混沌の女神の騎士 

翔田美琴

文字の大きさ
12 / 49
第1章 女神の騎士と女神殺し

1-12 夕食デート

しおりを挟む
 ”美食のエリア”の中心部にそのレストランがあった。今は丁度ディナータイム。そこのレストランの扉を開ける。すると扉に取り付けられたレトロな雰囲気のベルがカランと鳴った。
 ふくよかな料理の香りがする。悪い匂いでもない。雰囲気もまさに大人の社交場みたいなレストランだった。目に優しい木目調の建物。天井には華美でありながら上品なデザインのシャンデリア。目に優しい暖かなオレンジ色の照明だった。

「いい趣味をしているレストランだね」
「料理も美味なんですって」

 二人は席に着くと、本日のお品書きが書かれたメニュー表を彼らに手渡す。そこの従業員は女性だった。

「本日のメニューはこちらになっております。ごゆっくり……」

 彼らはメニュー表を見る。何となくだが、想像できた。このレストランは地球で表現すれば、イタリアンレストランといった所だろう。
 レムはとりあえずは安心した。店内の照明は少し薄暗いが、ムードはある。なかなかロマンチックな雰囲気にルーアは何だか落ち着かない。
 それに初めて着た色調のドレスだったので自分に似合っているのかも判断がつかないでいた。だが、目の前の紳士は彼女の姿を見て褒めてくれた。

「ルーア。なかなか趣味のいいドレスだと思うよ?とても落ち着いて品のあるドレスだと思う」
「そう……かな?」
「緊張するよね……でも安心して? 今夜は君が主役なんだから」
「レムのスーツも格好いいね」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
「ねえ?」
「何かな?」
「元居た世界でもこうして女性とデートとかしたの? レムは?」
「まあね。こうしてレストランで食事したり、花火を見に行ったり、いろんなことをして生きてきたよ?」
「私、あなたの娘に似ているって言っていたよね? 名前は?」
「ジェニファー……っていうんだ」
「その子も可愛い?」
「もちろん。君と同じくらい可愛いよ?」
「でも、君は君だよ。別に彼女に似ているから守りたいわけじゃない。本当に君のことを守りたいんだ。何が起こってもね」

 彼は信念のこもった瞳でルーアを見つめた。唇を優しく微笑ませる。どこかその表情は恋人に向けるようなまなざしだった。
 そうして、今夜のディナーが運ばれてきた。
 本日のお勧めメニューだった。マグロのカルパッチョ。キノコのキッシュ。魚介類のペペロンチーノ。メインディッシュには牛肉のステーキが出た。
 そして食前酒に赤ワインがグラスに注がれると二人はグラスを合わせて、ひと口飲んだ。この赤ワインは美味しい。深みのある味わいだった。
 二人でディナータイムを楽しむ。彼は元居た世界のことをルーアにいろいろ話した。
 自分の家族のこと。自分が住んでいた世界のこと。そこでは悲惨な戦争が起きていること。自分が選んだ仕事のこと。そして自分が産み出した兵器が大事な人々の生命を奪っていること。
 彼は包み隠さず話した。そして、その奪った生命の清算をここでしていること。その為に自分が傷ついてもいいとまで彼は話した。
 彼の心の内側は、密かにそういう悲しみも抱いていた。自分が産み出した兵器が人の命を奪っている。だけど、それを引き受けたのは自分自身だから後悔はしていない……とも。
 ルーアはだんだん彼に惹かれていく。
 ディナータイムを終わらせた二人は、夜の歓楽都市の絶景ポイントへ向かう。
 この時間は花火大会が開かれている時間だった。それを歓楽都市の高台で観るのがデートの定番だった。
 やがて高台に上った二人は、夜空に華やかな花火が上がるのを二人で肩を寄せて見つめる。
 その花火の明かりが彼を照らすとルーアは彼の顔を見つめる。彼は夜空の花火を見つめて、夜になるとその特徴的な瞳を更に不思議な輝きを宿していた。
 まるで銀色の瞳だった。口元は微笑んで、彼もまた久しぶりに観る花火で、昔、愛妻と観た記憶がよみがえった。
 よく二人でこうやって見つめていたよな。懐かしい気持ちがよみがえった。
 やがてその花火を背後に二人はお互いの顔を見つめ合う。ルーアがそっと瞳を閉じて唇を彼に向ける。彼はその苺のような瑞々しい唇にそっと自分の唇を重ねた。
 自然ときつく抱きしめ合う。
 そのまま、今夜泊まるホテルへと向かった。
 彼女の、ルーアの初夜がとうとう始まろうとしている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...