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第1章 女神の騎士と女神殺し
1-10 初めての対峙
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女神の騎士と女神殺しを企む騎士グレイブが初めてここで対峙する。
「貴様がそこにいるルーア姫を守る、新たなる混沌の女神の騎士か?」
「そうだ。貴様は何者だ? 明らかに友好的な客には見えないが──」
「そこにいるルーア姫を殺しにきた。もちろん貴様も殺す。そして、この世界の歪みを正す」
「歪み?」
「混沌の女神の存在は、我々にとっては邪魔な存在だ。その女のせいで私の愛しい人が死に直面している。だから貴様とルーア姫を殺す!」
グレイブはそこで非常に禍々しい魔剣を取り出して、その切っ先を彼らに向けた。まるで”混沌”そのものが具現化したような剣だった。非常に重量がありそうな剛剣。彼の深海の青い瞳が殺気で輝く。
レムはルーアを自分の後ろに下がらせ、そして左手に握った銀色の剣の切っ先を彼に向けた。その瞳には揺るがぬ決意が宿っている。
「つまりはこういうことか? 自分の愛する人が死ぬから──私達に死んでくれという訳か? その気持ちはわからないではないが、なら私が言うことは一つだな。死ぬのは貴様の方だ」
「フン。貴様は混沌の女神の真の価値を知らないからそう言えるのだ」
「価値なんてどうでもいい。私は彼女を守る騎士だ。どんなことがあっても、彼女は私が守る」
「いいだろう」
グレイブはそこで漆黒の輝きを宿した秘石(クリスタル)を取り出して、そして呼び出した。
「来い! ゾフィエル!!」
漆黒の宝石が輝くとそこに魔法陣が描かれ、そこからあの竜の堕天使が現れた。逞しい体躯をした明らかに人間の手が加えられた竜が。
そのゾフィエルは、色は漆黒の表皮にまるで青白い鎧みたいなパーツがいくつも填められている、翼も青白く、鋭利な刃のような翼だ。頭に値する場所には魔法金属の鎧が装備され、魔法強化されたことははっきりとした形で姿に表れている。
明らかに人工的なその竜を見て、銀翼の最強の竜は呆れた様子でつぶやいた。
「おめでたくも”魔獣化”した竜の堕天使か」
「”魔獣化”?」
「どこの馬鹿が考え出したのか、我々、竜の天使に対抗するために産みだされた、人工的に魔法強化を施された竜だ」
「しかし、普通の人間にそんな竜の堕天使を操れる力はないはずだ。だとすると、あの男の秘石の力か。奴は手強いぞ?」
「退きさがるのは好きではない。そんな人工的な存在に君が負けるとも思えないな」
「無論だ。ゾフィエルは我に任せて、貴様はルーアを連れて神殿に行け!」
「わかった! 行こう? ルーア」
彼女は頷くと、レムと共に神殿に走っていった。グレイブもミカエルの相手をゾフィエルに任せ、彼らを追う。
「逃がすか!」
グレイブの重量のある剣から衝撃波が放たれた! それをレムは己の盾でやり過ごす。何発も叩き込む衝撃波を。レムも衝撃波をやり過ごすと左手から漆黒の炎を何発も叩き込む!
グレイブは己の剣でそれを切り裂く。ルーアは全速力で神殿に走っていく。
上空では銀翼の最強の竜と魔獣化した竜の堕天使が激しい闘いを繰り広げている。漆黒の竜は翼から鋭利な刃を放つ。それを紙一重で回避する。ミカエルは全てを焼き払う業火を吐いた。だが、その魔獣化した竜にはそれ程効果はなかった。
とんでもない防御力にミカエルは呆れる。
「少しは骨がある相手のようだな! だが、我が最強の天使であることをその身で思い知るがいい!」
その間もグレイブとレムは己の剣をぶつけ合い、お互いに魔法と衝撃波を織り交ぜて戦う。
「忌々しい混沌の女神の騎士め!」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ!」
「混沌の女神さえいなければ、この世界は永久に不滅なのだ!」
「違うな! 貴様が永久に不滅にしたいのは、世界ではなくて愛する人だろう!?」
「貴様に何が判る!」
「判るとも! もし私が貴様の立場なら、私も迷いなくそれをする! だが、ただ一人の女性の為に、世界まで壊そうとは私は思わない! 人間なら誰もがやがては愛する人と別れる! 例えそれが嫌でも受け入れるしかない! 地球では少なくともそういう人間が生きている世界だった!」
「貴様は知らないのだ!! 何度も何度も死んでは転生を繰り返す悲しい存在がいることを! 何度も何度もその愛する人が間近で死んでいく光景を味わっていないから、そう言えるのだ!!」
「くうっ……!!」
「レム!」
「ルーア! 行け! 君の秘石を手に入れるんだ! 私は死なない! こんな所で死んでたまるか! 誓った約束を破るつもりなどない!」
レムとグレイブが剣を交えている。激しい剣戟の歌が響く。火花が散るように二人の騎士が己の守るべき存在の為に剣を振るう!
