ストーカー属性ヤンデレヒーローと俺様属性ヤンデレヒーローどちらを選びますか?R18

りこりー

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第二章

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 その夜、エドワードは公爵家へ帰ってきた。その体からは知らないきつい香水の匂いがして、酷く傷ついた。眉間に皺を寄せるとエドワードは何故だか嬉しそうだった。信じられない、婚約の取り決めを忘れたのだろうか。

「ルナ、ただいま。遅くなってごめん。大丈夫だったかい?」

「だ、大丈夫」

 あまりの衝撃にどもってしまうとこれまた嬉しそうにエドワードはルナの額に口付けを落として、本当?と笑顔で言うのだ。その笑顔が怖くて思わず身を引いてしまう。

「明日は陛下主催のお茶会だったね、今日は早く眠ろう」

「えぇ、そうね」

 口付けをされても自分の心は晴れない。そして、胸の高鳴りも身を顰めてどこかに行ってしまったようだ。

 部屋に戻って、明日のお茶会の準備をしながら、ふいに鏡を見て思った。何故こんなにも髪を伸ばして顔を隠しているのだろう。何故彼の言う事をビクビクしながら聞かないといけないのだろう。馬鹿馬鹿しい、ふとそう思ったのだ。

「アナ、貴方、髪は切れる?」

「えぇ、弟や妹の髪は私が切っていますが…」

「ハサミ持ってきて」

 アナは何かを察したのか、嬉しそうにハサミを持ってきて、ルーナの前髪を切り始めた。よく出来た侍女ねと褒めると満面の笑顔で勿体ないと前髪を切りそろえた。

 久しぶり見た自分の顔にこんなに白かったっけ?と不思議な感覚だった。前髪で隠していたから日焼けしなかったのだろう。

「う、美しいです…お嬢様っ!」

「あはは、ありがとう。アナ」

 夜着を身に纏い、寝るわというとアナはいまだにウキウキしながらお休みなさいませと出て行った。アナが温めてくれたベットはすぐに眠気を誘った。

 酷く辛かったはずなのにこんなすぐ眠れるなんて、エドワードの事は本当に好きじゃなかったのかしら?と思う。けど、裏切られたという感情が込みあがるとズキズキと胸が痛むから好きという気持ちはあったんだと思う。しかし、もう枯れてしまったんだと思う。愛情は与えてもらえないと枯れるのねと深い夢の中へ入って行った。


 _________________________



「なんだその髪は!?」

「気分転換です、前も見にくいですし」

「なんだと!?俺が嫌な思いをしてもいいって言うのか!?」

 お茶会に行くために玄関へ向かってエドワードに会うと、彼はルーナの顔を見てワナワナと怒りに震えていた。顔を隠すのは、他の男が君を見るのが耐えられないと彼が言うからだった。だけど、知るもんか。前が見にくいし、今日は陛下であるオスカーも来るのだ。絶対に心配される。

「陛下と父は旧知の仲だと知っていますよね?もし、あの姿を見れば父に連絡がいき、責められるのはエドワード様かと思いまして」

「…なんでそんな話し方するんだ?ルナ?」

「理由ならエドワード様がご存じでは?」

「昨日の事か?」

「…………」

「そうか、可愛いな、ルナ。大丈夫だ、彼女とはただの幼馴染だよ?機嫌を直して?」

 何か勘違いしているが、誤解している方が都合がいいので放置することにした。ちらっと傍にいるルークを見ると相も変わらずの無表情に徹していた。良かったと微笑むと驚いたようで目を見開いた後に笑顔を返してくれた。
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