてしまいそうだったら――」
「言われなくても気づけば止めるわよ。ただね、止められるまで出来ると思ってしまうと、人はやってしまうものだから。意識は持って欲しいのよ」
エールタインは珍しく、耳の上をなぞるように髪をかきあげて言う。
「はーい。ルイーサは師匠みたいだ」
「師匠って……そういう関係になりたいのではなくてね、その――」
ルイーサは鋭い視線とヒルデガルドに袖を掴まれたことで言葉を止めたが、振り切って続ける。
「だから、あなたとはお付き合い――」
「あー」
「特別な」
「あーあー」
「何よ」
ルイーサは、言葉を発する度に邪魔をするティベルダに向けて問うが、ティベルダは鋭い目つきでルイーサをじっと睨み、牙でも出しそうな威嚇顔をしている。
「ティベルダ、今のあなたの顔ではエールタインが逃げてしまうわよ」
「ご心配なく! エール様は私から離れませんから!」
ティベルダの発言にブーズの民が固まった。区長は大きくため息をついてうな垂れる。
「これ、ティベルダ。ご主人様に失礼です。離れてはならないのはティベルダ、あなたなのですよ。従者だということを忘れてはいけません」
今度は区長の言葉にティベルダが固まった。まさか区長から叱られるとは思っていなかったのであろう。不意を突かれたようで絶句して立ち尽くす。
エールタインはティベルダの頭を抱き寄せて、注目している者たちに言った。
「ごめんなさい、許してあげて。この子は日頃からボクが離れて行きそうな気がしているから、この手の話しには弱いんだ」
「エールタイン、私こそごめんなさい。うっかりティベルダを弄ってしまったわ。まったく、上級剣士に上がって早々何をやっているのかしらね――」
片手で頭を抱えながら首を左右に振るルイーサの横で、ヒルデガルドが口を開いた。
「ティベルダ、ヴォルフたちに協力してもらうから私と一緒に行きましょう。エールタイン様、ヴォルフを連れて来てもよろしいですか?」
ヒルデガルドの言葉にエールタインはハッとして目を開いた。
「ヒルデガルド、お願いね。寧ろヴォルフたちにはこういう時のために来てもらっているんだから。ふう――余計なお話をしてしまったけど、ザラさんの元へ急ごう。区長――」
「わかっていますよ、私の仕事ですからね。私もこういう時のためにいるようなものですから、はっはっは」
エールタインがティベルダの手を取って東門へ振り向きながら、ルイーサに声を掛ける。
「行こう、ルイーサ」
「ええ」
ルイーサはエールタインと同じ様にヒルデガルドの手を握って言った。
「ヒルデ、私――」
「ルイーサ様、今はザラ様のことを考えましょう。お話は後でいくらでもお聞きしますから」
ヒルデガルドは自分を引っ張っていくようにルイーサの手をクイクイっと二度引いた。
ルイーサはヒルデガルドの手をぎゅっと握り、エールタインを追う。付いてゆくヒルデガルドはにこりと微笑み、肩に乗っているアムレットはヒルデガルドの防具端を掴んで前を向いた。
「うんうん、いいじゃないですか。うちの子たちは剣士様のお役に立っているようだ」
区長は二組のデュオを見送りながら両手を叩いてその場にいる民に言う。
「さあ、うちの子を迎える準備をしましょう」
エールタイン組とルイーサ組の四人がブーズの西門に到着すると、門番は迷いなく門を開けて四人を通した。エールタインは門番にブーズの状況を尋ねる。
「門の番、お疲れ様です。連絡が届いたのだけど、ザラさんは無事ですか?」
「ザラさん、ですか? ザラって――あのザラで?」
「うん。その様子だとまだ情報が届いていないみたいだね」
エールタインが門番と話している所へ、レアルプドルフ東地区――ブーズの区長が現れた。
「エールタイン様、ルイーサ様。こちらはスクリアニア側からリスが森の中を駆け抜けていったという情報しかありません。ザラのことなのですか?」
エールタインの耳に区長の声が届く。振り返って挨拶のように情報を伝えた。