やがて、ルーアは神殿に入った。神殿の天井からは白い天使の羽根が舞い落ちるように舞っている。白い尊い光指す祭壇には、まだ光が宿っていない宝石が置かれている。
やがて光指す祭壇から声が彼女の心に聴こえた。彼女に声は問いかける。
(ルーアよ。この世界で、お前がこの世で一番大事な人間は誰か? その者の名前をお前の心の声で答えて見せよ)
(私がこの世で一番大事な人? 私は……私は──)
ルーアはそこで跪き、白い光が指す祭壇に祈った。手を重ねて、心から祈る。
(君は私が守る……誓っただろう?)
レムが口癖のように囁く言葉を思いだす。
(私は誓った約束を破るつもりなどない)
彼が信念を持った紫色の瞳で彼女を見つめている。熱を帯びるようにいつも呟いている言葉。
(君は私が守る)
「私がこの世で一番大事な人は……レム……あの人です……! いつも私を守ってくれている。寂しい時は励ましてくれる……どんな時もいつも私のことを想ってくれている……! 私はあの人が一番大事な人です!」
(その言葉……嘘はないな?)
「嘘じゃないです……! 私はあの人が好きです! 死んでほしくない……別れたくない! 離れたくない……いつも一緒にいて欲しい……!!」
(その心……見せてもらった。ルーアよ…! 受け取るがいい……! このクリスタル、『愛のルビー』を)
その瞬間、神殿に赤い光が、祭壇に降り注いだ。祭壇に鎮座していた秘石が、ルーアの秘石になる。赤い愛が形になった真紅の薔薇の形をしたルーアの秘石。『愛のルビー』。彼女の心が形となった彼女がアルトカークスで生きるための力。
誰かを愛して、その人物に力を分ける愛する力。自分が溶けて、他の誰かと溶け込み、より大きな”何か”を生みだすための力が彼女に宿った瞬間だった。
その赤い尊い光は、神殿の外で戦う者達にも驚いた。
二人の騎士は対照的な表情を浮かべている。
レムはルーアに彼女の秘石(クリスタル)が手に入ったことに喜びを。
グレイブは、一歩、混沌の女神となる試練を突破した彼女に、憎悪の眼差しを向ける。
だが、一旦彼は、ゾフィエルの背中に乗って去った。目の前の混沌の女神の騎士に、去り際に意味深な台詞を言って。
「今に貴様は後悔するだろう!ルーアを守ったことで、貴様は後悔するのだ。何も関係のない者達まで自分の戦いに巻き込んだことを!」
グレイブはゾフィエルの背中に乗って、青い空の彼方へ去って行った。
その彼の台詞の意味を、彼はまだ知らない。
神殿から出てくるルーア。彼女の胸元には赤い薔薇の形をした秘石がそこに存在していた。
「レム。あなたのことを想ったら、これが手に入ったの」
「これが……君の秘石(クリスタル)なんだね?」
「ねえ……お願いがあるんだけど……」
「何だい?」
「今夜、抱いて。あなたと素肌を合わしたい……」
「いいのかい?」
「私の秘石(クリスタル)のためじゃなくて……あなたの秘石(クリスタル)の為に抱かれたいの」
「わかった。どこか、街を捜そう。そこの部屋で……君を抱かせてくれ」
「この近くに街があるわ。とても大きな街があるの。デートの場所にも最適な場所なんだって」
「デートか。それもいいね。行こう」
そうして、彼らは大きな歓楽街で今宵の晩、初めて素肌を合わすことになった。
「貴様がそこにいるルーア姫を守る、新たなる混沌の女神の騎士か?」
「そうだ。貴様は何者だ? 明らかに友好的な客には見えないが──」
「そこにいるルーア姫を殺しにきた。もちろん貴様も殺す。そして、この世界の歪みを正す」
「歪み?」
「混沌の女神の存在は、我々にとっては邪魔な存在だ。その女のせいで私の愛しい人が死に直面している。だから貴様とルーア姫を殺す!」
グレイブはそこで非常に禍々しい魔剣を取り出して、その切っ先を彼らに向けた。まるで”混沌”そのものが具現化したような剣だった。非常に重量がありそうな剛剣。彼の深海の青い瞳が殺気で輝く。
