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恋人同士の一週間
四日目 カムアウト
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今日は放課後、茉莉花が委員会活動があるとかで一緒に帰る約束はしなかった。
久しぶりに自分一人の放課後だ。さっさと教室を出て、生徒玄関に向かう。今日は水曜だから、ギルメンで集まれるのは誰だっけなーとゲームに思いを巡らす。靴を履き替えて外に出ようとした瞬間、知らない声に呼び止められた。
「ねえ、お前さ、茉莉花ちゃんと付き合ってるってほんと?」
なんか、面倒臭そうなやつがきたなと思った。とっさに上履きを確認したら上級生のようだ。この学校は上履きの色で学年がわかる。
ぱっと見カッコいいと言われる人種だな、雰囲気的にはバスケ部とか、サッカー部…と偏見の眼差しで一瞥する。内心やれやれと思うが、こういった輩にはかかわらないのが一番だと、軽く頷くように頭を下げて校舎を後にした。
「待てよ。話は終わってないんだけど」
先輩らしき人物はなおも食い下がる。俺は話はないっすと大声で叫びたいが、如何せん相手は上級生。こんな状況生まれてこの方初めてすぎて、何をどうしたらいいのかわからない。無言で振り返った俺にそいつは言った。
「俺、茉莉花ちゃんが入学してからずっとかわいいなって思ってたんだよね。GW前には告って、一緒に連休満喫しようと思ってたんだけど」
はい、妄想ですね、俺も以前そうでした。でもいまの俺は妄想ではなく計画であり、予定です!
と言ってやれたらどんなにいいか。仕方なしに、それで?といった視線だけ投げる。
「だから、申し訳ないけど、別れてもらおうかなと思って。俺さあ、この後、告る予定だから、家に帰って振られるの、待ってなよ」
ニヤつく男の顔が気持ち悪かった。こんな顔みてらんねーと踵を返し学校を出る。はあ。俺は今日この後、みっちりゲーム三昧だったのにな、しかたない。スマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
一緒に帰りたい
教室にいるから
帰るとき、声かけて
すぐに「りょ」という文字と可愛いゲームのキャラが喜んでいる図柄が送られてきた。スマホ画面の茉莉花の愛くるしさにひとまず安心し、学校近くでコンビニコーヒーを買うと意を決して学校へと戻った。
教室には、何人かの生徒がまだ残っていて、課題を広げてはいるものの手は進まず、楽しそうにおしゃべりをしている。
イヤホンをしようかと思ったが、周りの様子が分からなくなるのも嫌だと周囲の音は気にしないようにと念じた。が、クラスメートが視線を送ってくるのを感じ、形だけでもとイヤホンをねじ込む。こうしていれば、付き合いのないものは邪魔をしてまで話しかけてこない。
委員会は一時間弱ほどだと言っていた。終わったら、迎えに行くと言えばよかったか?でも告白を邪魔することはしたくない。心配なのは、告白後のあの男の対応だけなのだから。自信満々にうまくいくと思ってるあの男がフラれた時、万が一変な行動を起こしたら嫌だと、それだけを心配した。
机に広げていた課題も終わるかという時、廊下の方で人が動く気配がした。委員会が終わって、生徒たちが移動してきたのだろう。俺が課題をリュックにしまい、イヤホンを取り外した時、その声は聞こえた。
廊下の声の感じから、あの男が茉莉花と話しているのがわかる。
