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母の願い
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「お兄様…?」
部屋を出た私が見たものは、眉を下げ頑張ったなと言う兄と父。申し訳なさそうに端の方で立っている義両親になるはずだった人達。
「シェイリーちゃん…こんな事になってたなんて何も知らなくて本当に申し訳ないわ…」
「シェイリー嬢…愚息が取り返しのつかないことをした…重ね重ね謝罪する…本当に申し訳ない」
頭を床に付け、謝る二人に駆け寄り、立ってくださいと手を差し伸べた。やったのは、リルとリムであって義両親は関係ない。それに子育てが完璧な家などないのだから…。
「お義父さん、お義母さんと呼べる日を心待ちにしておりました。けれど、今日こうなってしまったのは運命だったのと思います。リルの事は、本当に心からお慕いしておりました。もう今更ですが…」
「シェイリーちゃん…あぁ、貴方を娘にと…ずっと心待ちにしていたのに…もうウェディングドレスの冊子だって発注してたのよ…貴方と選びたくて、きっと貴方には純白のドレスが似合うだろうって」
「やめないか…シェイリー嬢が困るだろ」
「ここで縁が切れる事、とても残念です。ですが、正直私はリルもリムも…どちらの顔も見たくありません。関わらないというのだけ念書して頂けますか?学園で顔を合わせるのは仕方ないので我慢します。ですが、絶対に声はかけないように言い聞かせて貰えますか?」
「あぁ、約束しよう」
「さ、帰ろう。シェリー」
「えぇ、お兄様…もうお腹ペコペコだわ」
そっと歩き出した兄の歩に沿う様に自分も歩き出した。歩いていると父がもうこんな時間だしなと軽快に笑った。馬車の中は思ったよりも重い空気にはならず、父のいつもはうんざりする長い世間話にこのときばかりは感謝した。
「シェリー!!」
屋敷につくと待っていたとばかりに母が玄関で待っていた。あまり体が強くない母は屋敷でまっていたのだが、相当な心配をかけてしまったのだろう。自分の名前を呼んで駆けよってきた。
「お母様、大丈夫よ。無事に終わったから」
「ごめんなさい…私の我が儘で…」
「え?我が儘?」
父が母に寄り添い、そんな事はないよと優しく母の背中を擦った。母の言葉が気になったが、先に食事にしようと父が言い、そうだねと兄が答えた。食堂に行き食事が運ばれてきても、母の先ほどの言葉が気になり食事も上手く喉を通らない。
「お母様、さっきの…」
そう口を開いた自分に母はそうねと言ってカラトリーを置いた。
「貴方の婚約者はね…本当は義兄であるクリスだったのよ」
「え?どういうことですか?」
「貴方を生んだ時、物凄い難産だったとは聞いているでしょ?」
「えぇ…それでお兄様を養子にしたのでは?」
ちらりと兄に目線を送ると何とも言い難い表情で自分を見つめていた。
「その時、養子ではなく…貴方の婚約者としてきたのよ」
「そうだったのですか?」
「でも、侯爵家のお茶会でリルの事を好いてしまったものだから…私が好いた相手の方がいいだろうってクリスを養子にし、貴方をリルの婚約者にしてしまった…あの時、もう婚約者はいるのよと強く言えていたらこんな辛い思いしなくて済んだのに…」
「お母様、私が望んだことです。お母様に何も咎はないはずです。それにお母様の事ですもの、娘の意向を組んでくれたのですよね?」
「けれど…」
「確かに辛かったです…こんなに誰かを好きになるというのは辛く苦しいものなのかと思いました。けれど、すべてが悪い経験だったか?と聞かれたら…そうでもないのです」
「貴方さえ良かったら…クリスと婚約して貰えないかしら?すぐにとは言わないわ。クリスもずっと婚約者を決めずに貴方の事を諦めなかったのよ?シェリーが結婚したら検討しますなんて意地張って」
「お母様!」
駄目だったかしら?と茶目っ気たっぷりに笑う母に、自分で言うつもりだったと兄…いえ、クリスが頬を染めながらコホンと咳払いした。賑やかになった食事が今日あった事を少し押し流した。
