どこにでもいる平凡な私

柚みかん

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平凡かつ普通な私。
誇れるものとしては
公爵令嬢なだけ。
見た目も何もかも普通な私。

「聞いておるのか。」

「…はい。」

目の前で真っ赤に怒っているのは
この国の王太子。

「余はソナタとの婚約を破棄する」

お茶会中に言い出した王太子。
いつかは言われると思ってた。
だって私はこんなにも何もない令嬢ですもの。
その日が来ただけ。

「わかりました。
今までありがとうございました。
お幸せに」

カーテシーをしてその場を辞する。





きっとお父さまに叱られるわね。

もう修道院に行くしかないかしら。

だってキズモノですものね。

何よりこの平凡な容姿では
誰も娶ってくれないもの。

揺れる馬車の中でそっと考えた。



お屋敷についたけど
いつもと同じ。
まだ何も気づかれていないんだろうか…。
サッと湯浴みをすませ
疲れていたのかすぐに眠ってしまった。


翌朝、ボーッとしてしまった。
そうなのね
私、婚約破棄されたんだわ。
急に色々な感情が込み上げてくる。

起きてからの用意を侍女にして貰い
一人になりたいと言い
一人にして貰った。

ぼんやりと今後の事を考えたいけど
そうもいかない。
きっと事情を知ったお父さまに呼ばれ
叱られるわ。
それまでに修道院に行く準備をしなきゃ。
修道院では何事も自分でしなければいけない。

大きな旅行カバンに色々つめこむ。
と言っても
高価な物は持っていけない。
それでもお誕生日に貰った宝石と…


「お嬢さま旦那さまがお呼びです。」

その声に重い腰を上げた。
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