人族では獣人の運命の番には抗えないR18

りこりー

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第一章

宣戦布告の方がマシだった

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「ななななんですか!!!!これ!!!!」

「煩い」

 その信書のスクロールを見て、ワナワナと震えているのは自分の臣下だと思いたくないが自分の臣下である。

 ラシード・ラウル。10歳の時からルシルに仕え、一緒に戦場を駆け抜けてきた戦友でもある。

 貴族らしくもない大声を上げて、今にも国同士の信書だと言うのに破いてしまいそうだ。

「簡単に言えば、婿をやるから手を出さないでくれ。全面的に降伏し、属国となりますってとこかしら」

「かしら?じゃないんですよ!お嬢様!」

「はぁ…お嬢様はやめてよ」

「私からすればずっとお嬢様はお嬢様です!」

 分かったから大声を出すなと言いたいが、戦場に出ていた者は声が大きいのだ。なんせあの怒号の中で聞こえるような声でないと生死に関わるからだ。

 一緒に来た釣書には、ランドルフ国の二人の王子が来ると書かれていた。

 面倒だ、男に興味もなければ、恋愛など前世で十分だ。人は裏切り、死ぬときは一人なのだから。

「お、でも、なかなかの美形ですな」

「顔なんてどうでもいいわよ」

「お嬢様!そんなんだから姫狂いなどと揶揄されるのです!」

「姫狂いねぇ…」

 姫狂い、女性同士の同性愛者のことだ。別に好きなるのが男だろうと女だろうといいじゃないか。

 その美貌と黒い軍服を常に着ているルシルは妄想大好きな淑女達の格好の的だっただけのこと。当の本人は何も気にしていないのである。

 それより問題なのは、ランドルフの王子二人だ。

 ランドルフは獣人の国。ということは、来る王子は獣人ということだ。そもそも種族違うし!と怒鳴りたくなるが、無駄なのが分かってるために声に出すのも億劫だ。

「しかし、属国の王子など突っぱねてもいいのでは?」

「突っぱねても良いとは思うんだけどね、獣人の労働は欲しい所よね」

 獣人は人族より身体能力が高い。獣人族が我が国に流れて来てくれれば、この国の発展もより進むことだろう。なかなか捨てがたい話だった。

「それに獣人というのは運命の番というものがあり、番同士が出会えば一生離れないと聞きます。閨を共にすれば、それはより強固なものとなり、他の異性は抱けなくなるそうですよ」

「へー…運命が夫を決めてくれるなら私もお願いしたいくらいだ」

「そんな獣人などを王配にすれば、困るのはお嬢様ではないですか…」

「祖国の為ならそれくらい我慢するわ、王族とはそういうものでしょう?」

 その後もグチグチと小言を言われたが、悪くない条件だ。これ以上血を流さず、獣人という労働も手に入る。謹んでお受けしようと信書に記入して、ラシードに渡す。まだラシードは何か言いたいようだったが、早くいけと執務室を追い出してやった。

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