部屋を出た私が見たものは、眉を下げ頑張ったなと言う兄と父。申し訳なさそうに端の方で立っている義両親になるはずだった人達。
「シェイリーちゃん…こんな事になってたなんて何も知らなくて本当に申し訳ないわ…」
「シェイリー嬢…愚息が取り返しのつかないことをした…重ね重ね謝罪する…本当に申し訳ない」
頭を床に付け、謝る二人に駆け寄り、立ってくださいと手を差し伸べた。やったのは、リルとリムであって義両親は関係ない。それに子育てが完璧な家などないのだから…。
「お義父さん、お義母さんと呼べる日を心待ちにしておりました。けれど、今日こうなってしまったのは運命だったのと思います。リルの事は、本当に心からお慕いしておりました。もう今更ですが…」
「シェイリーちゃん…あぁ、貴方を娘にと…ずっと心待ちにしていたのに…もうウェディングドレスの冊子だって発注してたのよ…貴方と選びたくて、きっと貴方には純白のドレスが似合うだろうって」
「やめないか…シェイリー嬢が困るだろ」
「ここで縁が切れる事、とても残念です。ですが、正直私はリルもリムも…どちらの顔も見たくありません。関わらないというのだけ念書して頂けますか?学園で顔を合わせるのは仕方ないので我慢します。ですが、絶対に声はかけないように言い聞かせて貰えますか?」
「あぁ、約束しよう」
「さ、帰ろう。シェリー」
「えぇ、お兄様…もうお腹ペコペコだわ」
そっと歩き出した兄の歩に沿う様に自分も歩き出した。歩いていると父がもうこんな時間だしなと軽快に笑った。馬車の中は思ったよりも重い空気にはならず、父のいつもはうんざりする長い世間話にこのときばかりは感謝した。
「シェリー!!」
屋敷につくと待っていたとばかりに母が玄関で待っていた。あまり体が強くない母は屋敷でまっていたのだが、相当な心配をかけてしまったのだろう。自分の名前を呼んで駆けよってきた。
「お母様、大丈夫よ。無事に終わったから」
「ごめんなさい…私の我が儘で…」
「え?我が儘?」
父が母に寄り添い、そんな事はないよと優しく母の背中を擦った。母の言葉が気になったが、先に食事にしようと父が言い、そうだねと兄が答えた。食堂に行き食事が運ばれてきても、母の先ほどの言葉が気になり食事も上手く喉を通らない。
「お母様、さっきの…」
そう口を開いた自分に母はそうねと言ってカラトリーを置いた。
「貴方の婚約者はね…本当は義兄であるクリスだったのよ」
「え?どういうことですか?」
「貴方を生んだ時、物凄い難産だったとは聞いているでしょ?」
「えぇ…それでお兄様を養子にしたのでは?」
ちらりと兄に目線を送ると何とも言い難い表情で自分を見つめていた。
「その時、養子ではなく…貴方の婚約者としてきたのよ」
「そうだったのですか?」
「でも、侯爵家のお茶会でリルの事を好いてしまったものだから…私が好いた相手の方がいいだろうってクリスを養子にし、貴方をリルの婚約者にしてしまった…あの時、もう婚約者はいるのよと強く言えていたらこんな辛い思いしなくて済んだのに…」
「お母様、私が望んだことです。お母様に何も咎はないはずです。それにお母様の事ですもの、娘の意向を組んでくれたのですよね?」
「けれど…」
「確かに辛かったです…こんなに誰かを好きになるというのは辛く苦しいものなのかと思いました。けれど、すべてが悪い経験だったか?と聞かれたら…そうでもないのです」
「貴方さえ良かったら…クリスと婚約して貰えないかしら?すぐにとは言わないわ。クリスもずっと婚約者を決めずに貴方の事を諦めなかったのよ?シェリーが結婚したら検討しますなんて意地張って」
「お母様!」
駄目だったかしら?と茶目っ気たっぷりに笑う母に、自分で言うつもりだったと兄…いえ、クリスが頬を染めながらコホンと咳払いした。賑やかになった食事が今日あった事を少し押し流した。
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