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第一章
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「ただいま」
仕事終えた私は真っ暗な家に帰る。弟の雄哉は高校三年で今受験で一番大事な時期だ。まだ起きていた雄哉に帰宅を伝えるが、机の蛍光灯を付けて真剣に勉強しているのか、ガリガリとシャーペンの音だけが響く。集中するためにヘッドホンをしているのでこちらの声は聞こえていないみたいだ。
母は…かれこれ三か月は帰ってきていない。最後は、外人の恋人を連れていたから海外に行っているのかもしれない。雄哉の大学の費用なんてすっかり頭にないんだろうなと我が親ながらクズだなと思う。
キャバクラで稼いだお金と昼間のバイトで、どうにか雄哉の大学の初期費用くらいはどうにか届きそう。父は違うだろうけど、私は五歳離れた雄哉が可愛くて仕方なかった。
最近じゃ憎たらしく生意気になってしまったけれど、ずっとねぇちゃんと後ろをくっついてくる弟がとても可愛くて、目に入れても本当に痛くないんじゃないかって思う。弟の為にも、もう少し頑張らなければと思うとやる気が出てくるから不思議だ。
「あ、今日はサバの味噌煮か」
冷蔵庫にきちんとラップされて保存されていた夕食を見て、雄哉も腕を上げたなと自然と顔が緩む。電子レンジを開けて、美味しそうなサバの味噌煮を温める。もう深夜一時を回っているので、ご飯は遠慮しようなんて考えていると電子レンジの温め終了の音色で我に返る。
「ねぇちゃん、おかえり」
「あ、ごめん。煩かった?」
「いや…ちょうど休憩したとこ。また白飯食わないの?」
冷蔵庫から炭酸飲料を取り出し、プシュッといい音を出して蓋を開ける雄哉に炊飯器を指差される。温めたサバの味噌煮をテーブルに置き、椅子に座りながらまたお説教されそうって苦い顔をした。
「この時間で炭水化物はちょっと…」
「キャバクラで働いてるから?」
「いや、もう辞めた」
「…っ!そうなんだ…」
驚いたのか、雄哉は飲み物を飲みながら少しだけ目を見開いた。けれど、すぐに表情を戻すと何もなかったように対面の椅子に座った。まだお説教があるのかと顔を強張らせる。
「ま、ねぇちゃんには似合ってなかったし、いいんじゃね?」
「本当…苦手なのになんでやってたんだろう…」
ほかほかと湯気が上がるサバの味噌煮を一口サイズに箸で切り分け、口に入れる。生臭いのが苦手な私を分かってる雄哉のサバの味噌煮は、これでもかってほど生姜が効いてて私好みだ。味の濃いサバの味噌煮を食べると白飯が欲しくなるが、最近お酒の飲み過ぎて太った気がする私にはとてもじゃないが白飯をお茶碗に入れる勇気はなかった。
「…あんま無理すんなよ。俺は俺でやるから」
「何言ってんの?学生のくせに」
「…!…もういい、寝る」
何か言いたそうにしてたけど、唇を噛み締めてドンドンと大きな音を立てて部屋へ戻ってしまった。最近の雄哉は、学生だとか子供のくせにとか言うとすぐにこうやって機嫌が悪くなる。お年頃ってやつなんだと思う様にしているが、小さい頃から一緒に住んでいる雄哉が段々と大人になっていくようで寂しい。
「弟離れかぁ…」
もう少しだけでいいから私に甘えて欲しいなんて烏滸がましいだろうか。なんだったら雄哉が結婚するまで私に頼ってくれないかな。
雄哉が大人になったら私はどうしたらいい?何も支えが無くなってしまう。何の為に生きて、何の為に働くのか、生きる意味が無くなってしまうような焦燥感に襲われる。
仕事終えた私は真っ暗な家に帰る。弟の雄哉は高校三年で今受験で一番大事な時期だ。まだ起きていた雄哉に帰宅を伝えるが、机の蛍光灯を付けて真剣に勉強しているのか、ガリガリとシャーペンの音だけが響く。集中するためにヘッドホンをしているのでこちらの声は聞こえていないみたいだ。
母は…かれこれ三か月は帰ってきていない。最後は、外人の恋人を連れていたから海外に行っているのかもしれない。雄哉の大学の費用なんてすっかり頭にないんだろうなと我が親ながらクズだなと思う。
キャバクラで稼いだお金と昼間のバイトで、どうにか雄哉の大学の初期費用くらいはどうにか届きそう。父は違うだろうけど、私は五歳離れた雄哉が可愛くて仕方なかった。
最近じゃ憎たらしく生意気になってしまったけれど、ずっとねぇちゃんと後ろをくっついてくる弟がとても可愛くて、目に入れても本当に痛くないんじゃないかって思う。弟の為にも、もう少し頑張らなければと思うとやる気が出てくるから不思議だ。
「あ、今日はサバの味噌煮か」
冷蔵庫にきちんとラップされて保存されていた夕食を見て、雄哉も腕を上げたなと自然と顔が緩む。電子レンジを開けて、美味しそうなサバの味噌煮を温める。もう深夜一時を回っているので、ご飯は遠慮しようなんて考えていると電子レンジの温め終了の音色で我に返る。
「ねぇちゃん、おかえり」
「あ、ごめん。煩かった?」
「いや…ちょうど休憩したとこ。また白飯食わないの?」
冷蔵庫から炭酸飲料を取り出し、プシュッといい音を出して蓋を開ける雄哉に炊飯器を指差される。温めたサバの味噌煮をテーブルに置き、椅子に座りながらまたお説教されそうって苦い顔をした。
「この時間で炭水化物はちょっと…」
「キャバクラで働いてるから?」
「いや、もう辞めた」
「…っ!そうなんだ…」
驚いたのか、雄哉は飲み物を飲みながら少しだけ目を見開いた。けれど、すぐに表情を戻すと何もなかったように対面の椅子に座った。まだお説教があるのかと顔を強張らせる。
「ま、ねぇちゃんには似合ってなかったし、いいんじゃね?」
「本当…苦手なのになんでやってたんだろう…」
ほかほかと湯気が上がるサバの味噌煮を一口サイズに箸で切り分け、口に入れる。生臭いのが苦手な私を分かってる雄哉のサバの味噌煮は、これでもかってほど生姜が効いてて私好みだ。味の濃いサバの味噌煮を食べると白飯が欲しくなるが、最近お酒の飲み過ぎて太った気がする私にはとてもじゃないが白飯をお茶碗に入れる勇気はなかった。
「…あんま無理すんなよ。俺は俺でやるから」
「何言ってんの?学生のくせに」
「…!…もういい、寝る」
何か言いたそうにしてたけど、唇を噛み締めてドンドンと大きな音を立てて部屋へ戻ってしまった。最近の雄哉は、学生だとか子供のくせにとか言うとすぐにこうやって機嫌が悪くなる。お年頃ってやつなんだと思う様にしているが、小さい頃から一緒に住んでいる雄哉が段々と大人になっていくようで寂しい。
「弟離れかぁ…」
もう少しだけでいいから私に甘えて欲しいなんて烏滸がましいだろうか。なんだったら雄哉が結婚するまで私に頼ってくれないかな。
雄哉が大人になったら私はどうしたらいい?何も支えが無くなってしまう。何の為に生きて、何の為に働くのか、生きる意味が無くなってしまうような焦燥感に襲われる。
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