「区長さん、お疲れ様です。ええ、ザラさんのことなのですが、情報によると城を出たみたいです」
「なんと!」
「ザラさんが逃げる場所と言ったらブーズしかないでしょう。それでボクたちは急いで来ました」
区長は近くにいた若い男性に指示を出す。
「すぐ班に伝えてください。ザラさんの救援に向かうようにと」
「ではボクたちはこのまま森へ行きます。ルイーサ、いい?」
エールタインから突然名前を呼ばれて少し体をびくつかせたルイーサだが、平静を装って答えを返した。
「もちろんいいわ。ただ一つだけお願いよ、エールタイン。前には出過ぎないようにして」
「あーうん、わかった。もし出過ぎてしまいそうだったら――」
「言われなくても気づけば止めるわよ。ただね、止められるまで出来ると思ってしまうと、人はやってしまうものだから。意識は持って欲しいのよ」
エールタインは珍しく、耳の上をなぞるように髪をかきあげて言う。
「はーい。ルイーサは師匠みたいだ」
「師匠って……そういう関係になりたいのではなくてね、その――」
ルイーサは鋭い視線とヒルデガルドに袖を掴まれたことで言葉を止めたが、振り切って続ける。
「だから、あなたとはお付き合い――」
「あー」
「特別な」
「あーあー」
「何よ」
ルイーサは、言葉を発する度に邪魔をするティベルダに向けて問うが、ティベルダは鋭い目つきでルイーサをじっと睨み、牙でも出しそうな威嚇顔をしている。
「ティベルダ、今のあなたの顔ではエールタインが逃げてしまうわよ」
「ご心配なく! エール様は私から離れませんから!」
ティベルダの発言にブーズの民が固まった。区長は大きくため息をついてうな垂れる。
「これ、ティベルダ。ご主人様に失礼です。離れてはならないのはティベルダ、あなたなのですよ。従者だということを忘れてはいけません」
今度は区長の言葉にティベルダが固まった。まさか区長から叱られるとは思っていなかったのであろう。不意を突かれたようで絶句して立ち尽くす。
エールタインはティベルダの頭を抱き寄せて、注目している者たちに言った。
「ごめんなさい、許してあげて。この子は日頃からボクが離れて行きそうな気がしているから、この手の話しには弱いんだ」
「エールタイン、私こそごめんなさい。うっかりティベルダを弄ってしまったわ。まったく、上級剣士に上がって早々何をやっているのかしらね――」
片手で頭を抱えながら首を左右に振るルイーサの横で、ヒルデガルドが口を開いた。
「ティベルダ、ヴォルフたちに協力してもらうから私と一緒に行きましょう。エールタイン様、ヴォルフを連れて来てもよろしいですか?」
ヒルデガルドの言葉にエールタインはハッとして目を開いた。
「ヒルデガルド、お願いね。寧ろヴォルフたちにはこういう時のために来てもらっているんだから。ふう――余計なお話をしてしまったけど、ザラさんの元へ急ごう。区長――」
「わかっていますよ、私の仕事ですからね。私もこういう時のためにいるようなものですから、はっはっは」
エールタインがティベルダの手を取って東門へ振り向きながら、ルイーサに声を掛ける。
「行こう、ルイーサ」
「ええ」
ルイーサはエールタインと同じ様にヒルデガルドの手を握って言った。
「ヒルデ、私――」
「ルイーサ様、今はザラ様のことを考えましょう。お話は後でいくらでもお聞きしますから」
ヒルデガルドは自分を引っ張っていくようにルイーサの手をクイクイっと二度引いた。
ルイーサはヒルデガルドの手をぎゅっと握り、エールタインを追う。付いてゆくヒルデガルドはにこりと微笑み、肩に乗っているアムレットはヒルデガルドの防具端を掴んで前を向いた。
「うんうん、いいじゃないですか。うちの子たちは剣士様のお役に立っているようだ」
区長は二組のデュオを見送りながら両手を叩いてその場にいる民に言う。
「さあ、うちの子を迎える準備をしましょう」
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