混沌の女神の騎士 

翔田美琴

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第2章 パラレリアクロス

2-5 歪み始める世界

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 ハザード・レスターの独自のコネでサイド3へのシャトルを確保した一行は、ハザードの祖国でもあるサイド3【カルベローナ】へと向かっている。そこは最果てのコロニーで、何と月の裏側にあるという。
 サイド7【グリーンアイランド】からサイド3【カルベローナ】まで向かうのに丸一日以上もかかる故に、彼女らはシャトルの中で一泊しながら向かう事になった。
 
「それにしても遠いなあ。カルベローナは。まだかかるのかい? ハザードのおっさん」
「せめて『ハザードさん』と言いなさい。まだ時間かかるよ。サイド7からの道のりじゃどんなに早いシャトルでもまる一日以上はかかるんだ」
「全く、あんたの祖国【カルベローナ】は本当に最果てにあるんだな」
「何だか眠くなってきちゃった……」
「休み無しで歩き回ったからだね。ジェニファーちゃんは奥のレストルームで休んできなよ? あそこなら横になれる」
「そうするね」

 運転席にはハザードが操縦桿を握り、索敵シートにはキッドがどっかりと腰を下ろしていた。腕を組んで、外の宇宙を眺めながらハザードと会話をする。
 空中には風の妖精のシルフは小さな羽を羽ばたき宙に舞う。 
 
「それにしても可愛いな。この妖精。この子がジェニファーちゃんのチカラとなるのか」
「まあな。あからさまな武器だと地球では逮捕されてしまうからレムのおじさんがシルフにして形を変えて送ったのさ」
「へぇ~。あの人も割と可愛い造形が好きなんだな。意外と堅い人物かと俺は思っていたけどね」
「ふわ~っ。何だかオレも眠くなってきやがった。操縦は頼むぜ。ハザードさん」
「ああ。到着したら起こすよ」

 キッドも奥のレストルームに消えて操縦席のハザードだけになった。
 ハザードは暗号通信でサイド3にいる同僚へ連絡を入れる。
 
「ハザードか。定期連絡の割には随分と早いじゃないか?」
「カルベローナ公国に入国する人物に二人の女性を追加したい。一人はレム大佐のご息女だよ。もう一人はその人の友人らしい」
「わかった。内密に話は通しておく」
「そっちの動乱はどうなんだ?」
「信じがたい現象が起きているぜ。戦死した複数人のエースパイロット達がいるんだ。それだけなら良いが、何故かジュノワール家の人間まで甦りやがった」
「マジか?」
「ああ。そしてまた俺達を戦争に駆り出そうって魂胆だぜ」
「厄介な奴らがまた甦ったもんだな。ジュノワール家の奴ら、またこのカルベローナ公国を利用するつもりだろう?」
「だから早々に暗殺する動きも出てきた。とりあえず俺達はこのカルベローナ公国をどんな脅威からも守る為に行動するのみさ」
「そうだな」

 彼らカルベローナ公国の職業軍人達はジュノワール家の思想は関係なくカルベローナ公国をあらゆる脅威から守る為に行動する者達だった。
 彼らにとっては思想は関係ない。しかしカルベローナ公国に害をなすなら、いかにジュノワール家の人間だろうが、暗殺もやむなしという軍人だった。
 ジュノワール家は先の大戦で死亡したという公式の記録がある。
 故に今更死亡した者達に国を渡す程、彼らはお人好しでもない。死んだなら大人しく地獄に落ちていろとまた殺す事も厭わない。
 ハザードが連絡を取っていた人物もどのような思想も関係なくカルベローナ公国の為に闘うのであり、ジュノワール家の為に闘うのは違うと考えているのだ。

 シャトルがサイド7宙域からサイド3宙域に入る。ここまで来るのに述べ48時間の旅路。月の裏側にあるサイド3にシャトルが入ると、哨戒任務に当たる戦闘機が彼らに通信を求める。
 ハザードは今のカルベローナ公国軍をまとめる人物に面会を求めにきた事を話す。その人物はロベルト・ギリアム大佐。今の公国軍をまとめる人物だ。
 特に首都やその他のコロニーの治安維持のリーダーを務める隊長でもあった。
 ギリアム大佐の名前を出すと彼ら哨戒任務につく軍人達は彼らのシャトルを守るように周囲に散って港まで守りについてくれた。
 シャトルはサイド3【カルベローナ公国】の2バンチコロニーの港へと入る。
 そして港に出ると彼らを待っているロベルト・ギリアム大佐の下まで案内する兵士が迎えにきてくれていた。

「貴君のカルベローナ公国の所属を明かして貰いたい」
「カルベローナ公国軍、機動大隊首都防衛隊、第4部隊隊長、ハザード・レスター中佐だ。ロベルト・ギリアム大佐に面会をしたい」

 彼らは端末を取り出し、その部隊があるかを確認を取っている。端末にはハザードの顔写真と軍籍番号が載っている。
 確かにハザード・レスター中佐はその部隊に所属しているのが確認されたので、迎えにきた士官は態度を崩して接した。

「間違いないようだな。悪く思わないでくれよ、ハザード中佐。今も昔もこの確認を取らないと安心して要人に会わせる事はできないのでね」
「必要な手続きだから構わないよ。今日は別の客を連れてきている。怪しい人物ではない」
「女性二人か?」
「ジェニファー・レンブラントです」
「キッドだ」
「レンブラント? あのレム大佐の娘さん?」
「そういう事さ。キッドは彼女の友人だ」
「ギリアム大佐に会わせる前に身体検査を受けて貰うがよろしいかな?」
「ナイフとかでギリアム大佐を殺して貰っても困るのでね」
「あんまりいい感じはしないな」

 キッドは身体検査と聞いて不快感を露わにする。しかし、サイド3カルベローナ公国は物騒な場所故に、入国に必要な審査とも言える。
 税関のチェックみたいなものと表現すればわかりやすいであろう。
 ハザードは、すまなそうに答えた。

「これも入国するのに必要な審査だよ。我慢して欲しい」
「仕方ないよ、キッド。大人しく受けよう? これに通れば入国できるよ」
「チッ……仕方ないな」

 彼らはそこで入国審査を受ける。
 持ち物検査、身体検査、磁力検査などを受けて特に問題なしという結果が出て、ようやく入国できた。

「ようやく入国審査が終わったか。これにさえパスしておけば大丈夫だよ。審査が厳しい代わりに後々、審査に通っているという事実はこの国では割りとどこにでも行けるという話だからな」
「あ~あ。早い所、用事を済ませてしまおうぜ」
「大丈夫。後は簡単だよ」
「ハザード・レスター中佐! ギリアム大佐から入国審査に通ったら迎えにあがるように遣わせて頂きました!」
「御苦労さん。早速案内を頼む」
「この兵隊さんは?」
「私はギリアム大佐にあなた方を案内するように命令された者です。ご安心ください」
「彼は忙しいからね。出迎えは基本的に無理さ」

 そうしてカルベローナ公国の入国審査に通った彼らは兵士に案内されるまま、とある司令部へと案内される。
 彼らが来て、しばらくするとハザードの顔見知りの士官が部屋にやってきた。

「ハザード! 待ちくたびれたぜ」
「意外と手間取ってすまないな、ロベルト」

 そこにはクリーム色の短髪に深い青色の瞳の男性士官が部屋に足を運んできてくれた。
 次なる会うべき人物とはこの男性士官の事だったのである。
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