レムはルーアを自分の後ろに下がらせ、そして左手に握った銀色の剣の切っ先を彼に向けた。その瞳には揺るがぬ決意が宿っている。
「つまりはこういうことか? 自分の愛する人が死ぬから──私達に死んでくれという訳か? その気持ちはわからないではないが、なら私が言うことは一つだな。死ぬのは貴様の方だ」
「フン。貴様は混沌の女神の真の価値を知らないからそう言えるのだ」
「価値なんてどうでもいい。私は彼女を守る騎士だ。どんなことがあっても、彼女は私が守る」
「いいだろう」
グレイブはそこで漆黒の輝きを宿した秘石(クリスタル)を取り出して、そして呼び出した。
「来い! ゾフィエル!!」
漆黒の宝石が輝くとそこに魔法陣が描かれ、そこからあの竜の堕天使が現れた。逞しい体躯をした明らかに人間の手が加えられた竜が。
そのゾフィエルは、色は漆黒の表皮にまるで青白い鎧みたいなパーツがいくつも填められている、翼も青白く、鋭利な刃のような翼だ。頭に値する場所には魔法金属の鎧が装備され、魔法強化されたことははっきりとした形で姿に表れている。
明らかに人工的なその竜を見て、銀翼の最強の竜は呆れた様子でつぶやいた。
「おめでたくも”魔獣化”した竜の堕天使か」
「”魔獣化”?」
「どこの馬鹿が考え出したのか、我々、竜の天使に対抗するために産みだされた、人工的に魔法強化を施された竜だ」
「しかし、普通の人間にそんな竜の堕天使を操れる力はないはずだ。だとすると、あの男の秘石の力か。奴は手強いぞ?」
「退きさがるのは好きではない。そんな人工的な存在に君が負けるとも思えないな」
「無論だ。ゾフィエルは我に任せて、貴様はルーアを連れて神殿に行け!」
「わかった! 行こう? ルーア」
彼女は頷くと、レムと共に神殿に走っていった。グレイブもミカエルの相手をゾフィエルに任せ、彼らを追う。
「逃がすか!」
グレイブの重量のある剣から衝撃波が放たれた! それをレムは己の盾でやり過ごす。何発も叩き込む衝撃波を。レムも衝撃波をやり過ごすと左手から漆黒の炎を何発も叩き込む!
グレイブは己の剣でそれを切り裂く。ルーアは全速力で神殿に走っていく。
上空では銀翼の最強の竜と魔獣化した竜の堕天使が激しい闘いを繰り広げている。漆黒の竜は翼から鋭利な刃を放つ。それを紙一重で回避する。ミカエルは全てを焼き払う業火を吐いた。だが、その魔獣化した竜にはそれ程効果はなかった。
とんでもない防御力にミカエルは呆れる。
「少しは骨がある相手のようだな! だが、我が最強の天使であることをその身で思い知るがいい!」
その間もグレイブとレムは己の剣をぶつけ合い、お互いに魔法と衝撃波を織り交ぜて戦う。
「忌々しい混沌の女神の騎士め!」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ!」
「混沌の女神さえいなければ、この世界は永久に不滅なのだ!」
「違うな! 貴様が永久に不滅にしたいのは、世界ではなくて愛する人だろう!?」
「貴様に何が判る!」
「判るとも! もし私が貴様の立場なら、私も迷いなくそれをする! だが、ただ一人の女性の為に、世界まで壊そうとは私は思わない! 人間なら誰もがやがては愛する人と別れる! 例えそれが嫌でも受け入れるしかない! 地球では少なくともそういう人間が生きている世界だった!」
「貴様は知らないのだ!! 何度も何度も死んでは転生を繰り返す悲しい存在がいることを! 何度も何度もその愛する人が間近で死んでいく光景を味わっていないから、そう言えるのだ!!」
「くうっ……!!」
「レム!」
「ルーア! 行け! 君の秘石を手に入れるんだ! 私は死なない! こんな所で死んでたまるか! 誓った約束を破るつもりなどない!」
レムとグレイブが剣を交えている。激しい剣戟の歌が響く。火花が散るように二人の騎士が己の守るべき存在の為に剣を振るう!