告白って普通人がいないところでするものだと思ってたな、ああ、これは俺の普通だ、あの男の普通と違うんだなと冷静に思考したが、人がいるところで告白するなんてよっぽどの自信家だ。彼氏に宣戦布告するだけでもかなりなものなのに、そんな人が公衆の面前で振られたら大丈夫なんだろうか。
「だから、無理です!」
茉莉花の響く声に引っ張られるように教室を出ようとしたが、踏みとどまった。このままここで俺が出て行ったら火に油を注ぐようなものだ。イケメンが居なくなるのを待つしかないか。
教室の後ろで、腕を組み、天井を仰ぐ。するとそこへ、裕一郎が無表情で入ってきた。が、扉のすぐそばに立っていた俺にびくっと一歩後ずさる。そういえば、裕一郎も同じ委員会か。
「なにしてんだ」
「んー、出てくタイミングを見計らってる」
「まあ、そうだろうな」
廊下からは二人がまだ何かを話す声が聞こえてくるが、何を言ってるかまでははっきりとはわからない。裕一郎は、扉にもたれかかるように廊下に体半分だして、二人の様子を凝視していた。男はこちらに背を向けてるそうで、茉莉花の表情は見えるらしい。裕一郎が解説を入れてくれる。二人の攻防はしばらく続いていたが、突然、茉莉花の大きな声がした。
「わたしも、ゲームオタクなんです!だからもう、私たちのことは放っておいてください!」
それは教室にいる夏樹にはっきり聞こえるほどの大きな声だった。人前で話すことの多い茉莉花は、発声も活舌もいい。うん、丸聞こえだね。クラスに残っている奴らが俺を見る。潮時かなと裕一郎をみれば、笑顔で頷き返された。
「茉莉花?委員会、終わったの?」
声を張り上げたことのない俺は、自分史上一番大きな声をだしてみる。よかった、ちゃんと音声出力されたと馬鹿な事考える。
「夏樹っ」
「なんか、めっちゃ大きい茉莉花の声がした。ゲームの話ででも盛り上がってたのかな?」
「夏樹」
「帰ろっか。初心者の、茉莉花におすすめのゲームがあるんだ」
駆け寄ってきた茉莉花の手を握ると茉莉花に、大丈夫だよと微笑む。
「わたし、初心者じゃないもん。ゲーム歴十年の大ベテランだよ!もう、馬鹿にして!今日は勝つよ!接待ゲームで」
強がる茉莉花の声がわずかに震えていた。俺だって、心臓が爆発しそうだ。だけど、今なら。
俺は後ろへ振り向き言葉を投げた。
「裕一郎、お前も一緒にやるか?」
「……今日は、遠慮しとく。また、誘って」
「わかった。じゃあ、またな」
裕一郎の笑顔に俺は茉莉花の手を強く握った。
久しぶりに自分一人の放課後だ。さっさと教室を出て、生徒玄関に向かう。今日は水曜だから、ギルメンで集まれるのは誰だっけなーとゲームに思いを巡らす。靴を履き替えて外に出ようとした瞬間、知らない声に呼び止められた。
「ねえ、お前さ、茉莉花ちゃんと付き合ってるってほんと?」
なんか、面倒臭そうなやつがきたなと思った。とっさに上履きを確認したら上級生のようだ。この学校は上履きの色で学年がわかる。
ぱっと見カッコいいと言われる人種だな、雰囲気的にはバスケ部とか、サッカー部…と偏見の眼差しで一瞥する。内心やれやれと思うが、こういった輩にはかかわらないのが一番だと、軽く頷くように頭を下げて校舎を後にした。
「待てよ。話は終わってないんだけど」
先輩らしき人物はなおも食い下がる。俺は話はないっすと大声で叫びたいが、如何せん相手は上級生。こんな状況生まれてこの方初めてすぎて、何をどうしたらいいのかわからない。無言で振り返った俺にそいつは言った。
「俺、茉莉花ちゃんが入学してからずっとかわいいなって思ってたんだよね。GW前には告って、一緒に連休満喫しようと思ってたんだけど」
はい、妄想ですね、俺も以前そうでした。でもいまの俺は妄想ではなく計画であり、予定です!
