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第1章 女神の騎士と女神殺し
1-6 想いに揺れる騎士
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異世界アルトカークスに導かれた、機械文明の世界から転生してきた”騎士”レムは、ルーア姫が昨夜言った言葉が気になっていた。
『私はお父さんしか目に見えていなかった。お父さんしか愛してなかった。お父さんに抱かれたかった』
真夜中の白亜の城の、彼に与えられた個室で。今は青味を帯びた月光が、窓から指し、非常に美しい月夜になっている。静かで心地よい空間。
自分が元居た世界では、そこが夜であっても、真夜中であっても、四六時中、機械の音や匂いに包まれていたし、何より戦争中であったから、皆、神経をとがらせていた。
戦況はどんどん悪くなる一方で、彼は愛妻と愛娘に会いに帰宅することも困難な状況にあった。
だが、今はもうそんなのは遠い過去のようにも思える。だが、やはり気になるのは、ルーア姫が、自分の愛娘に本当にそっくりであったことだ。本当に姿は自分の娘によく似ている。
彼はルーアを想い、そして遺してきた娘を想った。
彼は今はベッドに横になり考えに耽っていた。真夜中の部屋には心地よい夜風と、静かな月光が指す。
あの漆黒の鎧は今は彼は外していて、インナーシャツとズボン姿でベッドに横たわり静かな部屋で一人、考えに耽っている。だが、ルーアはいくら愛娘に似ていても娘ではない。それに、自分の姿にそのルーアは父の姿を重ねて見ている。
そんな状態で彼女を抱いても、それはルーアにとっては代償行為でしかならない。自分ではなく、父に抱かれているという悦びで彼に抱かれるだろう。
それでは意味はないのではだろうか? そう思う。
なら、どうやって、ルーア姫に、父という呪縛から解き放って、自分という存在を受け入れてもらえるのだろうか?
なかなか答えを出すには時間が必要そうな問題であった。
やがて、眠気が襲った彼は、薄い毛布に身を包み、静かに眠りに入った……。
数時間後。心地よい朝日が窓から指す。暖かな太陽の光が差し込む。その光で彼は眠りから覚めた。軽く背伸びをして、筋肉をほぐすように身体を動かし、洗面台で顔を洗う。そしてあの漆黒の鎧を纏った。腰には銀色の剣を携えて。
身支度を整えた彼は階段を下りる。太陽の光が窓から差し込み、幻想的な美しさであった。それに朝の空気も気持ちが良い。空気はとても澄んでいる。元居た世界では油と機械の匂いで満たされた空気を吸っていた彼には、新鮮な気持ちになれた。
朝の城は行きかう人々はメイドが中心だった。朝から忙しそうに城の雑務をこなしている様子だった。服は見た感じだと品のあるメイド服だった。清楚な白いブラウス。首にはリボンを飾り、上着は上品な紺色で下は極端に短いスカート。腰にはエプロンを巻いている。だがそれぞれが個性的な着こなし方をしている様子だ。
胸のリボンも赤だったり、青だったり、それぞれ様々。スカートも黒いペチコートを覗かせている者もいれば、黒いタイツを下に着ている女性もいる。年齢は総じて若い女性ばかりだ。大体、十代後半から二十代前半くらいの女性が多い。
彼はそんな城の様子を見つつ、食堂へと向かった。食堂は一階にあり、ホールを出て東側の方角にある部屋だ。その廊下も今は太陽の光が差し込んで気持ちがいい。白いカーテンが風に揺れている。
既に食堂には、女王アンドリアとルーア姫がいた。彼女らと大きなテーブルを囲む。テーブルには白いテーブルクロスが掛けられている。その上には朝食セットが用意されていた。
「おはようございます。女王様。ルーア姫様」
「レムさん。おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
「ええ。こんなにゆっくり眠ったのも、久しぶりでした」
「おはようございます。レムさん」
「おはよう。ルーア」
今のルーアはドレス姿ではなかった。張りのある白いブラウスに、装飾が施された茶色いマントを上に重ねている。背中には大きな白い弓矢。下半身は動きやすさを考慮した白いパンツスタイル。靴は茶色の戦闘用の革靴だ。
昨夜見たドレス姿も綺麗だったが、弓矢使い姿も似合っている。可愛い女の子は何でも似合ってしまうのだろう。
朝食は焼き立てのパンに、スープはコーンポタージュ。サラダはトマトやレタス、キュウリ、紫玉ねぎなどが中心だ。朝食らしく、スクランブル・エッグも出てきた。それにはベーコンなども入っている。元居た世界とほぼ同じような食事の内容に彼はひとまず安心した様子だった。
食堂は太陽の日差しがよく入る、明るい部屋だった。暖かな朝日に照らされた部屋は広々とした部屋だった。
レムもテーブルの前の席に座り朝食を食べる。彼の食事姿は品が感じられる。洗練された食事姿だった。さすがは元居た世界で、それなりに紳士のたしなみを重んじてきた男性である。一つ一つの仕草が非常に洗練されていた。
この旅の当面の目的は果たして何だろうか?