やがて、ルーアは神殿に入った。神殿の天井からは白い天使の羽根が舞い落ちるように舞っている。白い尊い光指す祭壇には、まだ光が宿っていない宝石が置かれている。
やがて光指す祭壇から声が彼女の心に聴こえた。彼女に声は問いかける。
(ルーアよ。この世界で、お前がこの世で一番大事な人間は誰か? その者の名前をお前の心の声で答えて見せよ)
(私がこの世で一番大事な人? 私は……私は──)
ルーアはそこで跪き、白い光が指す祭壇に祈った。手を重ねて、心から祈る。
(君は私が守る……誓っただろう?)
レムが口癖のように囁く言葉を思いだす。
(私は誓った約束を破るつもりなどない)
彼が信念を持った紫色の瞳で彼女を見つめている。熱を帯びるようにいつも呟いている言葉。
(君は私が守る)
「私がこの世で一番大事な人は……レム……あの人です……! いつも私を守ってくれている。寂しい時は励ましてくれる……どんな時もいつも私のことを想ってくれている……! 私はあの人が一番大事な人です!」
(その言葉……嘘はないな?)
「嘘じゃないです……! 私はあの人が好きです! 死んでほしくない……別れたくない! 離れたくない……いつも一緒にいて欲しい……!!」
(その心……見せてもらった。ルーアよ…! 受け取るがいい……! このクリスタル、『愛のルビー』を)
その瞬間、神殿に赤い光が、祭壇に降り注いだ。祭壇に鎮座していた秘石が、ルーアの秘石になる。赤い愛が形になった真紅の薔薇の形をしたルーアの秘石。『愛のルビー』。彼女の心が形となった彼女がアルトカークスで生きるための力。
誰かを愛して、その人物に力を分ける愛する力。自分が溶けて、他の誰かと溶け込み、より大きな”何か”を生みだすための力が彼女に宿った瞬間だった。
その赤い尊い光は、神殿の外で戦う者達にも驚いた。
二人の騎士は対照的な表情を浮かべている。
レムはルーアに彼女の秘石(クリスタル)が手に入ったことに喜びを。
グレイブは、一歩、混沌の女神となる試練を突破した彼女に、憎悪の眼差しを向ける。
だが、一旦彼は、ゾフィエルの背中に乗って去った。目の前の混沌の女神の騎士に、去り際に意味深な台詞を言って。
「今に貴様は後悔するだろう!ルーアを守ったことで、貴様は後悔するのだ。何も関係のない者達まで自分の戦いに巻き込んだことを!」
グレイブはゾフィエルの背中に乗って、青い空の彼方へ去って行った。
その彼の台詞の意味を、彼はまだ知らない。
神殿から出てくるルーア。彼女の胸元には赤い薔薇の形をした秘石がそこに存在していた。
「レム。あなたのことを想ったら、これが手に入ったの」
「これが……君の秘石(クリスタル)なんだね?」
「ねえ……お願いがあるんだけど……」
「何だい?」
「今夜、抱いて。あなたと素肌を合わしたい……」
「いいのかい?」
「私の秘石(クリスタル)のためじゃなくて……あなたの秘石(クリスタル)の為に抱かれたいの」
「わかった。どこか、街を捜そう。そこの部屋で……君を抱かせてくれ」
「この近くに街があるわ。とても大きな街があるの。デートの場所にも最適な場所なんだって」
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