ストーカー属性ヤンデレヒーローと俺様属性ヤンデレヒーローどちらを選びますか?R18

りこりー

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第一章

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 夜会は終盤。ダンスの時間になり、ファーストダンスはアレキサンダーと踊る。煌びやかな二人のダンスに自然と拍手が起こった。終わりのお辞儀をすると割れんばかりの歓声と拍手がしばらく続いた。

「次は俺と踊って頂けますか?お嬢様」

「ルークと?何故?」

 何故と言う言葉にルークが眉を顰める。そんな顔しても、貴方は婚約者候補に居ないのよと言いかけたが、あの熱っぽい視線を向けられるとどうにも断れなかった。

 ルークの手を取り、ダンスを踊り始めるとそんなに密着するダンスでもないのにぴったりと体を合わせて来て、物凄く恥ずかしくて顔から火が出そうなほどだった。それをまた楽しそうにみるルークに腹が立った。

「ルーク、意地悪してるわね」

「いえ、してません。お嬢様が転ばないようにしているだけでございます」

「護衛騎士、イアンに戻すわよ」

 ピクリと肩が跳ね、急に顔色が悪くなるルーク。仕返ししてやったと思わず笑みが零れた。

「お嬢様の方が意地悪ですね」

 眉を下げたルークにまたルーナの笑顔が零れる。笑顔が零れる度にルークも微笑むから、周囲からはあの無表情の鉄壁護衛騎士が笑ってるぞと驚きの声が上がる。

「ふふっ、ルークって鉄壁護衛騎士って呼ばれているの?」

「さぁ、俺は気にしたことがないので」

「なにそれ、変なのっ」

 仲良さげにダンスする二人に周囲からはあの二人が婚約するのでは?とざわつき始めた。それを見ていたアレキサンダーもルークを婚約者にした方がいいだろうかと悩むほどだった。しかし、決めるのはルーナだと沈黙を貫いた。

 ルークとのダンスが終わるとお辞儀してすぐに目の前が黒くなった。正確にいえば、エドワードのタキシードの黒い色一色になった。

「マルティネス公爵令嬢、次に踊る栄誉を俺に!」

「さっきの…ふふ、そんな慌てなくても…是非に」

 額の汗を拭うこともせず、必死に駆け寄ってきたのだろう。また出された手は震えていた。愛らしいその顔はまるで捨て犬のようで庇護欲をそそるものだった。迷うことなくルーナが手を握ると二人は踊り出す。

 傍には、怒りに燃えたルークが居た。今にも歯ぎしりが聞こえそうだし、踊る二人には届かないだろうが、周囲は何故だかひんやりとした空気が漂った。

「成金風情が…」

 ぼそりと呟くとルーナが見える壁際にルークは移動した。真っ白な手袋が、握りしめる掌でほんのりと赤く色づいてゆく。

 ずっとルーナを見ていると、エドワードとルークの目が合った。しかし、エドワードは何も気にせず再びルーナを見つめた。それが余計にルークの嫉妬心に火をつけて、より一層手袋を赤く染めるのだった。

「エドワード様、ステップが上手ですね」

「ありがとうございます、練習したかいがあります」

「とても踊りやすいです」

「是非、エドと呼んでください」

「えっと…はい。私もルナと呼んで頂きたいです」

「ルナ…あぁ、嬉しいです!」

 にこにこと笑うルーナに本当は足がガタガタしていて、全然集中出来ないと情けなくて言えない。一生懸命踊りつつ、祝福を使うのはとても大変だった。ルーナが口を開くたびに妖しく光る緑色の瞳。それをルーナは綺麗だと思っていた。ルーナが恍惚とした表情を見せるとエドワードは勝ったと心底嬉しかった。自分の祝福を女性に初めて使ったが、こんな表情になるなんて…しかも、自分が生まれて初めて好きになった相手に。魅了とは違い、好感を得る程度の能力だが、彼女は自分を少しでも好きになってくれるならこんなに嬉しいことはない。

 他所から見ていたルークは、二人の会話は聞こえなかったが嫌な予感がしていた。


 あんな彼女の表情は見たことがない___。
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