と言ってやれたらどんなにいいか。仕方なしに、それで?といった視線だけ投げる。
「だから、申し訳ないけど、別れてもらおうかなと思って。俺さあ、この後、告る予定だから、家に帰って振られるの、待ってなよ」
ニヤつく男の顔が気持ち悪かった。こんな顔みてらんねーと踵を返し学校を出る。はあ。俺は今日この後、みっちりゲーム三昧だったのにな、しかたない。スマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
一緒に帰りたい
教室にいるから
帰るとき、声かけて
すぐに「りょ」という文字と可愛いゲームのキャラが喜んでいる図柄が送られてきた。スマホ画面の茉莉花の愛くるしさにひとまず安心し、学校近くでコンビニコーヒーを買うと意を決して学校へと戻った。
教室には、何人かの生徒がまだ残っていて、課題を広げてはいるものの手は進まず、楽しそうにおしゃべりをしている。
イヤホンをしようかと思ったが、周りの様子が分からなくなるのも嫌だと周囲の音は気にしないようにと念じた。が、クラスメートが視線を送ってくるのを感じ、形だけでもとイヤホンをねじ込む。こうしていれば、付き合いのないものは邪魔をしてまで話しかけてこない。
委員会は一時間弱ほどだと言っていた。終わったら、迎えに行くと言えばよかったか?でも告白を邪魔することはしたくない。心配なのは、告白後のあの男の対応だけなのだから。自信満々にうまくいくと思ってるあの男がフラれた時、万が一変な行動を起こしたら嫌だと、それだけを心配した。
机に広げていた課題も終わるかという時、廊下の方で人が動く気配がした。委員会が終わって、生徒たちが移動してきたのだろう。俺が課題をリュックにしまい、イヤホンを取り外した時、その声は聞こえた。
廊下の声の感じから、あの男が茉莉花と話しているのがわかる。
告白って普通人がいないところでするものだと思ってたな、ああ、これは俺の普通だ、あの男の普通と違うんだなと冷静に思考したが、人がいるところで告白するなんてよっぽどの自信家だ。彼氏に宣戦布告するだけでもかなりなものなのに、そんな人が公衆の面前で振られたら大丈夫なんだろうか。
「だから、無理です!」
茉莉花の響く声に引っ張られるように教室を出ようとしたが、踏みとどまった。このままここで俺が出て行ったら火に油を注ぐようなものだ。イケメンが居なくなるのを待つしかないか。
教室の後ろで、腕を組み、天井を仰ぐ。するとそこへ、裕一郎が無表情で入ってきた。が、扉のすぐそばに立っていた俺にびくっと一歩後ずさる。そういえば、裕一郎も同じ委員会か。
「なにしてんだ」
「んー、出てくタイミングを見計らってる」
「まあ、そうだろうな」
廊下からは二人がまだ何かを話す声が聞こえてくるが、何を言ってるかまでははっきりとはわからない。裕一郎は、扉にもたれかかるように廊下に体半分だして、二人の様子を凝視していた。男はこちらに背を向けてるそうで、茉莉花の表情は見えるらしい。裕一郎が解説を入れてくれる。二人の攻防はしばらく続いていたが、突然、茉莉花の大きな声がした。
「わたしも、ゲームオタクなんです!だからもう、私たちのことは放っておいてください!」
それは教室にいる夏樹にはっきり聞こえるほどの大きな声だった。人前で話すことの多い茉莉花は、発声も活舌もいい。うん、丸聞こえだね。クラスに残っている奴らが俺を見る。潮時かなと裕一郎をみれば、笑顔で頷き返された。
「茉莉花?委員会、終わったの?」
声を張り上げたことのない俺は、自分史上一番大きな声をだしてみる。よかった、ちゃんと音声出力されたと馬鹿な事考える。
「夏樹っ」
「なんか、めっちゃ大きい茉莉花の声がした。ゲームの話ででも盛り上がってたのかな?」
「夏樹」
「帰ろっか。初心者の、茉莉花におすすめのゲームがあるんだ」
駆け寄ってきた茉莉花の手を握ると茉莉花に、大丈夫だよと微笑む。
「わたし、初心者じゃないもん。ゲーム歴十年の大ベテランだよ!もう、馬鹿にして!今日は勝つよ!接待ゲームで」
強がる茉莉花の声がわずかに震えていた。俺だって、心臓が爆発しそうだ。だけど、今なら。
俺は後ろへ振り向き言葉を投げた。
「裕一郎、お前も一緒にやるか?」
「……今日は、遠慮しとく。また、誘って」
「わかった。じゃあ、またな」
裕一郎の笑顔に俺は茉莉花の手を強く握った。
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