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「出来損ない」の真相 1
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窓の外がすっかり暗くなった頃、静かに扉がノックされた。
音に反応して目蓋を開けると、控えていたはずのトアの姿は見えない。
「はい。どうぞ」
てっきりトアが戻ってきたのだと思い、カナデがベッドに身を起こして返事をする。しかし、入ってきたのはレオンハルトだった。
「カナデ、具合は?」
その声に、カナデは思わず身を強ばらせる。けれど逃げる場所はない。
少し俯き視線を逸らしつつ、カナデはぼそりと答える。
「まだ……少し、だるいです」
「そうか。それなら、横になったままでいい」
彼はそう言って、ベッドの縁に腰を下ろした。
急に距離が近くなり、どうしていいのか分からなくなる。無理に触れてくるわけではないし、カナデを気遣うふうでもある。
だがどうしたって、数時間前に彼にされたことを思い出せば体は強張った。
こういうアルファが一番危険だ。――学園で教わった言葉が頭をよぎる。
貴族の学園には自分のように養子として引き取られたオメガの他にも、下位ではあるが正統な貴族の血を引くオメガも通っていた。
学園では週に一度、性別身分を問わず「オメガとしての心得」を学ぶ時間が設けられており、その授業の中で必ず伝えられる警告がある。
――何の前触れもなく、噛まれる可能性を常に考慮すること。
――相手が遊びのつもりでも、項に刻まれた番の印は消せない。
――オメガは簡単に「アルファの所有物」になってしまう。
オメガにとって、アルファは大切な番の候補で有ると同時に、脅威でも有るのだ。
当然だが、相手の同意もなく噛めばアルファは罰せられる。噛んだとしても番になる意思がオメガ側になければ、生涯暮らしていけるだけの賠償金や医療費など諸々の支払いに加え、社会的にも信頼を失う。
若気の至りでその禁を破った結果親族から縁を切られ、新たに番を娶ることもできず生涯寂しく暮らすアルファもいるらしい。
しかし、そういった罰など全く意味をなさないアルファも存在する。
王族、そして公爵位までの貴族がそれだ。
(この人って、まさにそれじゃん)
「……俺は閣下の、玩具なんですよね?」
問うように投げた言葉に反応して、レオンハルトが一瞬だけ目を細める。
「確かに君を買ったのは、そういう建前ではあったが。――玩具か。それもいいね」
返ってきた言葉に、カナデは「やっぱり」という気持ちを隠せず項垂れた。番だと言ったが、それは冗談だったのだろう。
竜人の公爵が、元平民の自分を番に選ぶなどあり得ない。
しかし彼は真面目な顔で続ける。
「カナデが玩具になったら、とろとろに甘やかそう。部屋に閉じ込めて愛し合おう。君が泣いても笑っても、ずっと抱きしめて離さない。……うん、なかなか良い案だ」
「は……?」
音に反応して目蓋を開けると、控えていたはずのトアの姿は見えない。
「はい。どうぞ」
てっきりトアが戻ってきたのだと思い、カナデがベッドに身を起こして返事をする。しかし、入ってきたのはレオンハルトだった。
「カナデ、具合は?」
その声に、カナデは思わず身を強ばらせる。けれど逃げる場所はない。
少し俯き視線を逸らしつつ、カナデはぼそりと答える。
「まだ……少し、だるいです」
「そうか。それなら、横になったままでいい」
彼はそう言って、ベッドの縁に腰を下ろした。
急に距離が近くなり、どうしていいのか分からなくなる。無理に触れてくるわけではないし、カナデを気遣うふうでもある。
だがどうしたって、数時間前に彼にされたことを思い出せば体は強張った。
こういうアルファが一番危険だ。――学園で教わった言葉が頭をよぎる。
貴族の学園には自分のように養子として引き取られたオメガの他にも、下位ではあるが正統な貴族の血を引くオメガも通っていた。
学園では週に一度、性別身分を問わず「オメガとしての心得」を学ぶ時間が設けられており、その授業の中で必ず伝えられる警告がある。
――何の前触れもなく、噛まれる可能性を常に考慮すること。
――相手が遊びのつもりでも、項に刻まれた番の印は消せない。
――オメガは簡単に「アルファの所有物」になってしまう。
オメガにとって、アルファは大切な番の候補で有ると同時に、脅威でも有るのだ。
当然だが、相手の同意もなく噛めばアルファは罰せられる。噛んだとしても番になる意思がオメガ側になければ、生涯暮らしていけるだけの賠償金や医療費など諸々の支払いに加え、社会的にも信頼を失う。
若気の至りでその禁を破った結果親族から縁を切られ、新たに番を娶ることもできず生涯寂しく暮らすアルファもいるらしい。
しかし、そういった罰など全く意味をなさないアルファも存在する。
王族、そして公爵位までの貴族がそれだ。
(この人って、まさにそれじゃん)
「……俺は閣下の、玩具なんですよね?」
問うように投げた言葉に反応して、レオンハルトが一瞬だけ目を細める。
「確かに君を買ったのは、そういう建前ではあったが。――玩具か。それもいいね」
返ってきた言葉に、カナデは「やっぱり」という気持ちを隠せず項垂れた。番だと言ったが、それは冗談だったのだろう。
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しかし彼は真面目な顔で続ける。
「カナデが玩具になったら、とろとろに甘やかそう。部屋に閉じ込めて愛し合おう。君が泣いても笑っても、ずっと抱きしめて離さない。……うん、なかなか良い案だ」
「は……?」
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