混沌の女神の騎士 

翔田美琴

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第1章 女神の騎士と女神殺し

1-1 異世界からの騎士

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 とある真夜中の寝室。そこで私は彼に抱かれている。
 彼は私を守る騎士。
 ──だけど。
 抗えない"快楽"の嵐が私の体に襲いかかる。
 後ろからは彼の甘く熱を帯びる声が聞こえる。

「レム。もうやめて。ハウっ、ああッ、気持ちいい──、気持ちいい──けど」
「やめて? 何がやめてかな? 君の体からこんなに愛が漏れているのにやめるなんて」
「だめっ…! だめっ! 気持ち良すぎて忘れなくなってしまうよぉ」

 彼の繊細な指が私の乳首を弄る。
 優しい指使いだが弱点を掴むように容赦なく私を快楽という拷問をかける人差し指と親指だった。
 狂暴な下半身で私を快楽という混沌の海へ溺れさせる。全てが溶けてなくなるような無意識がたゆたう海、全てが産まれた場所というべき"混沌"。
 私はその混沌の女神である女だった。
 そして私に快楽という拷問にかけているこの男性は私を護る為に異世界から転生してきた騎士だった。
 その異世界から転生してきた騎士はこの世界よりも遥かに文明が栄えた世界から転生してきた男性でその世界での彼は"運命のはじまり"の男性だった。
 恐らくその男性が居なかったらその世界の運命は回らなかっただろう。
 だが、その世界で彼は一度死んだ。
 そしてこの世界に転生してきた。
 私を守る"騎士"として、それが父なる神であるあの方の意思でもあった。
 だけど彼は優しいが同時に淫らな騎士でもあった。
 私がこの男性に肌を許してから私を快楽という混沌の海に溶かすように私を愛してくれている。
 私自身が混沌の海を守る女神である故に彼と身体を重ねるこの行為は神聖なものだった。
 だが──。

「やめて──」
「君の下の口はこんなに素直なのに、上の口は素直じゃない。やめて欲しくないのだろう? 私という快楽を知った君には私が必要なんだよ」
「ほら……君の下の口からはこんなにも君の愛が溢れている。私を捕らえて離さない。口では止めてと言うけど体は正直だね。私を欲しがって自分から求めているよ、私を」

 私を容赦なく抱きながら言葉でも淫らな性格が滲み出ている。
 私は自分の輪郭が溶けてなくなりそうな激しき快楽という混沌に支配される。
 この人の甘い欲望には敵わない。
 私を"快楽"という甘い欲望を彼は満たしてくれるから。
 私を抱く彼の姿はこの世界でも、元の異世界でも珍しい外見の人だ。
 生まれながら持っているという銀色の髪。菫色とも銀色にも見える瞳。
 長身痩躯の銀髪の男性は男性としては細い腰を今、私の腰に重ねている。
 声はまるで冬の吹雪のような低いバリトン。自信に溢れた独特の声。
 後ろから責め立てられ抗えない快楽が私に押し寄せてくる。
 ベッドのシーツはしっとりと私と彼の愛が滴り落ちている。
 彼の理性的だけど熱を帯びる声が聞こえる。

「君は悪い女神様だね? 私を夢中にさせる女神だね? だけど私は構わないよ、君を護る為に、君を抱く為にこの世界に導かれたからね……」
「私達は離れられない男女なんだ。そうだろう? ルーア?」

 ルーア。
 これが私の名前。
 混沌の女神ルーア姫と世間は呼んでいる。
 この世界、アルトカークスの万物の源であり、根源となるチカラである混沌を制御する女神。
 そして、私を抱いているこの人は異世界から転生してきた私を護る騎士。
 混沌の女神の騎士、レム・レンブラント。
 元いた世界では技術士官として戦争に参加していた男性。
 この世界、アルトカークスは今、混沌のチカラが暴走して世界に暗い影を落としている。
 私と彼はその混沌を制御する為に神が遣わせた混沌の女神とその騎士という二人。
 彼は私を護る為にこの世界にきた元技術士官の騎士。
 抑えられない快楽が、頭が真っ白になってしまうような快感が、全身を包んでいく……!
 私は快楽の叫び声を上げて、彼と共に混沌に落ちていく……。

 行為が落ち着くと最後、彼は私の唇を貪るようにキスをして、優しく抱き締めてくれた。
 乱れた銀色の髪の毛が月夜に輝いて綺麗だった。
 
「私は君を護る為にこの世界に導かれたんだ。元いた世界で死んだ私に生きるチャンスをくれた君を──私は守る」

 彼は微笑む。
 そして私にこの世界に転生してきた時の事を教えてくれた。
 今の彼の姿は乳白色の肌の上には漆黒の鎧が包んでいる。
 あまりにも細い腰には左側にだけ黒い絹が水着のパラオみたいに揺れている。
 長靴もインナーシャツも漆黒だ。
 ただ紫がかった銀髪が目にも鮮やかに乱れて輝いていた。
 腰には細かな装飾の剣が下げられている。

 私と彼の冒険がこうして始まる。
 新たな神話のはじまりの物語として。
 混沌の女神である私と、混沌の女神の騎士である彼。
 物質と混沌の均衡をもう一度整える為に、私達は旅を続ける。
 その終着点はどこなのか?
 私達はまだ知らない。
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