どこにでもいる平凡な私

柚みかん

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「失礼します。」

お父さまの執務室に入る。

「よく来たね。」

そう言ってくれるお父さまを見遣る。
怒っている風には見えない。


「その荷物は何だ?」

「えっ…修道院に行くための」

「誰がそのような所に行けと言った」

何が何だかわからない…。

「お父さま
私昨日、王太子様から婚約破棄を
申しつかりました。
不甲斐ない娘で申し訳ありません。」

「いや、その事はいいんだよ。」

「そのような訳には参りませんわ。
私、修道院に行こうと思いますの。
こうやって準備も」「ダメだ」

何を言ってるのかしら。

「このまま向かう事も可能ですので
家にお咎めが来る前に」「ダメだと言っておるだろうが」

「ちょっと黙っててくださいまし。
もう何ですの。
私は婚約破棄しましたのよ。」

「してない.ᐟ .ᐟ」

何を言ってらっしゃるのやら…
昨日自分で言ったんじゃないの。

私はここでようやく
その声の主に目を向けた。

今日もステキですわ。
平凡な私と違って…。

って、違う。
違うのよ。

「昨日あなた様が仰ったんじゃありませんか。」

「違う……違うんだ。」


何も違いません事よ。


私はもう一度お父さまに向き合った。

「お父さま。
私は昨日しかとこの耳でお聞きしましたの。
婚約破棄された私にはもう…」

「婚約破棄したいならしてもいいと思うよ、私は。」

「そんな.ᐟ .ᐟ公爵」

「でも今一度話を聞いてみたまえ。」

お父さまは私にゆっくりと優しく微笑んだ。
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