彼の頭の中はその疑問が浮かんでいる。大まかな旅の目的はあの金色に輝く男性に聞かされたから判るが、では当面はどうするのだろうか?
何をしたらいいのかわからないレムであった。
「アンドリア様。今日からルーア姫と私は旅に出るのでしょうか?」
「はい。まずはあなたには、強力な助けとなる存在が必要不可欠です。この先の旅路であなたが倒れないように。そしてあなたには秘石と呼ばれる石も手に入れてもらう予定です」
「秘石?」
「このアルトカークスでの強力な力を行使する時に必要なクリスタルです。あなたにはあなただけの秘石があるはずです。それを捜して手に入れることが当面の目的です」
「それはルーア姫にもあるのですか?」
「はい。ルーアには彼女だけの秘石もありますし、それはあなたにも言えることです。だから、まずはあなたのクリスタルを手に入れる必要があります」
「クリスタル……ですか……」
「イマイチ、ピンと来ないと思いますが、かなりの試練を体験することでしょう。だけど、あなたならきっと大丈夫だと思います」
「じゃあ、しばらくは二人旅ということですね?」
「ええ。レム様、ルーアをよろしくお願いいたします」
「やってみましょう」
「ルーア? 何があっても、彼を信じて、旅をするのですよ?」
「はい。お母様」
そうして混沌の女神と混沌の女神の騎士の物語は始まる──。
『私はお父さんしか目に見えていなかった。お父さんしか愛してなかった。お父さんに抱かれたかった』
真夜中の白亜の城の、彼に与えられた個室で。今は青味を帯びた月光が、窓から指し、非常に美しい月夜になっている。静かで心地よい空間。
自分が元居た世界では、そこが夜であっても、真夜中であっても、四六時中、機械の音や匂いに包まれていたし、何より戦争中であったから、皆、神経をとがらせていた。
戦況はどんどん悪くなる一方で、彼は愛妻と愛娘に会いに帰宅することも困難な状況にあった。
だが、今はもうそんなのは遠い過去のようにも思える。だが、やはり気になるのは、ルーア姫が、自分の愛娘に本当にそっくりであったことだ。本当に姿は自分の娘によく似ている。
彼はルーアを想い、そして遺してきた娘を想った。
彼は今はベッドに横になり考えに耽っていた。真夜中の部屋には心地よい夜風と、静かな月光が指す。
あの漆黒の鎧は今は彼は外していて、インナーシャツとズボン姿でベッドに横たわり静かな部屋で一人、考えに耽っている。だが、ルーアはいくら愛娘に似ていても娘ではない。それに、自分の姿にそのルーアは父の姿を重ねて見ている。
そんな状態で彼女を抱いても、それはルーアにとっては代償行為でしかならない。自分ではなく、父に抱かれているという悦びで彼に抱かれるだろう。
それでは意味はないのではだろうか? そう思う。
なら、どうやって、ルーア姫に、父という呪縛から解き放って、自分という存在を受け入れてもらえるのだろうか?
