混沌の女神の騎士 

翔田美琴

文字の大きさ
26 / 49
第2章 パラレリアクロス

2-10 女神の瞳

しおりを挟む
 正体不明の敵を倒す事になったのはいいが、レーダーにも探知されない敵をどうやって倒すのか?
 紅い稲妻、ジョニー・ライトニングの話では更に追い打ちをかけるような証言があった。

「そいつ、レーダーにも探知されないどころか、眼でも視えない敵なんだ」
「視えない敵ってことか?」
「本当、視えない敵だよ」
「何か対策を取れないかな?」
「一つだけ方法は無くもないわ」
「レナ、教えてくれよ」
「ねぇ? ジェニファーさん? あなた、夢でお父様の姿を観たことはある?」
「あるよ。凄くはっきりと状況がわかるくらいに鮮明なの」
「あなたの目には【女神の瞳】と呼ばれる目には視えない物を見るチカラがあるの。それは今の見えざる敵を発見する事もできるわ」
「それって昔の人々が持っていたという千里眼みたいなものってことかい?」
「そうね。そういうものよ」
「ただね。その代償として、そのチカラを使うとあなたの寿命が縮んでしまうの。徐々に、だけど確実に」
「そ、そんな──」

 だからお父さんの姿が見えたんだ。
 ジェニファーの身に起きた不思議な出来事。
 それは死んだはずの父親の姿が夢うつつで状況がはっきりとわかるくらいに鮮明な映像として見えたことだった。
 謎の騎士との戦いも、父親が護っている女性の姿も、一切合切が全て見えていた。
 それは向こうの世界の女性ルーアが持っている【女神の瞳】とジェニファーがリンクして繋がっているから。
 ルーアが見える事はジェニファーも見える。
 逆にジェニファーが見える事はルーアも見えるということでもある。
 代償が生命力という重いものだが、今回のような不可視の敵を倒すにはまさに必要な能力でもあった。
 ジェニファーは先程から妙な気配を確かに感じていた。
 すぐ近くでもない。しかし嫌な気配だ。
 纏わりつくようなべっとりとした湿り気のある不快極まりない気配だった。

「私、感じるよ。あっちから嫌な気配を感じる」

 ジェニファーが歩き始める。
 その気配がある場所へ、皆を導く為に。
 指を指して歩いていく──。
 彼らは黙って彼女の後ろに着いていく。
 傍から見れは何も無い空を指さしているが、ジェニファーは【女神の瞳】でそれが視える。
 歩くこと5分。瓦礫の山を指さして彼女の脚が止まった。

「ジェニファー、どうした?」
「いるよ。目の前に嫌な気配がいる」
「とても大きな敵だよ──あんなの信じられない」
「例えるならどんな奴?」
「巨人──見えない巨人──だよね」

 彼らには何にも視えなかった。
 ただ瓦礫の山が広がるばかりだ。
 ハザードがアルトカークスの拳銃を構えた。
 そしてジェニファーが視える方角を聞いた。

「ジェニファー、狙撃してみる。方角を言ってくれ。言いやすい言葉でいい」
「右の方角、10メートルの方角かな」

 彼らは射線から離れるとハザードがレールガンを発砲した。すると正体不明の敵がその形を彼らに視えるように表した!
 それはまさに巨人だ。向こうは何も言葉を発しない。可視化された巨人に彼らはその巨大さに脚が竦みそうになる──。

「何だ!? こいつは!?」
「デカすぎるぞ!」
「見えざる巨人──確かにそうだな」 
「やるしかねえのか?!」
「ハザードはもうやる気だ。キッド! ジョニーには向こうの世界の武器は渡さないのか?!」
「ジョニー! これを使ってくれ!」

 キッドが差し出した武器は特殊なギミックの大剣だった。
 装飾が施されたいかにもアルトカークスらしい大剣。
 ギミックは見えざる敵を可視化させる異空間を引き裂く機能らしい。
 見えざる巨人は時々揺らめきながらその姿を消しながら動いている。
 感じるのは地震のような震動と圧迫感みたいなものだ。ジェニファーが絶えずその場所を示しているが、【女神の瞳】を使い過ぎると生命に関わる。
 ジョニーの大剣はその不可視の敵を暴く為のギミックが施されているというのだ。

「つまりは見えない敵を見えるようにするって事だな。どうすればいい!?」
「ジョニー。あんた、勘は働くかい? 大げさなものじゃなくていいから」
「少しはな。瞬間的な勘なら」
「その大剣は持ち主の『見えざる敵』を引き裂く。勘で今、そいつが何処に居るかを感じてそのまま剣を振り下ろせばいい」
「やってやるよ」

 ジョニーがそのまましばらくハザードとジェニファーとロベルトが闘う様子を観ていた。ジェニファーがある程度の場所の指示を出して、そこへ攻撃を加えている。
 時間差がその間5秒程あるが闘いの場では5秒のタイムラグは死に繋がる。
 さっさと可視化させないとならない。
 ジョニーは次の場所へ直感的に走り出し、アルトカークスの大剣を思い切り振り下ろした。
 すると空間が引き裂かれ出てきたのは可視化された巨人の姿だ。そのままジョニーの大剣は次の一撃を巨人に入れていた。
 ハザードのレールガンが可視化された巨人へ明後日の方角から撃ち込まれる。
 ロベルトのレールガンもハザードの弾丸が撃ち込まれた場所と同じ所を撃ち込んだ。
 ジェニファーのクロスボウも弱点と思われる巨人のコアへ矢が突き刺さった。

「そこか! 弱点は!」

 そこでジョニーの大剣に紅い稲妻が疾走る。
 彼はそのまま一気に弱点のコアへ大剣を突き刺して紅い稲妻をエネルギーにして送り込んだ。
 何万ボルト程もある電流が一気に送り込まれ、巨人は音を立ててスクラップとなって崩れ落ちていくのであった。
 
「この大剣──気に入ったぜ」
「お前の武器も凄いな! ジョニー」
「何だよ、お前らの武器も大したものじゃないか!」
「大丈夫かい? ジェニファーちゃん」
「【女神の瞳】を結構な時間、使わせてしまったからな。少し休んだ方がいい」
「大丈夫──ありがとう、ハザードさん、ロベルトさん」

 だが、ジェニファーの体はふらついている。
 慌ててキッドがその体を支えた。
 肩を貸して、近くの大きな岩に座った。

「キッド──」
「しばらく休んだ方がいいよ。後始末は皆に任せようぜ」
「──ごめんね」

 そこでジェニファーはチカラを使い果たして、キッドの肩へ顔を傾けてぐったりと気を失ってしまった──。
 ジョニーはすぐに救急車を手配するように頼んで、ロベルトはハザードと共に残骸を調べている様子だった。
 ハザードは残骸となった巨人の部品を一部分を掴んでその材質を確認していた。

「あの巨人。材質的には俺達が乗る戦闘機と同じ材質に見えたけど、遥かに頑丈な金属に覆われていたようだ」
「あんな見えない奴らに連続で襲われたりしたら身が保たないな」
「ジェニファーちゃんは?」
「キッドが側で看病してくれているよ。俺達にできる事はこいつらの分析と後々の為の対策を立てる事さ」
「ジョニーの大剣のお陰だな。今回の奴を倒せたのは」
「不可視の敵か──。厄介な敵が出てきたな」

 彼らは厚い雲に覆われた空を見上げる。
 まだ真っ黒な雨は降り注いでいたのであった。
 彼らの不安を表すように──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...