双子の王と夜伽の情愛

翔田美琴

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15話 悲しい夜

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 黒の部隊への尋問を終わらせた宰相エリオットは自らの部屋に戻ると、そこには宮廷魔導師アネットの姿があった。
 非常に薄着な寝間着姿である。
 外には月が夜空に浮かぶ静かな夜だった。
 
「お疲れ様…エリオット」
「大丈夫…?」
「……ああ。でも…」
「自分が嫌になった?」
「時折……自分が疎ましく思う。パトリス帝国では銀色の瞳を持つ人間は、死を意味するという神話。俺は銀色の瞳を持つ呪われた人間なのでは…と」 
「気にするなという方が無理という話よね。でも、私は信じてないわ。貴方は貴方だから」
「だと、いいがな」

 月夜の照らす部屋で並んでベッドに座る。
 思わず自分の肩にアネットを抱いた。

「俺はこの帝国の為に働いているのか。それとも野心があるのか。いずれ自分自身が皇帝へとつく野心が」
「君にはどちらに見える?」
「少なくとも帝国の為に働いていると見えるわ。この瞬間を除いては」
「……んんっ……アネット」

 そこでアネットの口づけが来た。深く甘いキス。舌を絡ませお互いに弄ぶ。

「はあっ…んんっ…アネット、君のキスは虜になりそうだよ」
「エリオットのキスも蕩けてしまうわよ……こ、こんな…んんっ…激しい…のは」

 やがて、二人はベッドに横たわり、見つめ合うと、お互いに纏う衣服を脱がせ始める。
 脱がせあいながら二人だけの秘密の関係に溺れた。

「俺達さ……結婚もしてないのに、こんな事をしているなんて、どう思われるんだろうな」
「こういうの燃えない? 二人だけの秘密の関係って」
「燃えるね。宮廷魔導師と宰相の秘密の夜なんて最高に背徳的じゃないか?」
「貴方って好きよね。背徳的な何か。拷問にしろ、セックスにしろ」
「帝国ナンバーワンのやりたがりという話か? そういうやりたがりな俺に抱かれる君も相当だと思うね」

 言うやエリオットは彼女の花びらを激しく舌で弄くり出した。既に彼女の花びらは歓喜の蜜で溢れている。
 今夜のエリオットはかなり激しくオーラルセックスをしていた。自由自在に舌を動かし、彼女の欲望の蜜を味わう。

「ああん…はあっ…ああっ…すごい…エリオットのこれ……気持ちいい…っ」
「君…こんなに濡れて……ずっと待っていたんだな…」
「貴方さ…こういう面は、皇帝に相応しいと…あうっ…思うわ…はあっ…はあっ」
「でも、皇帝は夜ばかり、これに興じる訳にはいかない……そうだろう…?」

 上目遣いでアネットを見つめる。彼女の花びらへの愛撫をしながらまるで業務連絡を取るように確認した。

「まぁ…確かに」
「宰相のままでいい。君とこうする事が出来るなら……そろそろイクか?」
「ああっ…! ああっ! 頭の中まで…蕩けてしまいそう! イク…! いっちゃう…エリオット」
「イッていい。アネット、イクんだ」
「ああっ! ああーっ!」

 彼女は綺麗な喘ぎ声を上げた。花びらからは歓喜と欲望と背徳の蜜が流れる。
 甘い銀色の瞳になるエリオットは、そのまま自らを入れた。
 そしてキスを交わしながら無駄な贅肉のない身体を密着させた。

「楽しいかい? アネット?」
「私ね…幸せよ? この艶のある身体を許す女性が私一人という事が」

 上から覆いかぶさるように抱かれる彼女はウットリするように彼の背中を触る。微かに汗が滲んでいる。
 脚は彼の腰に絡める。そしてもっと深く来るように押し込む。

「これ以上深くいくと君に子供が出来てしまうよ…」

 薄紅色の乳首を噛みながら普段の宰相とは思えない甘い囁きが聴こえた。
 
「いきたい癖に」
「そうだね…君の中で果てたい…でも」

 そこで目を閉じて、すまなそうに謝る。 
 銀髪が月夜に妖しく輝く。

「本当にすまない。俺が皇位の人間で無ければ、君を妻として娶るのに」
「宮廷魔導師と宰相が結婚したら何でいけないのかしら?」
「……わからない……わからないよ」
「抜かないで…!」
「子供が出来るぞ。苦労して宮廷魔導師になったのに、フイにするのか…?!」
「君程の適任者を捜すのは骨が折れるんだ。わかってくれ。アネット」
「……何で。何で貴方と一緒になってはいけないの!? どうして…?」

 アネットは抱かれながら泣いた。
 手を身体に絡めながら、エリオットの胸の中で泣き崩れる。

「こんなに愛しているのに。こんなに素敵な人が側にいるのに…! どうして──」
「……」

 エリオットはそんな彼女を抱き締め、そして、涙だらけの顔を見つめ、またキスを交わす。2人の逢瀬の時間は儚く過ぎていくのみであった。
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