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第一章
デザイナー比呂
しおりを挟むまだ呪いにかかっている人はいるが、一番酷い彼は処置出来たのでまた明日にしましょうとカイルに言われて、これから自分が使う部屋へ案内された。
やはり神聖力を使うと疲れるのか、天蓋付きの大きいベットにダイブした。フカフカしていてシーツはパリッとノリはついていい匂いがする。
でも、やっぱり自分達の世界と違う部屋は少し落ち着かなかった。けれど、シャワーやトイレがあるだけマシというものだろうか。カイルには、元の世界に戻った聖女はいるのかと聞いたらお役目を終えたら帰れるはずだと言われたから呪いをすべて払ったら帰れるのだろう。帰った所で自分の生きてた時代へ帰れるのだろうか。さっきまでの興奮とは違う別の不安という名の焦燥がいのりを襲った。
「いのりー?」
「比呂…?」
部屋をコンコンとノックされて、疲れで重い体を起こす。ドアから入ってきた比呂の手にはトレイと皿にご飯だろうか?パンやら肉やら豪勢に並べられていた。
「ちょっと早いけど夕飯だって。疲れただろうから早く寝たいでしょ?」
「さすが比呂ママー!」
「誰がママよ!あんたみたいな娘なんかいらないわよ!」
比呂に抱き着くと落としちゃうからと引きはがされた。比呂が持ってきたパンに噛り付くと物足りなさに何かつけるものはないのかと言うと苺ジャムだろうか、真っ赤な色の鮮やかなジャムを目の前に出された。じゅわっと濃厚な苺のジャムの甘さに思わず頬が緩む。
「あんた呑気ねぇ~」
「焦ったってしょうがないじゃない。それに元の世界に未練なんてないもの」
「アタシはあるわよ!会社だってアタシが居ないと回らないだろうし」
比呂は洋服やアクセサリーの会社の社長兼デザイナーだ。やっと軌道に乗ってきてこれからって所だったのだ。申し訳なさに眉を顰めるとあんたのせいじゃないでしょと比呂は笑った。
コンコンと再びドアがノックされるとカイルが失礼しますとあの微笑みで入ってきた。
「聖女様、お召し物をお持ちいたしました。比呂様もサイズが合うか分からないですが、ひとまずお持ちしました」
「あ、ありがとうございます」
しかし、その服を見てピクピクと口角が拒否反応を示す。カイルは満面の笑みでいるので嫌とは言えず、これ着るの?と広げてみる。
「やだ!このだっさい服!あり得ないんだけど!」
「え?先代聖女様が好んで着ていたお召し物なんですが…」
比呂の一言に申し訳なさそうにするカイルが見えて、ちょっとと比呂の服を引っ張る。しかし、デザイナーの比呂にはこのthe聖女という感じの昭和感満載の真っ白なワンピースは納得いかないらしい。比呂用の部屋から急いで自分のバックを持ってくるとハサミと手持ちミシンで慣れた手つきでワンピースを直してゆく。
「あ、あの~…」
「カイルさん、ああなったら手つけれないんで。ほっときましょ」
数十分待つと誇らしげに比呂は手直ししたワンピースをじゃーんと見せてきた。きっちりしていた胸元は涼しげに開き、足には大胆なスリットが入っている。余った素材で胸元にはリボンもついている。厭らしすぎないし、大人の女性にぴったりないのりの大好きなデザインだった。
「さすが比呂~!!!あたしがこのデザイン好きってよく分かってる」
でしょ!と誇らしげな比呂は、布持ってくればアタシが作るからとカイルに言った。カイルは何故かワナワナと震えていて二人でどうしたの?と顔を見合わせる。
「だめです!!じょ、女性が…!足を出すなんて!破廉恥です!!そ、そんなの娼婦じゃないですか!!!」
「へ?」
「元の世界ではどうだったかわかりませんが…この世界で、いや、この国で足を出している女性はおりませんよ」
「ふーん、勿体ないことするのね。足なんて減るもんじゃないのに」
「そういう問題じゃありません!」
カイルの大声に耳がキーンとしたが、違う世界から着てるのだ。それくらい許してよと言うと何か言いたげにぐっと口を紡ぐ。無理やり召喚したから強く言えないのだろう。しかし、服くらい自由にさせてほしい。足が見えたらなんだと言うのだろう。全く。
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