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「もう大丈夫ですよ。まったくアルファの方ときたら、番のこととなると大騒ぎをするので困ります」
毛布の中で身を固くしていたカナデに、穏やかな声がかけられる。
起きていたのを見抜かれていたらしい。
もぞもぞと毛布をずらして顔を出すと、茶色の髪の青年が椅子に腰かけて微笑んでいた。
「あの、君は?」
「トア・フェルヴァインと申します。これからしばらくカナデ様のお世話を担当させていただきますね。どうぞお見知りおきを」
丁寧に礼をする仕草も声の調子も柔らかい。
なにより言葉にせずとも、同じオメガであることが伝わってきてカナデは安心する。
「お腹空いてませんか? スープとパンを用意してあります」
「あ、はい……いただきます」
ベッドに身を起こして座ると、寝台で食事を取りやすい小さなテーブルをトアが用意してくれる。テーブルに置かれたお盆には、湯気を立てるスープと焼きたてのパンが乗っていた。
(温かい食事なんて、いつぶりだろう)
病院でフェロモン異常が分かってから、カナデは男爵家ではいないものとされていた。
食事は与えられたが、使用人の食べ残しばかり。冷えたスープや堅くなったパン、誰かが囓った野菜屑。そんなものだけを口にしていた。
オークション会場へ連れて来られてからも、味気ない栄養剤のような固形物と水しか与えられなかった。
カナデはそっと湯気の立つスープをひと匙すくい口に運ぶ。
一口飲んだ途端、喉の奥が熱くなった。
食欲ではない、もっと別の感情が胸の奥から溢れてきて胸が詰まった。
「っう……ふ。っ」
「大丈夫です。ここは安全な場所ですから」
「でも俺、出来損ないで……」
「その件でしたら、レオンハルト様から後でお話しが聞けますよ。本当に大丈夫ですから、何も心配することはありません。カナデ様、もう少しだけスープを飲めますか?」
「っ……うん……」
「栄養バランスの整ったスープですから、少しだけでもお腹に入れると体が楽になります」
優しく背中を撫でてくれるトアに励まされ、カナデは半分ほどスープを飲んだ。けれどそれ以上はもう、体が受け付けなかった。
「噛まれると、どうしても体が過剰反応を起こしてしまうんです。でもこれだけ飲めれば、十分です。後はゆっくり眠って体を休めてください」
トアが食器とテーブルを手際よく片付け、カナデの体を支え横にしてくれる。
「あの人……公爵閣下は……?」
「レオンハルト様はお仕事が終わり次第、お見舞いにいらっしゃいますよ。カナデ様は大切な番ですから、片時も離れたくないのでしょうけど……」
少し困ったようにトアが眉根を寄せる。
色々と事情があるのだろうなと、カナデはなんとなく察した。
「代わり僕がお側に控えておりますから、カナデ様はお休みください」
その言葉を聞き終わらないうちに目蓋が重くなって、カナデは深い眠りに落ちた。
毛布の中で身を固くしていたカナデに、穏やかな声がかけられる。
起きていたのを見抜かれていたらしい。
もぞもぞと毛布をずらして顔を出すと、茶色の髪の青年が椅子に腰かけて微笑んでいた。
「あの、君は?」
「トア・フェルヴァインと申します。これからしばらくカナデ様のお世話を担当させていただきますね。どうぞお見知りおきを」
丁寧に礼をする仕草も声の調子も柔らかい。
なにより言葉にせずとも、同じオメガであることが伝わってきてカナデは安心する。
「お腹空いてませんか? スープとパンを用意してあります」
「あ、はい……いただきます」
ベッドに身を起こして座ると、寝台で食事を取りやすい小さなテーブルをトアが用意してくれる。テーブルに置かれたお盆には、湯気を立てるスープと焼きたてのパンが乗っていた。
(温かい食事なんて、いつぶりだろう)
病院でフェロモン異常が分かってから、カナデは男爵家ではいないものとされていた。
食事は与えられたが、使用人の食べ残しばかり。冷えたスープや堅くなったパン、誰かが囓った野菜屑。そんなものだけを口にしていた。
オークション会場へ連れて来られてからも、味気ない栄養剤のような固形物と水しか与えられなかった。
カナデはそっと湯気の立つスープをひと匙すくい口に運ぶ。
一口飲んだ途端、喉の奥が熱くなった。
食欲ではない、もっと別の感情が胸の奥から溢れてきて胸が詰まった。
「っう……ふ。っ」
「大丈夫です。ここは安全な場所ですから」
「でも俺、出来損ないで……」
「その件でしたら、レオンハルト様から後でお話しが聞けますよ。本当に大丈夫ですから、何も心配することはありません。カナデ様、もう少しだけスープを飲めますか?」
「っ……うん……」
「栄養バランスの整ったスープですから、少しだけでもお腹に入れると体が楽になります」
優しく背中を撫でてくれるトアに励まされ、カナデは半分ほどスープを飲んだ。けれどそれ以上はもう、体が受け付けなかった。
「噛まれると、どうしても体が過剰反応を起こしてしまうんです。でもこれだけ飲めれば、十分です。後はゆっくり眠って体を休めてください」
トアが食器とテーブルを手際よく片付け、カナデの体を支え横にしてくれる。
「あの人……公爵閣下は……?」
「レオンハルト様はお仕事が終わり次第、お見舞いにいらっしゃいますよ。カナデ様は大切な番ですから、片時も離れたくないのでしょうけど……」
少し困ったようにトアが眉根を寄せる。
色々と事情があるのだろうなと、カナデはなんとなく察した。
「代わり僕がお側に控えておりますから、カナデ様はお休みください」
その言葉を聞き終わらないうちに目蓋が重くなって、カナデは深い眠りに落ちた。
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