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サタン@異世界編PART1

モンスター討伐の報酬をジジイから頂く

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パブに入ると、俺の姿を確認した全ての客が一斉に立ち上がった。

「うぉーーーー!!来たーー!!」

「兄ちゃん!やったなぁ!!」

「動画見たよ!!強いんだね、あんた!!」

皆、ジョッキを片手に俺を囲む。

「おい、やめろ!酒くせー!」

俺の抵抗は無視され、胴上げが始まってしまった。

「わっしょい!わっしょい!」

「サーターン!サーターン!」

カトリーナのライブ配信のせいで、どうやら俺の名前まで割れてしまっているようだった。

「おい、やめろ!!」

必死に降りようとするが、酔っ払いたちは盛り上がり過ぎて聞いてくれない。

胴上げは段々と高さが増していき、あと数センチで天井にぶつかっていってしまうほどになっていた。

「お、おい!みんなありがとう!もう良いから下ろしてくれ!」

俺はみんなのテンションを下げないように言葉を選んで諭すも、あまりの盛り上がりに声が届かない。

そのうち酔っ払いの1人が足を捻り、「うわぁっ!」と言ったかと思うと、俺も含めて雪崩のように崩壊した。

「バカ!あぶねっ!」

その勢いでカウンターに頭を思いっきりぶつけた。

「いてっ!」

頭をさすりながら上を見上げると、ギルドの女店主とガリレオの顔が見えた。

「あんた……ほんとにやったんだね……」

女店主はタバコの煙を吐きながら、感心したように呟いた。

「うむ……。まさか、あれほど手を焼いたギガントクラブをあっさり討伐してくれるとは……」

ガリレオもしみじみ呟くと、ウィスキーのロックをグイッと飲み干した。

「さ、約束のものを頂こうか」

俺は後ろからガリレオの肩に手を置く。

その手を払いながらガリレオは立ち上がった。

「ついて来い」

そう言うと杖をついて店の外に向かって歩いていく。

俺たちもガリレオと一緒に外に出た。






外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

ポーポーとフクロウのような声が街に響く。

「ポーポー、ポーポー」

「お前かい」

俺は高らかに鳴くポーポー公爵にツッコんだ。

「ちょっとサタン!ポーポー公爵の頭叩かないでよ!」

そんなやり取りには興味を示さず、ガリレオは歩き続ける。

その背中に向かって俺は言った。

「じいさん、悪かったな。カニパーティーとか言っちゃって。普通に倒したらなんか消えちゃったわ」

「もともと食おうなんて思ってないわ」

ガリレオは鼻で笑った。

「そういや、足が悪いのか?」

俺はコツ、コツと音を鳴らす杖を見ながら言った。

「……昔からな。老化で悪くした訳ではない」

「そうかい」

それ以上は野暮な質問だと思い、切り上げた。

それからしばらく歩いていくと、街のはずれにある豪邸に到着した。

「ここだ。入れ」
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