なかなか答えを出すには時間が必要そうな問題であった。
やがて、眠気が襲った彼は、薄い毛布に身を包み、静かに眠りに入った……。
数時間後。心地よい朝日が窓から指す。暖かな太陽の光が差し込む。その光で彼は眠りから覚めた。軽く背伸びをして、筋肉をほぐすように身体を動かし、洗面台で顔を洗う。そしてあの漆黒の鎧を纏った。腰には銀色の剣を携えて。
身支度を整えた彼は階段を下りる。太陽の光が窓から差し込み、幻想的な美しさであった。それに朝の空気も気持ちが良い。空気はとても澄んでいる。元居た世界では油と機械の匂いで満たされた空気を吸っていた彼には、新鮮な気持ちになれた。
朝の城は行きかう人々はメイドが中心だった。朝から忙しそうに城の雑務をこなしている様子だった。服は見た感じだと品のあるメイド服だった。清楚な白いブラウス。首にはリボンを飾り、上着は上品な紺色で下は極端に短いスカート。腰にはエプロンを巻いている。だがそれぞれが個性的な着こなし方をしている様子だ。
胸のリボンも赤だったり、青だったり、それぞれ様々。スカートも黒いペチコートを覗かせている者もいれば、黒いタイツを下に着ている女性もいる。年齢は総じて若い女性ばかりだ。大体、十代後半から二十代前半くらいの女性が多い。
彼はそんな城の様子を見つつ、食堂へと向かった。食堂は一階にあり、ホールを出て東側の方角にある部屋だ。その廊下も今は太陽の光が差し込んで気持ちがいい。白いカーテンが風に揺れている。
既に食堂には、女王アンドリアとルーア姫がいた。彼女らと大きなテーブルを囲む。テーブルには白いテーブルクロスが掛けられている。その上には朝食セットが用意されていた。
「おはようございます。女王様。ルーア姫様」
「レムさん。おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
「ええ。こんなにゆっくり眠ったのも、久しぶりでした」
「おはようございます。レムさん」
「おはよう。ルーア」
今のルーアはドレス姿ではなかった。張りのある白いブラウスに、装飾が施された茶色いマントを上に重ねている。背中には大きな白い弓矢。下半身は動きやすさを考慮した白いパンツスタイル。靴は茶色の戦闘用の革靴だ。
昨夜見たドレス姿も綺麗だったが、弓矢使い姿も似合っている。可愛い女の子は何でも似合ってしまうのだろう。
朝食は焼き立てのパンに、スープはコーンポタージュ。サラダはトマトやレタス、キュウリ、紫玉ねぎなどが中心だ。朝食らしく、スクランブル・エッグも出てきた。それにはベーコンなども入っている。元居た世界とほぼ同じような食事の内容に彼はひとまず安心した様子だった。
食堂は太陽の日差しがよく入る、明るい部屋だった。暖かな朝日に照らされた部屋は広々とした部屋だった。
レムもテーブルの前の席に座り朝食を食べる。彼の食事姿は品が感じられる。洗練された食事姿だった。さすがは元居た世界で、それなりに紳士のたしなみを重んじてきた男性である。一つ一つの仕草が非常に洗練されていた。
この旅の当面の目的は果たして何だろうか?
彼の頭の中はその疑問が浮かんでいる。大まかな旅の目的はあの金色に輝く男性に聞かされたから判るが、では当面はどうするのだろうか?
何をしたらいいのかわからないレムであった。
「アンドリア様。今日からルーア姫と私は旅に出るのでしょうか?」
「はい。まずはあなたには、強力な助けとなる存在が必要不可欠です。この先の旅路であなたが倒れないように。そしてあなたには秘石と呼ばれる石も手に入れてもらう予定です」
「秘石?」
「このアルトカークスでの強力な力を行使する時に必要なクリスタルです。あなたにはあなただけの秘石があるはずです。それを捜して手に入れることが当面の目的です」
「それはルーア姫にもあるのですか?」
「はい。ルーアには彼女だけの秘石もありますし、それはあなたにも言えることです。だから、まずはあなたのクリスタルを手に入れる必要があります」
「クリスタル……ですか……」
「イマイチ、ピンと来ないと思いますが、かなりの試練を体験することでしょう。だけど、あなたならきっと大丈夫だと思います」
「じゃあ、しばらくは二人旅ということですね?」
「ええ。レム様、ルーアをよろしくお願いいたします」
「やってみましょう」
「ルーア? 何があっても、彼を信じて、旅をするのですよ?」
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