黒猫館 〜愛欲の狂宴〜

翔田美琴

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第十七夜 交換条件は永遠の奴隷

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 風紀的に乱れた所なんてこの場所自体がそうだから気にする事も無かったが、あの前の夜にて味わってしまった世界は流石に『乱れた』の一言では済まされない世界だと思う。
 ドレスを纏った貴婦人達が揃いも揃って、男達のモノに対して狂喜乱舞していたなんて──。  
 信じられないものを目の当たりにして、その夜が終わりを迎え、また監獄に帰る。
 そして俺と鳴川なるかわは同じ世界を先に味わってしまった唐島からしまと監獄にて話し合っていた。

「お前らもとうとう味わっちまったか。どうよ? あの異常な世界を垣間見て」
「女の見え方が変わってしまいそうだ。あのパーティーは何なんだ?」
「あれな、貴婦人達が夜の玩具としての俺達を買う為の席って噂話がある」
「人身売買か?」
「特段、珍しい事でも無いだろう? 何せ大昔からされていたしな。その標的が俺達って事さ」
「あの乱痴気騒ぎの中の直美様と雪菜様、何か怖く無かったか?」
「うーん──そう言えば、貴婦人達を軽蔑的に観てた雰囲気だよな」
「何でそんなに軽蔑的に観てたんだろ? あの人達も同じような事をしている癖に」

 人身売買と聞いて俺は、この場所にいる男達が今に性の玩具として、その貴婦人達に売買されてしまうのか──と思った。
 それを見定める為にそのパーティーに越させたなら納得がいく。
 本当に鮎川家に気に入られるなら売買はされないで、この監獄に閉じ込められてしまうのだろうか──?
 そこで俺は、揺らいだ。
 いっその事、貴婦人に購入されてしまえば監獄から出られるのでは無いか──と。
 いや──揺れているのは直美様と雪菜様の顔が観られなくなるという恐怖だろうか?
 彼女らは貴婦人の中でも群を抜いて美しい。
 他のパーティーの女達は、気品を感じられ無かった。欲望のままに男を玩弄する事しか考えてなさそうだ。
 俺は鮎川家に肩入れしているのか──?
 自分自身をこんな地下室に落とした奴等を──?
 考えると考えただけ、疑問が湧いて出てくる。
 ──止めだ。
 それを考えるのは止めだ──。
 情に絆されるのは止めだ。
 それをして犠牲になるなんて馬鹿ではないか。
 俺達は、ここを脱出するんだ。
 真っ当な世界に戻る為に。
 
 一度、綻びが出来た煉瓦を崩すのは容易い。
 彼らの歓喜の声が上がる度に、少しずつその煉瓦が崩れているのが判る。
 ある程度、煉瓦を退けると、次はトンネル工事に取り掛かる。
 表の世界に通じる隧道トンネルさえ造ってしまえばいちいち鍵が開くのを待たずに脱出は可能だ。
 それをする為には複数人の体力を温存させているのが条件か。
 要は誰かが直美様や雪菜様の気を引いて自分自身にその性の矛先を向けさせるのが肝要だ──。
 それを誰にするのか?
 地下室に囚われている男達で集まり意見を出し合う。

「俺はその役割は、唐島と鳴川と松下が適任だと思うぜ」
「後は小杉こすぎだよな。この四人が鮎川家の女達は気に入っているんじゃないかな?」
「例のパーティーに呼ばれたのもこの四人だし、何とか惹きつけてくれないか?」

 小杉こすぎという男もごく最近にここに落とされた男だった。
 この小杉の凄い所は雄犬扱いから這い上がった強者である。
 それなりどころか気に入られているのは間違いない男ではある。
 唐島と鳴川は、すぐに快諾した。
 隧道トンネル造りより、そっちの適正が自分自身にはあるから、役割分担だと言っていた。
 
「松下はどうなんだ?」

 俺は──どうなのか?
 俺はこの『黒猫館』の謎を解き明かしたい。
 知りたい欲求がある。
 それを知る為には、直美様や雪菜様の気を引いて、聞き出すのが早い。
 なら──隧道トンネル工事はそっちに任せて俺も専門的に色気を振り撒く事にする。

「俺も鮎川家の奴等の気を引く役割をするよ。少なくとも多ければ多い程、トンネル工事もバレないで済む」
「決まりだな」

 いつの間にかここを仕切る男も生まれていたが集団をまとめるには必ず仕切り役は必要だ。
 それが公明正大な奴なら信用が置ける。
 そうして地下室では動きが活発になりつつ、俺達は俺達で、役割を全うする事にした──。

 靴の音が聴こえると最早反射的に体が反応する。
 直美様と雪菜様が現れる事自体が雄犬共とは扱いが違う事に気付く。
 嬲るような感情と、それとは相反するようないい男との愛の拷問役は今夜は俺が担う事になる。
 しかも直美様と雪菜様のお二人相手だった。
 鉄の手枷の当たり前のように着けられて、監獄から出る。
 地下室の空間は広大だ。
 未知の領域にまた導かれているのは感じた。
 随分と長い廊下を歩く。
 いかにも重たそうな鉄の扉が開いて、部屋に入るよう促されると、そこには絢爛豪華な寝室があった。
 まるで高級娼婦が使うような寝室。
 そこで彼女らは俺に交換条件を提示してきた。

「あなた達があの地下で何かをしているのは知っているわ。要はここからの脱出でしょう?」

 バレていたか。
 なら──早い。交換条件を聞きたいね。

「あなたが地下室の男で一番、いい男なの。私達の永遠の愛欲の奴隷になるなら──あの男達を解放してあげても宜しくてよ?」

 つまり、俺を飼いたいって訳だ。
 そして交換条件は彼らの解放──。
 すると、雪菜様が注射針を出して、俺の背中に媚薬を打ち込んだ──!

「この愛欲の罠から生きて帰れたならね……!」
「何を打ち込んだ──?」
「媚薬に決まっているじゃない?」
「くそっ──」

 視界がぼやけていく──暗闇が支配していく──柔らかいベッドの感触は感じるが──。

「松下さん──私達の永遠の奴隷になって?」

 下半身からは彼女らの花びらの感触だけが脊髄を通して電撃のように雪崩れ込む。
 彼女らは馬乗りになって俺の息子を花びらへ突っ込み、快楽を貪っていた。
 何度も──何度も──何度も。
 俺の生命を奪い合うように雪菜様も、直美様も、変わる代わるに俺を犯す。
 俺は虚空に向かって手を広げて──助けを求めていた──。
 誰か──! 俺を──この地獄から助けてくれ──。
 
 誰かが虚空に広げた手を握ってくれた。
 柔らかく、俺に、大丈夫──私がいる──って知らせている──。
 俺は固く握りしめて、その手の人に感謝した。
 
 淫魔達が精を喰らう中、その手を握りしめて、激励してくれたのはメイドの亜美だった。
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